『レコード芸術』アーカイヴズ⑲昭和43年(1968)5月号

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昭和43年(1968)5月号

残念ながら1967年の分は保存されていなかった。
1968年5月の表紙LPはSLA1001の番号がある。
イシュトヴァン・ケルテス指揮ロンドン交響楽団、ドヴォルザーク 交響曲第9番『新世界から』/序曲『オセロ』1966年12月、ロンドン、キングズウェイ・ホールでの録音。
SLC規格、定価2000円で続いてきたキング・ロンドン盤が新たな規格番号を開始。価格は2300円。「ロンドン・デラックス・アルバム」と銘打たれた第1弾がこれだった。
豪華ダブルジャケット、マスタープレス、リハーサル盤の添付と、当初はレギュラー盤と差別化が図られた。しかし、時がたつにつれて、だんだんと簡素になり、いつしかSLAは同レーベルの「通常盤」になっていく。
布張りジャケットに文字は箔押しという装丁は、中学生時代通い詰めた町のレコード店でも目立つものだった。
ケルテスにはウィーン・フィルを指揮した1961年録音盤の『新世界』も人気で、この曲を買うならカラヤンかケルテス、というのが定評になっていたように思う。

表紙裏はビクターの広告。
このタイプのステレオは、お金に余裕のある友人宅でよく聴かせてもらったものだ。
当時から不可解だったのは、レコードプレーヤーがいちばん低い位置にあって、レコードを掛けにくいこと。ステレオは「家具」で、上の板を開いて掛ける方式だと「棚」としてものを載せられなくなるから、だろうか?
SEAは、のちにGRAPHIC EQUALIZER と呼ばれる音質調整機の一種。随分普及して、ラジカセにもついていたことがある。「万能音質調整装置」とは物々しい。要は5分割のトーンコントロールで、これでいちいち微調整して聴いていたひとが、はたしてどれだけあったか?
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次は「山野楽器」の広告。「山野はレコード・ファンの心を知っています」最新盤ばかりを追いません…要はマニアックな品ぞろえということ。ここでは、機械録音時代の名歌手ネリー・メルバの高価な輸入盤を宣伝している。
「心あるファン」は喜んで買ったのかもしれない。

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本号の目次。残念ながら肝心のマーラー特集は1ページもクリップされていない。
この時期はレナード・バーンスタイン指揮ニューヨーク・フィル盤(第8のみロンドン交響楽団)によるマーラーの交響曲全集が完結したばかりで、それが「海外レコード論評」として取り上げられている。もしかすると、まだ国内盤は出ていなかったのかもしれない。かなり先駆的な特集だ。

目次を見ていて面白いのが「月評」の扱うジャンルが広いこと。
クラシックだけではなく純邦楽、ジャズ、シャンソンからラテン・タンゴまでオールジャンルを扱い、それぞれに当時の権威者が執筆している。幅広い視野で『レコード芸術』を俯瞰する雑誌だったのだ。
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ヨーロッパ音楽の旅の企画も続いている。
1966年は二十五日間677000という豪勢な企画だったが、1968年ではやや日数を減らして2コースを設定し、費用もだいぶ値下げしている。旅程はわからないが、教育者会議中心の「イスメ・コース」よりも「バイロイト・コース」の方が良さそうな気がする。でも、ずっとバイロイトに缶詰というのも、どうもなあ。
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次は海外楽信、ドイツ。ミュンヘンでのヨーゼフ・カイルベルトがグルックの「オルフェオトエウリディーチェ」の指揮をしたことが報じられている。しかし彼はこの年、1968年7月に急逝してしまう。
もうひとつ、テノールのプラシド・ドミンゴがメト・デビューに続いてハンブルクで『ラ・ボエーム』に出演。『ローエングリン』での失敗談も紹介されている。
後の大歌手も、若い頃はこういうこともあったのだ。

