高谷光信指揮・名古屋芸大オーケストラ、ラフマニノフをDIGする。

20240201NUA.jpg
これは名曲カフェ「エグモント」のマスターに整理券をいただいて鑑賞。短期間で二度、高谷光信氏の指揮する演奏会を聴くことができたわけだ。
場所は刈谷アイリス、夜の演奏会である。到着してみると会場は閑散としていて3割の入り。ここはJR、名鉄刈谷駅の間近で名古屋からのアクセスは悪くないけれど、夜は閑散としていて飲食店も少なく、名古屋市内からは「出かけるのが億劫」な場所かもしれない。そういう理由で観客が少ないとしたら、大変惜しいことだった。
演奏がとてもよかったからである。

前回素敵な演奏を聴かせていただいたドヴォルザークの第8交響曲と比べても、高谷氏の曲への共感度はこのラフマニノフの第2交響曲の方が高いのではないか、そう感じさせる、細部まで徹底して自分のものになっている安心感、信頼感の伝わってくる演奏だった。
ラフマニノフの交響響曲第2番は、ネコパパがクラシックを聴き始めた1970年頃にはほとんど知られていなかった曲だった。ラフマニノフと言えば、あの甘美なピアノ協奏曲。クライバーンとリヒテルの2枚を随分とよく聴いたものだ。この曲には自作自演の録音もあり、どちらかというと作曲もする名ピアニストという位置づけの人だった。
そのころ、クラシックの指揮者としては若手と見られていたアンドレ・プレヴィンが短期間の間に2度、この曲を録音したのがちょっと話題になっていて、おそらくFMで聴いたのだろう、大変甘美な旋律の多い交響曲だと思った記憶がある。
しかし、ノーカットの完全全曲で、およそ1時間は長かった。偏見のせいか、ピアノソロ抜きのピアノ協奏曲のようにも感じられ、いい曲とは思うものの「愛好曲」には至らない位置づけとなった。

それが昨今は大変な人気で、アマチュアの演奏会でもしばしば耳にする。何度も聴くと決してピアノ協奏曲の伴奏なんかではなく、立派な構成の交響曲とわかってくるのだが…それでも「余分なところが多い」印象は残ってしまっている。
しかしどうだ。
高谷氏の指揮で聴くと、そんな感じは全くしない。第1楽章の冒頭から、ラフマニノフ節が濃厚だが、ヴァイオリンの歌わせ方などずいぶんあっさりで、替わりにリズミカルの部分をうんと楽しく弾ませる。進むのが早く、あれっと思う間に第2楽章だ。シャカシャカするリズミカルな舞曲に時折感傷のフレーズが混ざるが、けっして弦にばかりウエイトをかけるのではなく、まず木管、特にクラリネットとファゴットをソロ的に活躍させ、そこのホルンが合いの手を入れ、続いてごく短く、トロンボーンとチューバが厚みを加える。このしくみは第3楽章も同じで、有名な泣きのテーマを冒頭にごく短く出して、すぐに長いクラリネット・ソロに受け渡す。全楽器鳴りを潜めてその素敵なソロに聴き入っていると、そこにファゴットが寄り添い、一気に「美麗主題」が全楽器で嫋嫋と鳴らされる。そしてダレそうになるころ合いに金管がアクセントを入れていく。
美麗旋律の出を待たなくても、細部のそうした動きが楽しく、面白い。それというのも、指揮者が「音の塗りつぶし」を避けて、細部の見通しが保てるように制御しているからだ。隅々まで音をDigした演奏、ということになるだろうか。それが万全に生きたフイナーレ、全楽器の乱舞が大きな盛り上がりを作っていく。クライマックスでシンバルを連打するなど、洗練された書法とはとても言えないが、ラフマニノフはとにかく一生懸命なのだ。聴き終わって、ほんとに1時間経ったの?と思えるほどだった。

さて、付け足しのように言うのもどうかとおもうが、この日は出演予定だったピアニストが急遽出られなくなったとのことで、プログラムが変更になった。プロコフィエフの代わりにチャイコフスキー、幻想序曲「ロメオとジュリエット」が演奏された。ネコパパ好みの曲なので期待したが、さすがに急ごしらえで何とかこなした、という感じになってしまっていた。ライヴ演奏には、何が起こるかわからない。楽員たちもさぞ緊張したことだろう。
オーケストラの名前がちょっと不思議になっているが、解説を読んで判明。名古屋芸術大学にはオーケストラが二つある。一つは学生オーケストラ、もう一つはフィルハーモニーで、後者は学生ではなく教員とプロメンバー(卒業生中心か?)で構成され、今回は合同演奏会ということだ。確かに主力の学生団員に、ベテランが混じっている。全体の響きはすっきりとよくまとまって、端正だ。金管と木管と弦のバランスもいい。ネコパパの好みとしては、チェロとコントラバスの低弦にもう少し厚みがあるといいと思った。「ずんずん」が聴こえてこない。それがいいという人もいるだろうけど。

この大学は録が配信にも力を入れていて、翌日にはもうYouTubeで配信されたのには驚いた。音は通常のステレオと、スマホ、ヘッドホン向きのバイノーラルの二種類を用意するという凝りようだ。そういえば、会場にはかなりの数のカメラが用意され、マイクの設置も本格的だな、と感じた。そうした技術面の習得も、カリキュラム化されているのだろう。長い動画だけれど、興味を感じられた方はご視聴いただきたい。

関連記事
スポンサーサイト



コメント

コメント(0)
コメント投稿
非公開コメント

プロフィール

yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

ご訪問ありがとうございます

月別アーカイブ

検索フォーム

QRコード

QR