暑さを吹き飛ばすスヴェトラーノフ①

今年の夏は酷暑。
暑いのはあまり苦にならないネコパパですが、さすがにまいっています。
そこで、酷暑を吹き飛ばすディスクを紹介します。
毒をもって毒を制する。
ロシアの名物指揮者だったエフゲニー・スヴェトラーノフ指揮、ソビエト(ロシア)国立交響楽団の三枚です。


 

チャイコフスキー
組曲『白鳥の湖』
組曲『くるみ割り人形』


■ソビエト国立交響楽団
■1987年録音
■CDKM1002
 

グラムザビスという会社の製作。
どちらの曲も、翌1988年に全曲録音しているとのことなので、もしかするとそこからの抜粋かも。
『白鳥の湖』がすばらしい。
遅いテンポ、神経質なほどのピアニッシモで奏でられるおなじみのメロディーの数々は、華麗さも親しみやすさもなく、ただただ暗く陰鬱で、ロシアの凍てついた冬景色を思わせます。そして、突然、すさまじいフォルティッシモが鳴り渡り、聴き手をドキリとさせるのです。
この湖はきっと、ロシアの地底の奥底にあるのでしょう。残存核廃棄物も心配です。
 



フランク
交響曲二短調
サン=サーンス
交響曲第3番「オルガンつき」


■ソビエト国立交響楽団
■1983年モスクワ音楽院大ホール(フランク)1982年ライブ(サン=サーンス)
■SC135
 

メロディア原盤、英スクリベンダム製作。
会場不明のライヴであるサン=サーンスが、カタルシスの塊。前のめりに鋭く刻まれるリズムが全曲にわたって聴き手に牙をむく。
『白鳥の湖』とは逆に、最初から最後まで、強音の連続。第2楽章第2部で、あらゆる楽器が我を忘れて叫び、のたうつ様は信じがたいほどで、ワルブルギスの夜を思わせます。
これほど喧しい音楽というのもあまりないですね。まさにストレス音、全開です。
でも、本当に疲れているときは聴かない方がいいかもしれません。

 

メロディ(オリジナル盤は『「哀~Sorrow」』と題されていました)
 
・アルビノーニ:アダージョ
・バッハ:管弦楽組曲第3番から『アリア』
・グルック:メロディ(『精霊の踊り』より)
・グリーグ:『ペール・ギュント』第1組曲~『オーゼの死』
・ベートーヴェン:交響曲第3番『英雄』~第2楽章
・ワーグナー:楽劇『神々の黄昏』~ジークフリートの葬送行進曲
・ブルックナー:交響曲第9番~第3楽章アダージョ


■ロシア国立交響楽団
■録音:1998年
■CDVE04269 ヴェネツィア
 
スヴェトラーノフ最晩年の録音。
ヴェネツィアというのはロシアの再発ばかりを扱っているレーベルです。元原盤は日本のトリトーン・レーベルでした。製作スタッフも日本人かもしれません。
これは「死」と「葬送」にかかわる曲ばかり集めたオリジナル・アルバムで、決して寄せ集めではありません。
もう、この曲目だけで涼しくなってきそう。
ベートーヴェン『英雄』2楽章や、ジークフリートの葬送行進曲、ブルックナー第9番アダージョなど、こんな選曲を考え出すこと自体が普通じゃないですね。
『英雄』2楽章はただでさえ遅い、沈んだ演奏なのに、後半のサビの部分に来ると、また一段とテンポを落とし、悲嘆にくれる音楽となっていく。演奏時間は21分。これより遅い演奏ってありましたっけ。
関連記事
スポンサーサイト



コメント

コメント(12)
No title
白鳥とくるみのメロディア全曲盤、トリトンの「哀~Sorrow」はうちにもあります。
ぼくは、アルビノーニのアダージョが同曲最高の演奏かも、と思っています

