蓄音機仲間のITさんのご紹介で拝聴することができました。
市民会館の隣、名古屋フィルの練習場としても使われている『音楽プラザ』のロビーで開催されたサロンコンサートです。街の夜景を背景に室内楽を聴くというのは、なかなか素敵です。ちょっとしたセレブの気分?
演奏者は、ふたりとも芸術大学在学中の1年生、とのこと。そこで期待したのはタイトルの通り「春との共鳴」の音楽でしたが、始まってみると、そんな「若葉」の音楽とは様相が違いました。
聴き進むうちに、じわっと手に汗が…それはもう、ちょっと愕然とするような演奏でした。ヴァイオリニスト、早川さんのの弾きだす音は、低音の強めな独特の手ごたえのある音色、弓の先端まで音圧が下がらない、弓遣い、それになんといっても魅力なのは、息の長い、彼女だけの「歌の流れ」を持っているところです。
シューベルトのソナチネは、はじめの一音から「こっ、これは…」と思わせる、抒情の流れが美しい演奏でした。
続くバッハの無伴奏ソナタからの1曲は、冒頭主題の複雑なリズムにの動きに若干の戸惑いを感じさせたものの、フーガの進行に連れて集中力が増して、バッハの魅力がにじみ出てくる、という風情。
当夜の白眉は「ハバネラ」で、本当に久々にこの曲を聴いたのですが「こんなに良い曲だったっけ」と思うくらいの、技と歌が一致した演奏でした。最後のフバイは、難技巧の連続するショーピースでした。有名なメロディーが次々に登場し、二人の演奏は、観客との一体感を楽しむかのように、余裕を感じさせる盛り上がりを極めていきます。
ネコパパも珍しく「ブラヴォ―!」の声を上げてしまいました。
今井さんのピアノは、ヴァイオリンとの掛け合いを楽しむというスタイルではないものの、自在感の強いヴァイオリンをきっちりと支えた盤石の伴奏でした。若い人のピアノ演奏には時々、やたら大きく強い音で「叩きすぎる」と感じることがあるのですが、今宵のピアノはよく吟味された音色で「楽器」よりも「音楽」が鳴っていました。
アンコール曲はクライスラーの「カヴァティーナ」。あまり演奏されない曲と思惚れますが、低音をたっぷり効かせたカンタービレが早川さんのスタイルにぴったり。1時間とは思えない、高密度の音楽を楽しませていただきました。
心からの拍手を!
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