この演奏会は名曲カフェ『エグモント』のTwitterからお知らせをもらって知りました。本番までの様子が、カウントダウンで知らされてくるというのは、ネコパパにとって初めての体験。楽員の皆さんの情熱と意欲が伝わってきますし、演奏会への期待も高まります。
そして迎えた当日。コロナ禍以降、演奏会が中止されたり午後に短めに開催することが増えましたが、この日は夜の開催で、演奏時間もフルでした。お客さんの入りも1階席はほぼ満席。ネコパパは少し早めに出かけて、ジャズ喫茶yuriでビル・エヴァンス・トリオのLPを聴きながら軽く食事を取って、ゆったりした気分で聴きました。
1曲目の「謝肉祭」序曲。愉しい曲ですがちょっとばかり賑々しすぎるところもある曲です。中村暢宏指揮愛教大オケは、冒頭から少し抑えた響きで開始して、だんだんと音の彩りを鮮やかにしていく。個別に見ればややピッチが不安定なところもありますが、全体のバランスが取れて、棒にぴたりとつける安心感があります。経過句のハープの明晰さにハッとしていると、抒情に満ちた中間部へ。ヴァイオリン・ソロに導かれてタンブリンが静かなリズムを打つ。ネコパパの好きな部分。そこから緊張感を高めて、コーダは一気呵成。
スラヴ舞曲は当夜の白眉だったかも。「謝肉祭」よりも勢いの出たアンサンブルが聴けました。弦楽ではとくにチェロ・パートの音圧が高くて、バランスから言うともう少しヴァイオリンが前に出ても、というところはあったかもしれませんが、ネコパパには快感です。第1番から緩急のめりはりが良くついて、それでいて鳴らせすぎず、膨らませ過ぎずに音楽を進めていく。中村さんの機敏な動きに反応して、細かいニュアンスをつけていく楽員たちの生き生きした感じが客席にもよく伝わります。選曲はどちらかというと抒情性に重きを置いていて、例えば躍動感のある第8番を最後に置いて座りをよくする選択肢もあったと思われますが、哀愁の第10番で締めくくられました。この第10番、ドヴォルザーク独特の微笑み混じりの哀愁が、すばらしく表出されて感動的でした。
休憩の後はメインプログラムの第8交響曲です。ドヴォルザークの交響曲でよく演奏されるのは、第7番から第9番「新世界から」の3曲、ということになるでしょう。その中で最もボヘミアの息吹が感じられる第8番、屈指の名品です。
第1楽章は冒頭、チェロの奏でる序奏主題が朗々と熱く、リズミカルな第1主題と対比される。以降、弦と感の織りなす引き締まった演奏が展開されました。第2楽章は、ドヴォルザークには珍しく、沈んだ曲想に、胸騒ぎのような焦燥感の漂う特異な楽章です。第8番の難所であり、ツボでもありますが、愛教大オケ、ここではやや停滞感が感じられ、それが影響したのか、最も魅惑的な舞曲調の第3楽章も、歌がほとばしるというよりも、渋く落ち着きすぎた演奏になっていた気がします。個人的にはヴァイオリンがおとなしすぎて、もう少し湧き立つものがあれば、と感じられました。しかしフィナーレは、ゆったり目のテンポで開始しながら、あとに行くにしたがって音圧を挙げ、煽り立てるようなエンディングに持っていく流れが痛快で、存分に楽しめるものになっていました。
終わり良ければ総て良し!
アンコール曲はブラームスのハンガリー舞曲第21番。
ブラームスが才能を認め、世に出したドヴォルザークが編曲を手掛けた、ごく短い曲ですが、主部と中間部の切り替えが実に鮮やかでハッとさせられました。コンサートを締めくくるにふさわしい1曲だったと思います。
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