機器くらべ、聴きくらべ

9月某日



市内のオーディオショップ主催の恒例行事「特選オーディオ・フェア」に足を運ぶ。
購入は思いもよらないが、各社技を競うハイエンド機器の音比べが楽しいのだ。
新製品はもちろん、会場に並ぶヴィンテージの品々を見るのもいい。合理的な部品の組み合わせでできた現代の機能美とは違った、頑固な老人のような存在感を持つ真空管アンプ、スピーカー、ターンテーブルが長い時間を経たものだけが持つ手ごたえを伝える。

 
午前11時から、オーディオ評論家細谷氏の案内する試聴会がはじまった。
アンプ、スピーカーは固定で、各社のCDプレーヤーのみを入れ替えて聴き比べをしていく。
使用スピーカーはJBL。アンプはマークレヴィンソン。製品レベルはわからないがどれも100万円クラスか。
 
使われた音源。

①バッハ ゴールトベルク変奏曲。グレン・グールド演奏の1982年盤。
最晩年に行われたデジタル録音だが、使用するのは同時収録されたアナログテープによるCDだという。そんなものがあるとは…うーむ。これは所蔵している通常版CDより、ずっといい音かも。演奏しながらのピアニストの「呟き」も生々しく再現されている。
②アストル・ピアソラ タンゴ・ゼロ・アワー。
SACD。ピアソラ晩年の代表作という。試聴部分を聞く限り、タンゴというよりも精緻な室内楽の趣だ。
③ヴィヴァルディ 二つのチェロとハープシコードのためのソナタ。SACD詳細不明。
④ローリング・ストーンズ 1992年録音 日本でのスタジオライヴ。
詳細未知。ロックといえど深く熟した音楽である。
⑤マーラー 交響曲第5番 エリアフ・インバル指揮 フランクフルト放送交響楽団。
1986 年DENON全集版。
⑥ピアノ・トリオによるジャズ「テイク・ファイブ」。
ブルーベックではなく最新の録音。有名なテーマが出るまでの、絡むイントロがすごく長い。詳細不明。

もう少し、盤の説明がほしいな。
 

さて、聴き始めると、驚きだ。
プレーヤーごとの音の違いは、思ったよりずっと大きい。私のへぼ耳では参考にはなるまいが、感じたままに…
 

デノンDCD-SX  84万円

①穏やかで温かみのある音。鍵盤にふれる指のタッチが、眼前で見ているかのようによくわかるのがすごい。続いて②迫力や鮮度は十分だが目立たない。静寂な中で音楽が鳴っている。

ラックスマンD08  99.8万円

①高域が一気に上昇し、ダイナミックレンジが拡大した感じ。その分ヒスノイズや摩擦音がはっきりときこえる。赤裸々。③音の粒立ちがすごい。④素晴らしい音楽と思うが、やはり気になるのはアンプで増幅された音ということ。特に歌声でそれが気になる。音源のせいだが…

エソテリックK03  84万円

④ギターの音がよく立っている。アンプ増幅の感じがあまりしない音に。歌声も相当違って、こちらのほうがD08よりもアンプ臭がしない。
⑤すごいダイナミックレンジ。冒頭のトランペットはタンギングがわかるくらいの鮮度だ。奥行と余裕が感じられるのは、この録音の特徴でもあるが、これがわが所蔵の盤と同じものとは信じられない。

メトロノーム・テクノロジー(オランダ)CD One Signature 100万円

これは音の出口に真空管の回路を採用しているらしい。
⑤すごく腰高の音に聞こえる。シャリつき気味の音だが、ベースのピチカートの明晰さは驚異的だ。エネルギーたっぷりと音という感じ。
①鍵盤に指が触れるようなタッチはあまり感じないが、唸り声が生々しく聞こえる。繊細さよりも音の圧力で聴かせる機器か。
②音がずっと華やかで、活力がみなぎってくる。内向的な音楽に聞こえたDCD-SXとは性格の違う音楽に聞こえる。