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ウィーン・フィル弦楽四重奏団は、ウィーン・フィル団員で結成された複数の室内楽グループの一つ。
よく似た名前の団体がいくつもあり、ウェルナー・ヒンクの率いた1964年創設のグループも同じ名前で呼ばれるので、ややこしい。記事によると、どうやらバリリ四重奏団の後継に当たるらしい。
残されている1ページ目は楽員紹介で、肝心のインタビューがほとんど読めないのは残念だ。ウイーン・フィルの楽団長だったオットー・シュトラッサーがそういう役回りにふさわしくメモ魔で面倒見が良い人だったことがわかる。
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次はズービン・メータ指揮のヴェルディ『アイーダ』の新録音を紹介するグラビア。
5ページを費やして、貴重な録音セッションの写真を交えて紹介しているのだが…
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肝心の演奏内容についての小林利之の批評が辛口、というか、かなり辛辣だ。
メータの指揮が遅いことについて「吐き気を催すような陰湿さ」と書き、アムネリスの歌唱はNHKイタリア・オペラ公演で歌ったシミオナートの名唱と比較して「ひどくものたりない」と書く。
もちろん、褒めるところは褒めているのだが「○○のファンならば」と条件付きのお薦めとは、決して好意的なものではない。期待して写真提供した東芝エンジェルの販売部は、これを読んで落胆したに違いない。
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次はTEACの広告。「大変贅沢な設計です。しかしポリシーがそれを必要とするのです」として、取り上げている箱なしのターンテーブル、こういうのを単体で売っている会社は、今でもあるのだろうか?
振動を防ぐ重量級のエンクロージャーは、自作派の腕の見せ所となるか、それとも別売品を買うのか。

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海外楽信、アメリカ。
トロント交響楽団の常任指揮者を務めていた小澤征爾がサンフランシスコ交響楽団に転出。後任はカレル・アンチェル。アンチェルと言えばチェコ・フィルの指揮者として知られているが、1968年のチェコ事件を機に、アメリカに亡命、69年から73年までカナダ・トロントの常任を務めて、65歳で没した。
トロントでの活動は、グレン・グールドをソリストとしたベートーヴェンの『皇帝』のテレビ映像(1970年)くらいしか知られていない。
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エルネスト・アンセルメは手塩にかけたスイス・ロマンド管弦楽団の音楽監督を、1967年に引退し、自由な客演生活を送っていた。アメリカ交響楽団やベルリン・フィルを矍鑠と指揮していたことがわかる。この記事が出てすぐの68年6月にはスイス・ロマンドを指揮して来日公演も行っている。翌69年2月没。
スクロヴァチェフスキのペンデレツキ『ルカ受難曲』初演。マーキュリー録音のころから数年、ミネアポリス交響楽団はミスターSの薫陶でずいぶん力をつけたようだ。

最後は「名曲へのいざない」モーツァルトの巻。筆者は海老沢敏。1ページしか残っていないのが残念だ。
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モーツァルトの「名曲」とはなにか、と自問自答している様子がわかる。一般には後期の作品が中心となるが、時代との関連を重視して追っていくことが必要で、そのためにはケッヘルの作品目録という、どの作曲家よりも完備されたものがあるのが心強い。
そう、「傑作」揃いだが誰もが知る「名曲」となると、パッと出てこないのがモーツァルト。海老沢氏もおそらくそのあたりのことを言っているような気がする。出来不出来が少なく、それぞれ独自の魅力があるが、それがあんまり多すぎて選びにくい。それがモーツァルトなのだ。
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コメント

コメント(22)
1968年の広告
ネコパパさん

表紙の布張りのジャケットに文字は箔押しという装丁、DF(LES DISCOPHILES FRANCAIS)のシャケットとおなじですね。カラー写真が印刷してあるのは、美的感覚のちがいですかね。

