あ、こいつ、逃げた~『のだめ』最終楽章

月某日
 
映画『のだめカンタービレ最終楽章後編』を鑑賞。

昨年公開された前編では、演奏部分の充実ぶりが見事だった。収録スタッフに腕利きのレコーディング・プロデューサー、江崎友淑が名を連ねているのも、ちょっとした驚きで、スタッフの彗眼はさすがだと思った。
ただ、演奏場面が、長時間になる分、ドラマの進行がどうしても遅くなってしまう。
後編では、ドラマがきちんと着地できるのか、そこが気がかりでは、あった。
 

残念なことに、その不安は的中。
後編は、ピアニストにラン・ランという名手を全編に起用していることもあって、演奏場面がさらに長く、曲数も多い。
原作に登場した楽曲はできるかぎり省略せず取り上げているのは、クラシックファンには実にありがたいことだ。それだけでも、画期的な作品で、一見に値するだろう。
しかし、その分ドラマにしわ寄せが来て、短い時間に多くの展開を詰め込もうとしているのは、ちょっと無理があった。
特に残念だったのは、結末。
 
音楽を仕事にする、という困難な課題をめぐって、原作ではコメディの手法を取りながらも、現実の厳しさから逃げない、真摯な描き方がされていた。
「あの子は音楽は好きだが、この業界は嫌いです」
というオクレール先生の言葉の重み。
最終場面では「何百年も前に書かれた、たった一つの音」が人々を結びつける不思議さが作者の独白のように語られる中、
「人としての普通の幸せ」と「天の与えてくれた才能」のつりあいの取り方の難しさや疑問について、最後の1ページまで、迷い続ける主人公が描かれている。
最終ページは
「また それか」…という千秋の呟きで締めくくられる。
 
ところが映画ではそれらをあっさりとパスしてしまい
「最高のさらに上」とか
「負けませんよ」とか、
いかにも体育会系の「決まり文句」での幕引きである。


ここまで「原作通りの言葉」を大切にして映像化に取り組んできたにもかかわらず、最後になって「あ、こいつ、逃げた」という印象になってしまった。

惜しい


【CAST/STAFF】
野田恵:上野樹里
千秋真一:玉木宏
峰龍太郎:瑛太
三木清良:水川あさみ
奥山真澄:小出恵介
フランク:ウエンツ瑛士
ターニャ:ベッキー
孫Rui:山田優
テオ:なだぎ武(ザ・プラン9)
黒木泰則:福士誠治
エリーゼ:吉瀬美智子
峰龍見:伊武雅刀
フランツ・シュトレーゼマン:竹中直人
総監督:武内英樹
監督:川村泰祐

製作:フジテレビジョン・講談社・アミューズ・東宝・FNS27社
制作プロダクション:シネバザール
コピーライト:(C)2010フジテレビ・講談社・アミューズ・東宝・FNS27社
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yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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