近頃ちょっと日本の作曲家のクラシック作品にも興味のあるネコパパ。
近場でこんなコンサートが開かれたので聴いてきました。「この内容でお客の入りは大丈夫なのかな」と思いましたが、会場についてみると駐車場はほぼ満車、席も8割の入りでした。

プログラムは3曲のうち2曲が日本の作曲家、あと1曲が、日本を題材とした、かの『惑星』の作曲家、ギュスターヴ・ホルストの曲です。おなじみ、外山先生の名曲以外は、ネコパパが初めて耳にするものです。
演奏の前に指揮者、高谷光信氏がプレトーク。メインで取り上げる作曲家、芥川也寸志の経歴と人生についての思い入れを語るとともに、音楽と平和の関係についてメッセージを送る内容。氏がウクライナ音楽院で学び、同地のオーケストラを20年以上指揮してきたことも合わせて、聴衆に「言葉で」伝えたいことがあったと思われます。
最初の「ラプソディ」は、ちょっと緊張していたのか、リズムがいまひとつ決まらす、不安を抱えての出だしでしたが、演奏が進むにつれて、思い切って音を出す太鼓や拍子木にも押されて、「八木節」の再現のあたりから、気持ちの良い盛り上がりに持っていけたのは何よりでした。
続くホルストは1915年の作。留学していた日本人ダンサー伊藤道郎の依頼で、作曲中だった『惑星』を中断して作られたそうですが、日本民謡が巧みに生かされた抒情的な作品でした。途中「ねんねんころりよ~」のメロディが出てくるところなんて、ほんとに他国の人が書いたのか、と思わせるくらいしっくりとしています。一方、金管を生かした部分には、確かに『惑星』のエコーが感じられる。演奏は1曲目とは打って変わって落ち着いた、整ったものでした。
休憩をはさんでメイン曲、芥川の交響曲第1番が始まります。
第1楽章は地響きのような不安感でゆっくりとはじまり、次第に激しいリズムの横溢する曲想に変化していきます。曲全体にスネアドラムとバスドラムの打ち鳴らすリズムが凄く、それは第2楽章に入るとさらにテンポを速めて爆走。弦楽器は短い動機をユニゾンでかき鳴らす。血沸き肉躍るという表現がふさわしい音楽で、言ってみればプロコフィエフやショスタコーヴィチの曲からそんな部分だけをピックアップしてきたという感じです。唯一、緩徐な第3楽章だけはゴジラみたいな巨大生物が地の底から這いあがってくるような不気味さを醸し出す。なんともかっこいい、一気に聴けて、聴衆の血行も増進する、すばらしいエンタメ交響曲なのでした。これ、どこでやっても喝采間違いなしの名曲です。
演奏も、楽員全員が楽しんで演奏しているのが伝わってきました。打楽器も金管も鳴らし過ぎるくらいの勢いでしたが、この曲なら正解!
アンコールも良かった。
芥川作曲、1964年の大河ドラマ『赤穂浪士』のテーマ曲です。
聴衆の多くがネコパパよりも年配で、毎回見ていたんでしょう。印象的なムチの連打にあわせて拍子を取りながら楽しそうに聞いておられる方が目立ちました。ネコパパは9歳でしたが、リアルタイムで覚えていますよ。これのモデルはラヴェルの『ボレロ』です。リズムに合わせて執拗にフレーズを反復させながら、ぐんぐん音量を上げていき、バタッと終わる。
リズムの反復、打楽器の強打にユニゾンの連続。芥川は日本人の心性にぴたりと寄り添う音楽を書いたんですね。もっともっと、聴かれるべきでしょう。
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コメント
外山の『ラプソディー』は、作曲者指揮のCBS・ソニーのセット(00AC1432~5)で持っていたことがあります。
https://www.snowrecords.jp/?pid=89823743
この中では、もったいないことながら、伊福部 昭『交響譚詩』しかほとんど聴いていなかったと記憶します。そして、伊福部に惹かれたのもこのレコードからでした。
ホルストの『日本組曲』は、ボールト/LPOの Lyrita盤(SRCD.222)で見つけ、今でもよく聴きます。山尾敦史『近代・現代英国音楽入門』(ON BOOKS)には、「なんだか伊福部昭の音楽を聴いているようだ」とあります。いかにも、じゃないでしょうか^^。
芥川の交響曲は‥‥プロコフィエフの二番煎じのような感がぬぐい切れず、その場の感興はともかく、繰り返して聴くとどうかな~(すみません;;)。
上記、CBSのアルバムでは、小倉 朗の交響曲も好きになりましたが、LP全放出後、CD(芥川さんの指揮だったかな? )で聴いていると、バルトークの亜流の感じが増し、飽きました。
へうたむ
2023/05/24 URL 編集返信素人の妄言ですが、日本の管弦楽曲はリズムとユニゾンが命の「東欧風ローカリズム」が特徴と思います。作曲家たちは当時脚光を浴びていたショスタコーヴィチ、プロコフィエフ、バルトーク、ストラヴィンスキーから多くを学んでこの作風を築いた。一方でフランス音楽を学び独自に研ぎ澄ませた一派もあり、これはこれで別の魅力を持っています。
でも人気はそれほどなくて、武満など一部を除いて、レコードは、中古店でも安く買えます。00AC1432~5も架蔵していますよ。外山指揮のN響定期3回分を収録した好選曲セットが1000円ちょっとで買えて、中身は新品同様でした。こういう曲目がアマオケのレパートリーになり、集客もよいというのは嬉しいことです。
yositaka
2023/05/24 URL 編集返信