すばらしきドビュッシー



ドビュッシー・ボックス(10CD)
http://www.hmv.co.jp/product/detail/3777057

CD1
・交響詩『海』(録音:1954年 EMI)
・管弦楽のための『映像』(録音:1954&57年 EMI)
デジレ=エミール・アンゲルブレシュト指揮、フランス国立放送管弦楽団

CD2
・牧神の午後への前奏曲(録音:1954年 EMI)
イーゴリ・マルケヴィチ指揮、フィルハーモニア管弦楽団

・夜想曲(録音:1955年 RCA/STEREO) ※HMVの記事ではDECCAになっているが、それは間違い。
ピエール・モントゥー指揮、ボストン交響楽団

・小組曲(録音:1948年 DECCA)
エルネスト・アンセルメ指揮、パリ音楽院管弦楽団

CD3
・遊戯(録音:1953年 DECCA)
・6つの古代の墓碑銘(録音:1953年 DECCA)
エルネスト・アンセルメ指揮、スイス・ロマンド管弦楽団

・ピアノと管弦楽の幻想曲(録音:1938年)
ヴァルター・ギーゼキング(ピアノ)
ヴィレム・メンゲルベルク指揮、コンセルトヘボウ管弦楽団

CD4
・聖セバスチャンの殉教(録音:1955年 EMI)
クロディーヌ・コラール(ソプラノ)
ジャニーヌ・コラール、クリスティアーヌ・ゲイロー(アルト)
デジレ=エミール・アンゲルブレシュト指揮、フランス国立放送管弦楽団&合唱団

CD5
・前奏曲集第1巻、第2巻(録音:1953,1954年 EMI)
ヴァルター・ギーゼキング(ピアノ)

CD6
・レントより遅く(録音:1950年 RCA)
・ラモーを讃えて(映像第1集より)(録音:1950年 RCA)
・金色の魚(映像第2集より)(録音:1950年 RCA)
・亜麻色の髪の乙女(前奏曲集第1巻より)(録音:1950年 RCA)
・沈める寺(前奏曲集第1巻より)(録音:1950年 RCA)
・吟遊詩人(前奏曲集第1巻より)(録音:1950年 RCA)
・月の光がそそぐテラス(前奏曲集第2巻より)(録音:1950年 RCA)
・オンディーヌ(前奏曲集第2巻より)(録音:1950年 RCA)
・マスク(録音:1950年 RCA)
アルトゥール・ルービンシュタイン(ピアノ)

・喜びの島(録音:1947,1948年 DECCA)
・水に映る影(録音:1947,1948年 DECCA)
フリードリヒ・グルダ(ピアノ)

CD7
・練習曲より3曲(録音:1947,1948年 RCA)
・人形のセレナード(子供の領分より)(録音:1947,1948年 RCA)
ヴラディーミル・ホロヴィッツ(ピアノ)

・組み合わされたアルペッジョのための(練習曲より)(録音:1954年 EMI)
エミール・ギレリス(ピアノ)

・子供の領分(録音:1947年 EMI)
アルフレッド・コルトー(ピアノ)

・2つのアラベスク(録音:1953,1955年 EMI)
・夜想曲(録音:1953,1955年 EMI)
・スケッチ帳より(録音:1953,1955年 EMI)
ヴァルター・ギーゼキング(ピアノ)

CD8
・ピアノのために(録音:1953年 EMI)
・版画(録音:1953年 EMI)
・映像第2集(録音:1953年 EMI)
・ベルガマスク組曲(録音:1953年 EMI)
ヴァルター・ギーゼキング(ピアノ)

CD9
・弦楽四重奏曲ト短調(録音:1931年 EMI)
カルヴェ四重奏団

・フランソワ・ヴィヨンの3つのバラード(録音:1957年 EMI)
ベルナール・プランテ(バリトン)
デジレ=エミール・アンゲルブレシュト指揮、フランス国立放送管弦楽団

・おもちゃ箱(カプレ編)(録音:1954年 EMI)
アンドレ・クリュイタンス指揮、フランス国立放送管弦楽団

CD10
・忘れられた小歌(録音:1950,1954年 DECCA)
・艶なる宴第1集(録音:1950,1954年 DECCA)
・ビリティスの3つの歌(録音:1950,1954年 DECCA)
・愛し合う二人の散歩道(録音:1950,1954年 DECCA)
シュザンヌ・ダンコ(ソプラノ)、グイド・アゴスティ(ピアノ)
 
