「JBBY学びの会『あしたの本だな』をつくる」に、ZOOM参加しました。

cover-V241pC4difVrCPu7jGBj7Wb393617qR7_202302230900290cd.jpeg★「子どもゆめ基金」助成活動
JBBY希望プロジェクト・学びの会
「生きづらさをかかえた子どもに 本との出会いを
  ―ブックリスト『あしたの本だな』をつくる―」
日時 | 2023年2月22日(水)18:30-20:30

パネリスト
 さくまゆみこ(翻訳家/JBBY会長)
 大塚敦子(作家・ジャーナリスト)
 村中李衣(児童文学作家)
 中島尚子(国立国会図書館)
 清水由紀乃(学校図書館司書)
 神保和子(家庭文庫/JBBY理事)
 野坂悦子(翻訳家・大学講師)
 町田りん(大学非常勤講師・学校図書館司書)
 山中かおり(学校図書館司書)
 和田直(翻訳家)
 土居安子(大阪国際児童文学振興財団/JBBY理事)

JBBY(日本国際児童図書評議会)は、東日本大震災をきっかけに「あしたの本」プロジェクトを開始、2017年からは「希望プロジェクト」として、本による子どもの支援活動を行っています。
今回紹介されたブックリスト『あしたの本棚』づくりの活動は、少年院、少年鑑別所における読書普及に関する取り組みです。
オンライン・セミナーでは、ブックリスト作りに参加した編集委員の方々から、選書にあたって心がけたことや、リストアップされた本のいくつかを紹介することで、活動の主旨とそこに込めた願いを伝えるコメントがなされました。

リストは現在、支援者の協力を得て紙の本として関係施設に送られています。
データ版はJBBYのホームページから、無料でダウンロードすることができます。

セミナーは、最初に会長のさくまゆみこさんが希望プロジェクトと「あしたの本だな」完成までの経緯を説明され、続いてパネリストが順にコメントを述べる流れで進行しました。はじめに少年院での子どもたちの声を長年にわたり聴いてこられた、ジャーナリストの大塚敦子さんが、収容されている子どもたちの現状を話します。
一般的なイメージとは異なり、現在少年院に収容されている子どもたちは、被虐待やネグレクトで心に傷を負った、家にも学校にも居場所のない子どもたちで占められていること、取り返しのつかない喪失体験を抱えながら、それでも本によって救われ、変わっていく子どもたちは、少なくないこと。スマホやネットから切り離されたこうした場所は、本と出合い、自己を開拓するには、いまや好適でもあること。
アメリカ、カナダで行われている刑務所での読書会や文章教室も取材され、人間にとって語彙を持つことの重要性を痛感されている大塚さんは「表現力は自分の声、それを育てるのは読書」という言葉で、話を締めくくられました。

続く選書チームの皆さんのお話で、最も印象的だったのは、作家の村中李衣さんです。
生きづらさを抱えた子どもたちに「本の空間」を作るには三つのポイントがあるといいます。