相変わらず広告は、私を楽しませてくれます。
ビクター広告>プレーヤが一番下?床が弱いと上部にあると揺れ幅が大きいですけど、スペースをとるので一度セットしたら調整しないSEA(Sound Effect Amplifier)-200 \37,000円がニッパー犬の下にある。更に扉が前にあるので手を伸ばさないといけない。インテリア感覚の設計思想は、かわっていないですね。
ヨーロッパ音楽の旅の企画>協賛 日本通運東京支店とある。まだ旅行会社の力は、弱かったのですね。
TEACの広告>前回のビクターは、2つのアイドラドライブ方式でしたがTEACは、両面研磨高精度ベルトドライブとなっています。ベルトが、ウレタンゴム? SPダンパーの数年で劣化してボロボロになるやっですね。まあ自作する人は、ベルトは消耗品と割り切っているのでいいでしょう。
マグネフロート「機械?」や前回ビクターのアウターロータ式モータは、「オーディオの足跡」にあるTEAC TN-400 DD方式ターンテーブルの写真・構造図を参照してください。
https://audio-heritage.jp/TEAC-ESOTERIC/etc/tn-400.html

本誌のズービン・メータ他気になる記事がありますので後でじっくりと読ませて頂きます。

チャラン

2023/06/01 URL 編集返信

オーディオに目覚めた時期でした~
TEACのTN-202というターンテーブルはパスピエが最初にコンポなるものを揃えた時に選んだもので懐かしいです。アームはFR-24MkⅡ、カートリッジはオルトフォンのSL-15E
だったかな?とにかく毎日が楽しい時期でした。

表紙を飾ったケルテスの「新世界」は今でも手元にあります(^^)/

パスピエ

2023/06/01 URL 編集返信

Re:1968年の広告
チャランさん

>布張りのジャケット
ディスコフィル・フランセを参考にしたかもしれませんが、この装丁はこの1枚で終わりで、しかもオイルショック後は番号は同じでも紙装丁に変更されてしまいました。他社の工夫を凝らした装丁も同じで、オイルショック前のものをお持ちの方は大切にした方がいいと思います。

>インテリア感覚
特段音楽に関心のない一般層に売り出そうとすると、どうしてもそうなったんでしょう。応接間に百科事典と同じです。

>TEAC
ベルトドライブってこの頃から一般化してきたんでしょうか。スピーカーとは違い、プレーヤーのベルトは伸びるとすぐ音に出るのでわかります。
高校生で使っていたビクターのプレーヤーのベルトが伸びて、これが消耗品とわかり、結構高くついてがっくりきた記憶があります。
その後DDが出たのは喜ばしく、以来、ずっとうちのプレーヤーはDDです。

マグネフロートは、重いターンテーブルを磁石の反発で浮かせて使う方式ですか。えらいことを考えましたね。昔も今も、オーディオの技術者は実験精神の塊です。

yositaka

2023/06/01 URL 編集返信

yositaka
Re:オーディオに目覚めた時期でした~
パスピエさん

アーム、カートリッジも別にそろえる視点は、まさにオーディオファンの姿勢ですね。
私は昔も今も家電オーディオで、ごく一般的なものしか買ったことがありませんし、カートリッジ交換なんて世界があるのを知ったのは、ほんの数年前です。いじればなかなか面白いとは思うものの、そのお金があったら1枚でもレコードを買いたいほうでした。
>ケルテスの「新世界」
後ろ髪を惹かれながらも、ハイプライス盤の壁は破れなかった。これを買ったのは、キングがついに1000円で出したCDでした。
その後、中古LPを漁っているのは、当時買えなかった悔しさがあるのかもしれません。でも布張り箔押しの「新世界」美品は、なかなか見ない。みんな大事にしているんでしょう。

yositaka

2023/06/01 URL 編集返信

アンチェル
カレル・アンチェルは、私認定の大指揮者の一人です。
素晴らしい指揮をする人だと思います。

メータを貶して、クラシックの評論家は好き放題なことを言っていますね(苦笑)
ジャズやロックやポップスの評論家は、悪口に近いようなことは殆ど言いませんが。
クラシックは特殊な世界かもしれません。


