Mkさん宅訪問の時、持参したディスク。普段、「音質」を気にすることがあまりないが、「これはいい音だなあ」と印象に残るものもあり、音を中心に聴くときはまずこれらに手が出る。
ネコパパは、こういう音が好きってことです。

モーツァルト
ピアノ協奏曲第24番ハ短調k491
アンドレ・プレヴィン 指揮とピアノ
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
1984年4月 ソフィエンザール、ウィーン フィリップスPHCP3139(国内盤)
ピアノの音が明晰で柔らかく、この曲の聴きどころである管楽器との絡みがしっかりと聴きとれる。
録音技術がいいだけではなく、プレヴィン自身がこの曲に求めている音作りである。モーツァルトのピアノ協奏曲の中で最も暗く、悩みと憤りの色調に満ちたこの曲を「微笑みと優しさ」のニュアンスを生かして演奏していく。彼は昨年も来日して、NHK交響楽団と同曲を演奏、テレビ放送もされた。「この音の感じ」は、まったく同じだった。
フィリップスには珍しく、デッカが長年ウィーン・フィルの録音スタジオにしていたソフィエンザールでの録音。潤いのある音の粒立ちがこの場所の特徴で、それがますます録音に磨きをいれる。Mkさんの装置で聴く音のすばらしかったこと。管楽器と共演する場面ではまさに音が分離し、融合する瞬間を体感。

ラヴェル
バレエ音楽『ダフニスとクロエ』 全曲
シャルル・デュトワ指揮
モントリオール交響楽団 モントリオール交響合唱団
1980.8聖ユストゥス教会 モントリオール デッカ デッカ・レジェンド458605-2(ドイツ盤)
教会での録音で響きが豊か。
それでいて随所にあらわれる各楽器のソロの音色も鮮度よく収録されている。
ダイナミックレンジも広く、音の遠近感が伝わってくる。通常は抑え気味の録音が多い合唱を強く、しっかりと歌わせているのが、デュトワ盤の特色。
この幻想的・色彩的だがどこかとらえどころなく「流れて行ってしまう」曲のイメージを大きく覆す、熱気と緊張を孕む名演奏だ。
Mkさんの装置で聴く『夜明け』の場面の音のすばらしさといったら、まるで会場の空気、教会の空間の広さまでも伝わってくるようだった。

ベートーヴェン
交響曲第6番へ長調作品68『田園』
ブルーノ・ワルター指揮
コロンビア交響楽団
1958.1アメリカン・リージョン・ホール ハリウッド ソニークラシカルSRCR9966(国内盤ブルースペックCD)
古い録音だが、アメリカ・コロムビアが会社の威信をかけて録音した開発当時の3チャンネルステレオ録音。
ワルター晩年のステレオセッションは、指揮者の死の直前の1961年まで、3年間にわたって続けられたが、その間に録音の精度がどんどん上がっていく。その1年目の作品なので、まだ未完成の、がさついた感じはあるが、いわば原石の音。自然な鮮度と響きはいまも優秀録音として通用しそうだ。
個々の楽器の音は、軽くて乾いた音で、前記の二枚のような高級感はないが、息使い、弓の返し、摩擦音など、メンバーが演奏ノイズも気にせず、全身で、この交響曲演奏の第一人者の棒に食らいついていく様子が、そのまま収録されている。
会場を満たす、憑かれたような熱気が、Mkさんの部屋で生々しく再現されるのは驚きだった。
私の持参したのは、最近発表されたブルースペックCDと言われる、液晶素材で作られたディスク。Mkさん手持ちの初期盤(録音プロデューサーだったジョン・マックルーアがCDのためにリミックスしたもの)と比べると、音は違う。腰が低く、野太い、LPらしい響きを残した初期盤と、現代風の、やや腰の高いサウンドになった新盤。弦の鮮明度では新盤に分があるが、あとは好みの問題だと思った。
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コメント
ワルターの「田園」、往年の名演奏ですね。仰る様に乾いた音でアメリカンな感じがしますが、変に弄くらないストレートなところが好ましいです。
Kapell
2010/08/12 URL 編集返信プレヴィンは、ピアノでどれだけ豊かな音楽をやっていても、一切表情に出しません。私はそノポーカーフェイスが、実にかっこいいものに思えます。
「田園」のワルター盤は私にとって音はもとより「音楽」の基準と言っていいほど。演奏についてはいずれ記事にしたいと思っています。
yositaka
2010/08/13 URL 編集返信