①空間につつまれているという経験の質の高さ。
②とどけてもよい他者の声。
③視線を向けられるのではなく、自分の視線を自由に本の中に向けられること。

①については大人の「お節介な明るさ」ではなく素足で入れる空間であること。それにはそんな気配の漂う表紙やタイトルが大切。そこは「声ではない声がきこえてくるところ」。「おいで」ではなく「きてもいいよ」。
②については、お仕着せでない声、メッセージを見破れないタイトル。例えば「かまきりっこ」「ウミウシ」のような、読者が自分で物語を発見できる本。世界の入り口になる本。
③については…
子どもによっては、本から向かってくる視線に耐えられない、苦痛を感じる子どももいる。そんな子どもたちには、自分だけが入り込めるまなざしに気づくことが大切。写真絵本「みんなのかお」「むしをたべるくさ」覆った手の隙間から子どもたちはみている。食べ物の本もいい。「丼本」「めん本」「肉飯」ごちそうではないけれどおいしそうで、キッチングッズも手も写っていない、素の食べ物だけがおかれている本。語られ方も琴線に触れましたが、独特の選書の仕方もまた、いちいち納得させられました。
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家庭文庫を30年以上運営されている神保和子さんは、楽しさの中にも乗り越える力を秘めた作品を紹介します。
「ぼちぼちいこか」(ストレスに負けない)「つちはんみょう」(小さな虫の大きなドラマ)「ワンダー」(外見をこえる)「向こう岸」(格差を超える生き方)。
翻訳家の野坂悦子さんは仕切りのない自然に出会う本を。「森の奥から」「そして、僕は旅に出た」「非武装地位に春が来ると」
最後の本は、南北朝鮮の国境地帯にする人々の暮らしと自然を描いた作品とのこと。ネコパパ、興味をかきたてられました。
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「化学」という視点で理科系の本をせん書されたのは、中学校支所の清水由紀乃さんです。
「めんそーれ!化学」「虫ぎらいはなおるかな?」「漁師さんの森づくり―森は海の恋人」。「虫ぎらい…」は、虫そのものよりも「こわい」「きらい」という感情とリスクについて書かれた本ということです。好き嫌いを超えた普遍的なテーマを扱っているとは、ちょっと意外です。ぜひ読んでみたい本です。
学校図書館司書の町田りんさんは、声に耳を澄ます本。
「モモ」「ギブ・ミー・ア・チャンス」「のはらうた」じっと耳を傾けることで聴こえてくる声との呼応が生まれるものの大切さを描きます。
翻訳家の和田直さんは、喪失のさきに見つけたものは…
「せかいいちうつくしいぼくの村」「戦場の秘密図書館」「あさになったら、まどをあけますよ」
二冊目の本は、高橋源一郎さんもラジオ番組で取り上げていたもので、ずっと読みたいと思っている本でした。
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中学校司書の山中かおりさんの選ぶのは「困難苦難の中の主人公」重いテーマです。
「ゴースト」「この川の向こうに君がいる」「わたしがいどんだ戦い」「うたうことはちいさないのちのひろいあげ」
これらは誰にでも気楽にお薦めできるタイプの本ではなく、必要としている読者をじっと待つ本、といえそうです。「わたしがいどんだ…」はネコパパが積読にしているもの。読もう。
村上しい子作「うたうことは…」も、とても気になります。

そして、いつもびっくりするほど多くの本を、早口で一挙紹介してくださる大阪国際児童文学館の土居安子さん。
例によって凄い情報量で、メモが追いつきません。
中では、30種類以上の動物のホネが大集合した「ホネホネたんけんたい」、憲法をテーマにした「あなたこそたからもの」、読書指導に熱心なクラスでの識字困難な主人公というキツイ設定の「きみの存在を意識する」などが、ネコパパのヒゲにひっかかりました。
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さて、本セミナーを聴講した後の2日間、ネコパパは近隣の「郊外型大型書店」を3軒ばかり訪問しました。
最近の書店は、児童書コーナーがとても充実しています。コロナ禍以降は、いっそうそうなっている気がしますし、書店で本に読み耽る子どもたちも、以前より多く見かけます。
嬉しいことです。
でも残念なことに「あしたの本だな」に紹介されているような、選りすぐりの作品にはほとんど出会えません。見つけたらありったけ、買って帰ろうと意気込んだネコパパでしたが、とうとう一冊も買わずじまいでした。もちろんネット検索すれば、手に入れることは可能でしょうが、子どもの本に、そんな「大人買い」は馴染まない。やはり手に取って、表紙も見たいし、手触りも確認したい。「壁の中」だけでなく、外だって、本がそれを必要としている子どもの手に渡ることは容易ではない現実があります。
幾重もの壁の一枚でも、「風穴」をあけなきゃならんな…とあらためて思った次第です。






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プロフィール

yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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