不二家憩希

2023/06/01 URL 編集返信

yositaka
Re:アンチェル
不二家憩希さん

アンチェルというと、大戦中はユダヤ系であったためアウシュヴィッツに送られ、父母、妻子みな殺されて彼一人が奇跡的に生還したこと、件のソ連のプラハ侵攻でアメリカからカナダに亡命、亡くなるまでトロント交響楽団の音楽監督を務めたこと、と失意の人生が浮かんできてなかなか冷静に聴けません。また、それほどは聴いていないのが現状ですが、『わが祖国』『シンフォニエッタ』は印象に残っています。キリリと緊張感のある演奏をする人です。

>評論家は好き放題

特に60年代までは、歯に衣着せずに批判する傾向はありました。
読者も高価なLPをそう買えなかった時代で、白黒はっきりした批評が望まれていたし、批評家の方も自分の理想を基準にするしかなく、孤軍奮闘だったのでしょう。
小林利之という人は、批評家連の中では穏健な人だと思っていたので、この『アイーダ』評には、いささか驚かされました。
でも個人的には、忖度過剰な現在よりも面白く読めるのも事実です。

yositaka

2023/06/01 URL 編集返信

あーっ、もう1968年まで来ましたか
ビクターのステレオ、うーん、『音響直視装置』ってのは一体なんだか、どなたか教えてください。(笑)

若きメータ、初の「アイーダ」にけっこう厳し目の評価のようですね。
今の時点で、例えば英国Presto Classicalあたりの品揃えを見ると、このコレルリとニルソンが歌った「アイーダ」メータ盤は堂々現役ですね。メータの「アイーダ」の録音はけっこうあるので、これが残っているのは高評価ということでしょうし、実際Gramophoneのガイドでも、セラフィン盤に次いで、推薦盤に上っています。50-60年代の「アイーダ」で推薦盤はこの2つだけです。どうも、「歴史」の判定はメータ側に上ったようですな。(笑)

>『ローエングリン』での失敗談も紹介されている…

ベテランの歌手でもこういうことは時々起こるようです。
ビルギット・ニルソンの回想でも、トリスタンとイゾルデの2重唱の途中で分からなくなった経験を語ってました。舞台にはプロンプターもいる(観客には見えない位置で楽譜を持っている)のですが、いつも役に立つわけではない。そして、そんなとき指揮者が暗譜の人だと大変なことになるのです。(笑)その時はカラヤンで、彼はそしらぬふりをしていたらしい。(笑)サヴァリッシュのときは、彼はちゃんと楽譜を持っているから、適切なところで合図を投げて、救ってくれたとのこと。オペラは何が起こるか分からないから、暗譜はいかんです。

みっち

2023/06/01 URL 編集返信

Re:あーっ、もう1968年まで来ましたか
みっちさん
>『音響直視装置』
まさかとは思いますが「操作方式」というところから…ボリュームなどがスライド式になっていて音量が「見える」こと、だったりして。

>メータ、初の「アイーダ」
文章にも書かれていますが全曲盤自体少なく、小林氏もライヴの記憶に頼って評価基準を定めているところから、善し悪しはあくまで少ない視聴体験で作られた「個人の理想」にあると思います。時代の制約で、仕方がなかったとは思いますが、あとちょっと、人としての器の広さがあれば、印象も変わったでしょう。バックナンバーを読んでいて思うのは、当時の批評家は、概して若手演奏家を褒めないということです。

