バルビローリの愉しい『夜の歌』。

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 Barbirolli Society SJB1084

マーラー:交響曲第7番『夜の歌』
ニールセン:交響曲第5番
バルビローリ&ハレ管弦楽団+BBCノーザン交響楽団

1960年10月20日 マンチェスター、フリー・トレード・ホール モノラル(ライヴ


バルビローリのマーラーは好きだが、セッション録音が行われたのは1.5.6.9番とジャネット・ベイカーの歌唱で収録された歌曲集しかない。
これらは、最近ワーナー・クラシックスから発売されたボックス・セットにすっきりまとめられ、音も聞きやすくなった。
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マーラーを聴くならまずブルーノ・ワルターに手が出るが、録音していないものが多く、特に第3番がないの痛いし、第6番はワルターの苦手な曲で、評伝『音楽に楽園を見た人』によると、生涯一度も演奏していないという。
それを補完する意味でも、バルビローリの6番が残されたのは幸せだ。彼のマーラーの中でも、これが最も演奏がいいと思う。そのほかでは、1番と歌曲集がお気に入りである。
このほか、いくつかライヴ録音が残された。
ネコパパは一部しか聴いていないけれど、聴いた中でのベストはBBC交響楽団を振った第4番(BBC LEGENDS BBCL4014)。やはりこれ、指揮者と音楽との相性がいい。とても良好なステレオ録音で、ヘザー・ハーパーの独唱もすっきりとしている。

バルビローリのマーラー解釈は至極穏当。ワルターに似ているところはあるが、音を切り詰めて、古典形式の枠に収めようとする意識はなく、肩の力をぬいて、歌い方もトロミが強い。近年の精妙かつ壮大なマーラー演奏とは対照的で、マーラーでひと汗かきたい人には向かないかも。

この第7番も、基本、そんな感じ。オーケストラが合同演奏なのは人数不足を補うためだったのか。そのため、弦楽もぴったり揃っているとはいえず、ザラっと響く。フィナーレなど、メンバー増員で迫力満点と言いたいところだが、バルビローリは全然焦らず、煽らず、テンポの変化も大まかだ。
けれど、不思議に音楽が耳に馴染んで、途中でやめられなくなる。
シュレーゲル雨蛙さんがブログで「指揮者が汗みどろで煽りまくっても、オーケストラは至極平静」なハイティンクを取り上げておられて興味深かったが、https://sansuica3000.fc2.net/blog-entry-1172.html
さて、バルビローリはどういう指揮をしたのだろう。
ニコニコしていたのかもしれない。

この演奏で、なんといってもご機嫌なのは、第2楽章、第4楽章、そしてフィナーレで活躍する、カウベルやマンドリンの音が、オンマイクで大きく拾われていることだ。
ぽろんぽろん、たらららら。がらんがらん。
最初は驚くけれど、絶対これ、意図的だろう。マイクの位置が近すぎたとか、そういうことではない気がする。
ネコパパは第7番を演奏会で2度聴いたけれど、想像以上に、これらの楽器は音が大きいのだ。録音で聴くよりも随分と。
ネコパパはマーラーの音楽は基本的に愉しくカラフルなパッチワーク音楽と思っているので、バルビローリの演奏はその本質を突いたものに思われ、聴いていてうれしくなってしまった。いたずら心が満載の、ご機嫌なマーラー演奏だ。




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コメント

コメント(2)
アクセルとブレーキと
 バルビローリは大好きな指揮者の一人です。東京で非常勤暮らしをしていたころ、本郷3丁目近くの学校でアルバイトをすることになり、駅を降りてすぐの地下に「麦」という名曲喫茶があって、授業の後にぼんやりと疲れた体を休めていました。古い喫茶でしたが、レコードプレーヤーはなく、CDでした。大きな部屋は音楽を聴くために天井近くにアルテックの中型のスピーカーがあったかと思います。余談が長くなりました。そこで聴いたバルビローリ/BPOのマーラーの9番が、音がよかったとかいうのではなく、そのときのぼくの心理状態とどこかシンクロしたんだろうと思いますが、忘れられません。思い出というのは不思議です。音楽と場所や境遇などが結びつくです。
 7番の存在を知りませんでした。お教えくださり、ありがとうございます。新しいCDを購入するのがまれになって久しいです。気に入りました。
 YouTubeで聴いて、あ、ライヴのバルビ節だと思いました。変なたとえですが、クラシックカーの運転を楽しんでいるヘイスティングス(探偵のポワロさんの友人)の様子を思います。ギアチェンジが楽しくて仕方ないおちゃめな英国紳士という見立てです。楽しい! そうそうカウベルとかマーラー特有の音ですね、あれを盛大にならすのが好きなのは、若杉さんでした。若杉/都響の7番ライヴCDにがっつりと入っています。

シュレーゲル雨蛙

2023/02/20 URL 編集返信

yositaka
Re:アクセルとブレーキと
シュレーゲル雨蛙さん

バルビローリとBPOのマーラー9番は素晴らしい演奏ですね。特にフィナーレが。BPOとは他にも何曲かマーラーを共演していて、マーラー演奏の少なかった同オケとしては異例の抜擢でした。残念ながらレーベルの枠と、バルビローリの今思えば早すぎる死によって録音が続けられなかったのが悔やまれます。私のバルビローリ体験は確かシベリウスでした。PYE盤で聴いたような。彼の音楽には温もりと適度な甘みがあり、疲れにはよく効きますよね。
この第7、何回と言われる曲のイメージが変わりますよね。好きになれます。
ヘイスティングス氏!久々に聴く名前です。ワトスン博士のようにいつも出ているキャラクターじゃないですがどことなく軽妙で憎めない人です。確かにぴったりだなあ。バルビローリは父はイタリア人、母はフランス人で、英国人の血は入っていない人ですけれどね。

yositaka

2023/02/20 URL 編集返信

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プロフィール

yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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