Loree

2010/08/27 URL 編集返信

No title
まさに、晩年のスヴェトラーノフの濃厚な節回しを聴くことができますね。
これなどは日本のレーベルでオリジナルジャケットを使用して再発するべきだと思います。
彼は1992~1993年に『海』と『鳥』をテーマにしたアルバムも録音しています。こちらはオクタヴィアから国内盤が出ていますね。合わせて三部作にしたかったのではないでしょうか。この二枚はまだ未聴なんですが。

yositaka

2010/08/27 URL 編集返信

No title
追伸。「和~Adagio」というアルバムもあったんですね。
これも1998年録音で、合わせて四部作です。それにしても、最晩年に突如このようなシリーズを立て続けに録音したのは、不思議なことです。

yositaka

2010/08/27 URL 編集返信

No title
「和~Adagio」も持っていますが、こちらは最も楽しみにしていた「眠りの森の美女」がやや緊張感の持続に欠ける気がして、あんまり聴いていません…

Loree

2010/08/27 URL 編集返信

No title
ロレーさんはスヴェトラーノフがお好きなんですね。個性的な名指揮者でしたが、
ロシアのディスク事情が混乱していて、いい録音がたくさん埋もれているのが、残念です。晩年N響を振っての、マーラーの第5番、すばらしい名演だったのが忘れられません。

yositaka

2010/08/27 URL 編集返信

No title
昨日、新宿のディスクユニオンで「鳥」を見かけましたが、3100円の値が付いていました♪

Loree

2010/09/05 URL 編集返信

No title
そんな値段が!
これ、たしかエクストンで現役ですよ。
もしかして、高価なのはトリトーンのオリジナル盤ですか。そうなると、LPのような趣味の世界の市場が形成されているのかも。
ディスクユニオンが仕掛け人ですかねえ。

yositaka

2010/09/05 URL 編集返信

No title
そうそう、トリトンです。エクストンが復刻(?)していたとは知りませんでした。
他にも、ヨハンナ・マルツィ(Vn)のクーダルシェのシリーズは軒並み3~4千円台といった具合で、稀少盤は新品以上のびっくり価格です

別の中古店ですが、ビダルフが1990年代に復刻したミッシャ・エルマン(Vn)の1910年代録音集は、4枚抱き合わせで2万円の値が付いていました。その中の1枚を聴きたかったのですが、もちろん断念しました…

Loree

2010/09/05 URL 編集返信

No title
ネット配信でCDがなくなるなんて言われていますが、それは希少盤が増えて商売に(多少は)なるということなんでしょうかね。
クーダルシェのマルツィは揃っているので、食いっぱぐれた時のための原資にしておきましょうか。
そういえば、ビダルフも最近見ない。カザルスのアコースティック録音全集とクライスラー、ミルシテイン、カペー四重奏団がそれぞれ一、二枚くらいしかうちにはありませんが、これも取っておいた方がいいのかな。

yositaka

2010/09/05 URL 編集返信

No title
ビダルフは本当に稀少盤です。ぼくはそんなによく知らないですが、クライスラーの三大協奏曲の旧録音は見つけたら絶対ほしいですが、まず出てこないです

ところで、話をそらして申し訳ないですが、ミルシテインのCDとは、ヴィターリのシャコンヌを含む1930年代録音の小品集ですか?

Loree

2010/09/05 URL 編集返信

No title
残念!私のは、わりと有名なチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲、ストック指揮シカゴ交響楽団のものです。バルサムとのソナタも入っていました。これはナクソスでも入手できるから、価値は薄いと思います。演奏の価値はありますよ。アパドとのステレオ盤よりも私は好みですね。

yositaka

2010/09/06 URL 編集返信

No title
yositakaさん、ありがとうございます♪
ミルシテインのCDはチャイコでしたか!
ぼくはステレオの2種類しか聴いたことがないので、急に気になってきました。
NAXOSは、日本の代理店が変わってから、なぜか購買意欲がちょっと低下気味です…。。

Loree

2010/09/06 URL 編集返信

コメント投稿
非公開コメント

プロフィール

yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

ご訪問ありがとうございます

月別アーカイブ

検索フォーム

QRコード

QR