>サヴァリッシュのときは…
あ、それN響の人もTVで言ってました。演奏の失敗を、瞬時の動きで修復するのが上手い人だと。こういう指揮者だと歌手の安心感も大きいでしょう。トスカニーニとかネロ・サンティはオペラもすべて暗譜だったそうですが、どんな具合だったのかな。
それにしてもオペラの上演は本当にいろいろな要素があるから、何が起こってもおかしくないですね。レコード会社から「ライヴ演奏」として発売されているものも、相当修正されていると思います。

yositaka

2023/06/01 URL 編集返信

Re:Re:1968年の広告
ネコパパさん

『音響直視装置』>はじめ右側のディスプレーに表示されるのかなと思いましたがYou Tubeで確認したところ単なるFM/TV/AMの表示でしたのでネコパパさんの言われる通りスライドボリュームのツマミの位置で確認するだけのようです。
モデルチェンジした装置のプレーヤは、上に移動し上蓋の裏に「Stereo-Audiola」と表示がありました。SEAは、設定位置を記憶するようになりサラウンドシステムに進化しましたね。

メータの「アィーダ」>オペラは、まだネコパパさんに4回しかご教授して頂いてませんが記憶に残っているのは、映像と音楽の一致です。どんなに名演奏を聴かされても舞台が想像できないと私にはチンプンカンプンです。メータの演奏が遅いと言われてもライブでないのでメータの想定している場面が歌手の仕草も加味したのであれば遅くなると思いますが。カラヤンのライブ演奏を見ていませんので演奏を比較されても私には分かりません。

モーツァルトの「名曲」とはなにか>王侯貴族向けの曲と思われ どれも華麗で優雅で上品に聴こえます。そんな中どれお選ぶかと言われると指揮者・演奏家しかありませんので16歳のメニューインが奏でる「協奏曲7番」が良いなと思っていたら、どなたかが誰とは言いませんが「この曲は、贋作だよ」と言われ私も「名曲」は、分からなくなりました。

チャラン

2023/06/01 URL 編集返信

yositaka
Re:Re:Re:1968年の広告
チャランさん

スライド式にしたくらいで「装置」と言い張る宣伝戦略、なかなかのものです。針小棒大。
>「Stereo-Audiola」
ビクターが商標にしたオーディオラという言葉が、オーディオの一般化の始まりだったかも。SEAはその後、うちのモジュラーステレオアンプにも、ラジカセにもつくようになりますが、意識的にコントロールしたことはありませんね。

>映像と音楽の一致
「音楽を楽しむ会」で使用しているDVDはほとんどがライヴ録画なので、初期によくあった「演奏音声別録り作品」のような不自然さがありません。舞台と音楽が一度に楽しめる優れものです。もっとも、映像は繰り返し見るには煩わしいのが難点で、そこに音楽だけのメディアの価値があります。スタジオ録音のオペラは音だけで完結することを目指していて、そもそも演技していないので、評価も音楽だけに絞られて厳しくなる。どちらがいいというよりも好みでしょう。

>モーツァルトの「名曲」
どれもいいと思う一方で、みんな知っている曲と言えば、アイネ・クライネ、トルコ行進曲、みじかくも美しく燃え、哀しみのシンフォニー…くらいしか思い浮かばないのが不思議です。
「協奏曲7番」は名曲ですがモーツァルトの名曲ではなく、謎の名曲です。一度贋作と決まると忘れ去られる定めなのか。でも、ハイドンのセレナードも他人の曲だが、今も演奏されます。ケースバイケースのようです。それに、あまり言われませんが、楽譜が出版されているかどうかも大きいようです。

yositaka

2023/06/01 URL 編集返信

そ~っと‥‥;;。
いやも~‥‥このアーカイヴは千客万来‥‥あとからこわごわ、そっと ;;。

> 小林利之の批評が辛口、というか、かなり辛辣だ。
> メータの指揮が遅いことについて「吐き気を催すような陰湿さ」と書き、…
ちょっと申しづらく感じるのですが、小林氏のなかなかどぎつい表現は、メータの演奏に対する酷評ではなく、作品及び演奏の劇性の深さに対する「評価」ではないか、と私には読めました。
う~ん、浅読みかな~…。

