シベリウス、屹立する自然


シベリウス:
・カレリア組曲 Op.11
・森の精 Op.15
・トゥオネラの白鳥 Op.22-2
・レミンカイネンの帰郷 Op.22-4
・春の歌 Op.16
・悲しいワルツ Op.44-1
・鶴のいる風景 Op.44-2
・フィンランディア Op.26


ラハティ交響楽団
■オスモ・ヴァンスカ(指揮)

BISSA1645  BIS

 
フィンランドの作曲家ヤン・シベリウス。
人と音楽の両面で、大変興味深い存在だ。でも、本当に評価され始めたのはここ20年くらい。
それまでは交響曲第2番と、『フィンランディア』などいくつかの交響詩のみ知られた、地味な作曲家だった。
その真価に触れたと思ったのは、学生時代に買ったマルコム・サージェント指揮ウィーン・フィルによる廉価版LP。その深く、暗い音色と底冷えのするような迫力に痺れた。
『フィンランディア』
『伝説』
『カレリア組曲』
『トゥオネラの白鳥』

http://www.amazon.co.jp/gp/product/B000IJ7L3W

今聴いても色あせない名演だ。
以後、パーヴォ・ベルグルンド、ジョン・パルビローリなど、多くの演奏に親しんだ。聴くたびに新しい発見がある。
そして、演奏もとても多彩。
どの曲からも聞こえてくるのは、厳しい自然の音楽。でもブルックナーの音楽が神に祝福された自然の音楽とすれば、シベリウスは神も恐れる屹立した自然の音楽といっていいのかも。
そそりたつ岸壁。
真っ黒な水を湛えた地下の湖。
そこは、人を容易なことでは寄せ付けない場所である。
 
オスモ・ヴァンスカは新しい世代のシベリウス指揮者だ。
このディスクは、驚異的な録音の良さで、彼の個性と野心にあふれる演奏を伝えてくれる。
どの曲も『素朴な手作りの響き』を基本にしている。
テンポは中庸、もしくは早め。『悲しきワルツ』終盤の躍動的な音楽に変わる個所では、驚くほど速くなる。
ロマンティックな熱い響きで旋律を歌いあげる従来型の音作りを避け、
弦なども、聴きどころの旋律で厚みを持たせず、ごく自然に、軽い手つきで音を置いていく。ちょっとピリオド奏法を思わせるところもある。強奏部分でも少しも力んでいない。その代わりに、音に深い遠近感が感じられ、フィンランドの森の空気感が伝わってくるようだ。
屹立する自然の音楽、という曲の本質を、徹底した分析と繊細な技によって描きだす演奏。
それが、ヴァンスカのシベリウスだ。
 
普段あまり耳にしない隠れた名曲が収録されているのも貴重。
『森の精』は、初期の作品で、22分に達する大曲。すでにシベリウスにしか描けない自然の気配が濃厚である。
『鶴のいる風景』は、『トゥオネラ』に劣らない、異界の鳥の存在が感じられる名曲。



でも、愛聴盤になるかな?
名演奏だけど、研ぎ澄まされ、情報量がありすぎて、ちょっと聴き疲れするのも確か。録音も、ここまで来ると、良すぎるというか…いや、これは古いもの好きの耳になりすぎているせいなのかも…
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コメント

コメント(4)
No title
ヴァンスカは、個性的では済まされない何かを持った指揮者ですね♪
昨年、ベートーヴェン第9を生で聴きましたが、その帰りにCDも買ってしまいました。(^^

Kapell

2010/04/11 URL 編集返信

No title
さっそくのコメントをありがとうございます。
彼のベートーヴェンの交響曲CDはいくつか耳にしましたが、今のところシベリウスほどの追究度は感じられませんでした。ライヴではどうだったのでしょうか。

yositaka

2010/04/12 URL 編集返信

No title
遅ればせレスですみません。
第9ライブは、ヴァンスカ流の引き締まった旋律の歌わせ方やダイナミクスが生き生きとした音楽を生んでいるところが見事でした。この曲を何度も聴いている人でしたら、細部の表現にもアハ体験をすることと思います♪

Kapell

2010/06/13 URL 編集返信

No title
なるほど。第9でそれだけ可能だとしたら、期待は十分ですね。今後注目していきたいと思います。ありがとうございました!

yositaka

2010/06/13 URL 編集返信

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プロフィール

yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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