■ドキュメンツ(販売 メンブラン ソニーミージック)
■232867
■モノラル 10CD
 
 
ドビュッシーの名曲名演がたっぷりと入ったボックスセットだ。
 
まず、オーケストラ曲では、指揮者選びが秀逸。
「海」「管弦楽のための映像」等を振るアンゲルブレシュトはドビュッシーの弟子筋に当たる人。
フランスのオーケストラは低弦が軽いという先入観を覆し、海の最深部から沸きあがってくるような、暗く、厚い響きで音楽を造形していく。
ことに「海」の第3曲は、一節一節が切込み深く、音楽の核心に肉薄しようとする気魄が漲る。指揮者は、豊かな色彩感の表出よりも、陰影の美―作曲者が曲に秘めた「魂」に対峙しているかのようだ。
 
モントゥーの「夜想曲」(ステレオ録音)も久々。雰囲気や音色よりも、音の構築を大切にしている。響きは明晰で、一つ一つの音が「立ち上がる」新鮮さ。しかも、情感豊かである。とくに「第3曲」に加わる女声合唱の、声部のからみがくっきりと聴こえる立体感は、「薄ぼんやり」した多くの演奏からは聴くことができない。これこそ「海の精」の本当の歌ではないだろうか。
 
アンセルメの「小組曲」や「古代銘碑」は、いくつか残されているうちの古い方の録音だが、彼のドビュッシーはいつ、どれを聴いてもひとつひとつの音の粒立ち、音の色彩を鮮やかに描き出す。一幅の水彩画を見るようだ。
 
ギーゼキングとメンゲルベルクの共演による「ピアノと管弦楽の幻想曲」は、ロマンティックそのもの。
緩急自在なテンポ、濃いポルタメント。ラフマニノフのピアノ協奏曲みたいに聞こえる部分も少なくない…。でも、ドビュッシーの初期の作風には、意外にこんなスタイルも似合っている。名曲だと感じさせる。古い録音だが、最後までしっかりと聴ける。
 
ピアノ曲も多彩な演奏が収められている。曲の重複も辞さない。いろいろなスタイルで聴かせようという意図だろうか。
定評あるギーゼキング。テンポは淡々としているが、その音は芯が強く「熱さ」と「訴え」に満ちている。これは決して「即物主義」のクールな演奏ではない。
逆に、「文学的」といわれるコルトーの『子どもの領分』は、それこそ子どもたちへの語り聞かせのように温かいが、描写に重きを置いた説明的な演奏とは、とても思えない。曲を文学的に説明しているからといって、音楽までがそうなるとは限らないのである。コルトーのピアノは音楽そのものとして、美しい。
ルービンシュタインは、滑らかで陶器のように磨きこまれた音で表現された、耳に優しいドビュッシーだ。鋭い切込みはないが、抵抗なく心に入り込んでくる。
ホロヴィッツは、さすがにドビュッシーというより彼自身の「弾け、飛び跳ねる音の名技」を楽しむ演奏かも。ライヴの臨場感が豊かで、カーネギー・ホールの上席に聴き手を誘う。
 
ドビュッシーといえば、歌曲も重要。
でも、この分野はもともと録音が少なく、企画もされない。なぜだろう?
シュザンヌ・ダンコは、エーリヒ・クライバー指揮のモーツァルト『フィガロの結婚』全曲ですばらしいケルビーノを歌っている。こんな録音があったとは。
ベルギー人の歌手でフランス語は得意なのだろう。上質の朗読を聴くような趣がある。言葉と一体化した音楽なので、その点はもどかしい。でも、ダンコの歌は、少年のように清冽で珠玉の味わいを持つ。もっと多くの曲が聴きたかった。
 
ドビュッシーのエッセンスが結集したセット。これは愛聴盤まちがいなし。
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コメント

コメント(2)
No title
ドビュッシーイヤーに登場したこのボックスセットは各社から色々出されたセットの中でも企画としては秀逸でしたね。恥ずかしながらアンゲルブレシュトの名前はこのセットで初めて知りました。また、ギーゼキングの詩情豊かなピアノ、カルヴェ四重奏団の弦楽四重奏曲など癒されますね。おっしゃる通り、素晴らしくCPの高いボックスセットです。

geezenstac

2012/11/12 URL 編集返信

No title
2012年の今年も没後50年ということで、企画展や演奏会、書籍の出版などが相次ぎ、かなり注目されました。長年ドビュッシーを大切に聴いてきた私などは「ようやくか…」という気がしています。青柳いづみこさんによれば、2010年までドビュッシーだけによる演奏会はまったくなかったそうですから、名は知れていてもひとりの作曲家として遇されていなかった…
このセットはメンブランの傑作です。でもTPP参加となると、隣接著作権も米国に習い延長、こうしたディスクもすべて販売中止になる恐れもあります。困ったことです。

yositaka

2012/11/13 URL 編集返信

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プロフィール

yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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