「音響直視装置」は、単純に “GRAPHIC” equalizer を訳したのでは…。SEAコントロールのことを指すと思われますが、「音響直視装置をはじめ、…」と書き、次項に SEAを説明したため、何やら別もののように思える、この辺は、今でもよくある、技術サイドとカタログ編集サイドとの知識の齟齬か、と思ったりしました。チャランさんのご示教でよいような気がします。

TEACのマグネフロートは、うまく考えたものです。
ダイレクトドライブになると、モーターのヨークの下側に、プラッターのマグネットを持ってきて、反発ではなく、上方向に吸引する形で、ビクターが開発していました。これも軸受けにかかる負担を少なくできるもので、「マグネティック・サポート」方式とか。ダイレクトドライブでは、モーターの構造自体の中に、マグネフロートを組み込むことができたわけです:
https://audio-heritage.jp/VICTOR/player/ql-a70.html
上記サイト中の説明で、「ローターヨーク」とあるものは、カタログでは「ステーターヨーク」とあったような記憶も。ヨークは、「固定子」側なのですから…。
QL-A70は、一時期 使用していました。プラッターをはずすと、強力な磁力でセンターシャフトは上に引っぱられ、「ガツン!」と、ガチガチに固定されます。

さて‥‥レコ芸6月号、どうしようっかな~、と迷いつつ、広告の特集などを見ると「やめとこ」に終わりそうです;;。

へうたむ

2023/06/03 URL 編集返信

補足 ;;…。
チャランさんがご紹介の TN-400において、TEACがすでにDD型に用いていました(汗;;)。
TN-400では、マグネフロート専用のマグネットを、プラッター側とプレーヤー・ベース側に反発するように設置し、駆動用マグネット(ローターマグネット)は別に置いていますが、ビクターはローターマグネットと固定子のヨークという、DDモーターの主要部品をフローティング(厳密には浮くわけではなく、重量軽減)に用いた、ということになるでしょうか…。

へうたむ

2023/06/03 URL 編集返信

yositaka
Re:そ~っと‥‥;;。
へうたむさん

>作品及び演奏の劇性の深さに対する「評価」
もちろん、そのような面を表に出している、と私も思います。でも全体の文脈から、小林氏がメータの表現にあまり好意的でないために、こういうネガティブな形容をしてしまったと個人的には思います。これを聴いた小林氏、自身の『アイーダ』観と違うために、かなり当惑しているようにも…
ただ、一方で「だったら聴いてみよう」と思う人がいても不思議ではありませんね。

>「音響直視装置」
私もSEAのことかなと思ったんですが、それは接続端子だけで別売、本体には付いてないので、やはり「スライド式」という操作方法のことではないかと思った次第。これって、読み手を煙に巻くような説明だと思いますが、確信犯?

>マグネフロート
ダイレクトドライブを可能にする技術を切り開いたということでしょうか。「音響直視装置」とは違って、これこそ本物の技術開発のような気がします。

>レコ芸6月号
やっぱりこれも、立ち読みならぬ座り読みで済ませてしまいました。最終号は、さて?

yositaka

2023/06/03 URL 編集返信

yositaka
Re:補足 ;;…。
へうたむさん

これについてはチャランさんにお答えをいただかないと。ネコパパにはさっぱりです。

yositaka

2023/06/03 URL 編集返信

さらに連投です
>『メータは、…アムネリスの歌をことさらにテンポを落とし、きわめて陰湿な表現によって嫉妬のこころを内攻させていく。』
>『とりわけ第二幕一場の…女性の心理の葛藤は、メータの…オーケストラに支えられて、吐き気をもよおすような陰湿さがよどんでいる。』

この「陰湿」2つですが(笑)、文脈からして、最初の方はメータになんか直接責任がありそう(笑)、後の方はどうかなぁ、陰湿幇助てなところですかなぁ。(爆)しっかし、こういう表現は初めて見ました。