アインシュタイン(ドイツ)ザ・ラスト・レコードプレイヤー

品番はないみたい。黒光りする半透明なボディ・銀色に輝く大型の操作ボタン。個性的なデザイン。これも音の出口部分に真空管を採用しスピード感に満ちた音作りをしているという。
100万円レベルでしょうな。
②中音域の音色が豊かで多彩。。高音域の腰高感はなく、原音そのままの飾らぬ音が鳴っている感じ。当たり前の音を作るのに膨大な技術をかけたのだ、と主張している感じ。
①あっ、高域が耳にキーンと来る。私にはちょっと苦しい機械だったのだ。いいというひとにはいいんだろうなあ。
⑤大きな特色は感じない。でも、これってすごく録音良くないか。家で聴いているときは気付かなかったなあ。高い装置で聴き映えがする贅沢音源なのかもしれない。

プレイバック(アメリカ)かなり高いそうだ。型番、姿は未確認。100万円越えか。

⑤音の分離が際立つ。明るく強い音。パワフルで、高い音が舞い上がっている。高音と低音がパワーアップしている感じ。アメリカらしい音ってこんなのかな。
④切れがいい!!やっぱりこういうロックにぴったりの音作りなんだ。これだと歌の部分もアンプで増幅したという強調感が少なく、耳にすっとなじんでいく。
細谷氏、ここで初めて⑥をかける。アメリカの音に合う特質を読んでいると見た。
最初の1分、ドラムスとペースがデュオで絡むイントロ。音の立ち上がりがすごい。鳥肌ものだ。
 
さて、次に登場するしたのは
リン(スコットランド)ネットワーク・デジタル・システム

これは、リッピングしたソフトを非回転系のサーバーに蓄積して再生するというもの。よく見なかったけれど、中級機の「アキュレイト」なら92万円。
先日の「PCオーディオ勉強会」でも話題の再生技術だが、聴いた限りではディスク再生との違いは、よくわからない。リンの音は全く癖がない感じ。
 

そのあとは、プリアンプやパワーアンプを少しずつ取り替えての試聴となったが、こうなると、ネコパパにはわけがわからなくなる。同じ曲の反復試聴も、さすがに疲れてきた。
ここまでにした。
 

巧みに短いコメントを入れながら機器を案内する細谷氏。
しかし、話は技術的な工夫についてのみで、具体的な音の違いや優劣については決して口にしない。
各メーカーの営業マンが取り囲む中での会なので、それが当然なのだろう。いずれおとらぬ高額商品で、各社の技術を尽くした自信作で会ってみれば、安易に「これがいい音だ」とは言えそうにない。
個々の機材の価格に言及するときは、さすがに言いにくそうにするのだが、
「サラリーマンがまじめに働いて買えないものでは、決してありません」
というのは、彼自身の実感なのか、サラリーマンにもいろいろあるだろうが…
 

いずれにしても、御馳走になった気分でした。「いい音」にもいろいろある。この場に居合わせた50人余りの人たちにとっても、聴こえ方はさまざまだったことだろう。
音というのは本当に不思議だ。
MKさん宅訪問以来、なにか音の基準ができたようで、こんな会も以前より楽しくなってきた。買い手にまわることはなさそうだけれど…。

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コメント

コメント(2)
No title
ぼくも買い手にまわることはなさそうですが、ぜひ聴いてみたいものですねそんなに違うとは!

ピアソラの《タンゴ・ゼロ・アワー》には、ふだん95%クラシックのぼくもノックアウトされました。クラシック系のアーティストが演奏するピアソラの、なんと生ぬるいこと…

グールドのアナログは、別テイクではなく別系統で同時に録音したのでしょうか。何のために!?おもしろいですね。もっとも、ぼくは1955年派ですが…

Loree

2010/09/13 URL 編集返信

No title
そうですか。ピアソラはいいですか。うーん、入手してしまいそうだなあ。
デジタル録音初期の時代は、予備テイクとしてなのか、アナログで同時収録されたことも多いようです。
たとえば、キング(ファイヤーバード)が80年代に録音した朝比奈隆さんのセッションも、すべてアナログテープでも収録されていました。アナログ起こしを歌い文句としたCDも出されましたね。通常盤と聴き比べたことはないですが、高音質でした。初期の16ビット録音システムの限界が云々される現在、これらの予備テープに注目が集まってくるのかもしれません。

yositaka

2010/09/14 URL 編集返信

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プロフィール

yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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