Zoom読書会、今夜は『北極百貨店のコンシェルジュさん』

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北極百貨店の新米コンシェルジュ、秋乃さんの得意技は、笑顔と脚力。
次々訪れる奇妙な動物のお客さんを前に、失敗と反省を繰り返すものの、その都度切り抜けて一人前のコンシェルジェに成長していきます。秋乃さんの満面の笑顔とバイタリティー、ちょっと変わった動物や人間(?)たちのキャラの立った描写も魅力的なファンタジー漫画の一冊です。

作者の西村ツチカ、ネコパパは児童書の挿絵でよく見かけていました。シャープな描線と、人物の繊細な美しさが魅力で、この人が挿絵を描いているとつい、読みたくなってしまう、そんな類の画家とおもっていましたが、漫画家としても活躍されている、いやこちらが本業と知ったのはつい最近です。

Wikiを見ると、1984年生まれ。神戸市長田区出身。2008年、「君の動き」が「月刊COMICリュウ」龍神賞にて銅龍賞を受賞、2011年、初単行本『なかよし団の冒険』により第15回文化庁メディア芸術祭マンガ部門新人賞を受賞。8人組バンド「トーベヤンソン・ニューヨーク」を結成し、ギターや作曲を担当されているとのことです。いやあ、多芸多才の若手作家だったんですね。こういう人は、一筋縄ではいかないな…とネコパパは直感します。

実際、ユーモラスな「人生修行」漫画にも思えるこの『北極百貨店』にしても、爽やかなエンタメ作品とは思えないところがある。「読書会」に選ばれるにはそれ相応の奥の深さがあるとみるべきでしょう。
何よりも大切なのは、この百貨店を訪れる動物のお客様のほとんどが「絶滅種」であること。そんな動物たちが擬人化されて登場し、人間のコンシェルジェたちに心からのもてなしを受ける話なのですから、自ずから「意味」なり「寓意」なり「メタファー」が隠されていると見るしかない。

そう考えると、繊細なデザインのラッピングを思わせる扉絵にしても、細部まで徹底して描かれたヨーロッパ風の贅を尽くした装飾や、エスカレーターの行き来する吹き抜けの垂直構造、多用される上からの「見下ろす」視線、偏在するフロアマネージャーの藤堂さん、絶滅種優遇に批判的で斜に構えた言動の目立つ外交員のトキワくん、そして店長とも思われる、店内を俯瞰しつつ秋乃さんに意味ありげな言葉を投げかけるオオウミガラスのエルるさん、どこもかしこも、だれもかれもが何らかの意味を背負い、読者に何事かを問いかけてくるのです。

ネコパパは時分なのにいくつかの着眼点とキーワードをもって読書会に臨みたいと思います。参加者の皆さんは、果たしてどんな読みを示されるのか?さあ、楽しみです。


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yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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