>「音響直視装置」

ネコパパさんが云われるとおり、スライド・ヴォリューム式のつまみ配置のことを指し、あとAM-FMの周波数窓の独特のデザインもその中に含まれているのかも知れません。
この4つあるスライド・ヴォリュームは、むろん有名なJBLのGraphic Controller SG520(1964年)のパクリでしょう、ラックスのSQ38Fなんかも、マランツ7(1958年)の影響モロですし。
左からBass、Treble、左Volume、右Volumeのようです。SG520は左右Bass、左右Trebleでした。このためSG520は別に音量ヴォリュームとバランス調節用のスライド・ヴォリュームを持っています。それに比べると、合理的な設計かも。(?)
周波数窓のカーソルは十字形で、斜めに移動するという凝った設計、横軸がAM、縦軸がFMなんですけど、AMとFMの周波数には何の関係もないので、これをXY軸にしたのは、単にデザインのためでしょうねぇ。

みっち

2023/06/03 URL 編集返信

Re:補足 ;;…。
へうたむさん

完全な磁気浮上ではありませんが。完全に浮上させると位置検知・制御装置が必要で強力な磁場は、カートリッジの信号に影響が出やすいです。
1973年のティアックは、永久磁石を使った「反発型磁気軸受」 
1983年のビクターは、モータ固定部の電磁石と回転部の永久磁石を水平にして吸引力の一部を利用した「能動型磁気軸受」になります。
この機構は、欧米では古くから知られていましたが、具体化する為に制御する部品(半導体)製造を日本がいち早く手掛けましたので、外人からトランジスタ人、メガネをかけカメラを持った猿と揶揄されました。揶揄されるのが花です。

広告は、横文字に弱い私には、反面教師であり技術の歴史を知るうえで貴重な資料であり思い出です。

チャラン

2023/06/03 URL 編集返信

yositaka
Re:さらに連投です
みっちさん

>「陰湿」
これはとても主観の勝った表現だと思います。文学ならともかく音楽に対して使うのは、たしかにあまり見たことがないし、よほどの自信がないと使えない言葉です。批評の言葉が熟しておらず試行錯誤の時代だったとも言えるかもしれません。

>左からBass、Treble、左Volume、右Volume
ボリュームだけで4つとは変だと思い「ボリュームなど」と書きましたが内心は多分おっしゃる通りだと思っていました。こういうスライド式、当時は頼りなく思えたし、ガリ音も出たような気もします。現在では使われないのも、相応の理由があったのでしょう。

>横軸がAM、縦軸がFM
それは気づきませんでした。実物を見たら結構かっこいいと思ったかもしれません。デザイン上とはいえ、よくいろいろ考えますねえ。

yositaka

2023/06/03 URL 編集返信

yositaka
Re:Re:補足 ;;…。
チャランさん

>広告は…貴重な資料
本文は単行本化ムック化されることはあっても広告は残りません。確かに時代の証言者で、個人の記憶にも残りやすいもの。こうしてアーカイヴするのも何かの意味はあるのかもしれません。
>トランジスタ人
ある時期日本人は世界の中の異能力集団とみなされていました。現在はどうなのかを顧みると「揶揄されるのが花」とは言いえて妙です。

yositaka

2023/06/03 URL 編集返信

いろいろご示教、ありがとうございました。
チャランさん、ご示教ありがとうございます。

> 欧米では古くから知られていましたが、具体化する為に制御する部品(半導体)製造を…
ビクター QL-A70のような方式は、DDモーターに必要な半導体回路以外、とくに半導体は不要なように思われます…。

> 1983年のビクターは‥‥「能動型磁気軸受」になります。
「磁気軸受」は、非接触式のはずですので、QL-A70等とは異なります。これをビクターが実現していたとは、チャランさんのご示教を疑うわけではありませんが、驚きです。

> 強力な磁場は、カートリッジの信号に影響が出やすいです。
はい。QL-A70のような方式では、断面図からわかるとおり、ローターマグネットをぐっと下部に設置しますので、強力なマグネットを駆動と重量軽減に用いつつ、カートリッジへの影響は少ないかと思います。
なお、DDモーターの駆動の仕組みの詳細、磁気軸受に関する専門的知識はありませんので、間違っていましたらご容赦ください m(_ _)m。

> 最終号は、さて? by ネコパパさん
あ、あと1号ありました ;;。また広告を見て検討します ;;。

> 「揶揄されるのが花」とは言いえて妙です。 by 同上
まったくねぇ~。“機械からくり”面では異能を発揮した民族も、ソフトウェア、デザイン、インターフェイスが重要になるや、こうなります。トラブル山積のマイナカードなど、象徴的です。

P.S. 現時点で、「非接触磁気軸受」を公称するプレーヤーは、
・Esoteric Gradioso T1
https://av.watch.impress.co.jp/docs/news/1430083.html
・由紀精密 AP-0
https://www.jas-audio.or.jp/journal_contents/journal202302_post18079
の2機種が見つかりました。AP-0は糸ドライブなので、軸が浮いていたらモーター側に引っぱられるだろう、と思ったら、モーターの反対側にもプーリーを置き、シンメトリー駆動で実現、とか。う~ん。

へうたむ

2023/06/04 URL 編集返信

訂正;;
Gradioso T1 → Grandioso T1 でした;;。こっちが770万円ですから、AP-0の200万円が安く見えます。う~ん;;。

へうたむ

2023/06/04 URL 編集返信

Re:いろいろご示教、ありがとうございました。
ネコパパさん
ネコパパさん、音楽ブログに技術的投稿をして申し訳ありません。
へうたむさん、説明が無く申し訳ありません。広告の文は、軸受けの負荷を軽減するたに磁気浮上を採用しています。完全な非接触の磁気浮上ではないので接触の隙間を正確に調整する機構は、不要ですので半導体は、使われていません。
日本のオーディオ技術の多くは、模倣(GE,WE,SME,ビクター等)から始まっています。彼らから見れば物まねをする猿に思えたのでしょう。
磁力線の影響は、ターンテーブルが非磁性体のアルミでできているので防磁効果がありますがモーターケースが鉄で出来ているプレーヤ下部に信号線を這わすとシールド線でも微小電流(電圧)の為ノイズが発生します。(
某メーカのカートリッジ取付純正ボルトが焼き入りであったため危うくカンチレバーを曲げるところでした。
ご紹介のEsoteric Gradioso T1は、DDモータではありません。軸受け部が独立してスリーブと軸間が工作加工精度の高い強力な磁石で出来ているようですね。ドライブモータ部とターンテーブルは、非接触のアイドラードライブ式となっています。
エソテリックは、ヤマハ→ティアック→エソテリックと会社の流れになっていますのでティアックの技術がGradioso T1に進化したのでしょう。広告から技術の開発の歴史を読み取るのも面白いですよ。

チャラン

2023/06/04 URL 編集返信

失礼しました~;;。
チャランさん、

> Esoteric Gradioso T1は、DDモータではありません。
> 非接触のアイドラードライブ式となっています。
そのようですね。ベルトドライブと申したのは、AP-0のほうです。
Grandioso T1は、軸受も駆動もすべて磁力で、非接触で行なうという、リニア新幹線を回転動作で行なっているような、ちょっと驚くべきモデルかと思います。

> 広告から技術の開発の歴史を読み取るのも面白いですよ。
はい、面白いです^^!
いろいろご示教、ありがとうございました。

ネコパパさん、私のほうこそ、本題からそれた話題で散らかし、失礼しました m(_ _;)m。これにて終了にいたします;;;。

へうたむ

2023/06/04 URL 編集返信

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プロフィール

yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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