ゲーベル、二つのブランデンブルク協奏曲。

バッハのブランデンブルク協奏曲は名曲。全6曲それぞれに特徴があり、独奏楽器も曲想もくるりと変わって、一気に続けて聴いても少しも単調にならず、飽きがこない。作曲されたのはケーテン時代、バッハが器楽曲の作曲に傾倒しているころで雇い主のケーテン公は大の器楽好き、合奏好きだった。
その時期1721年3月、おそらくは御前演奏のためにブランデンブルク=シュヴェート辺境伯クリスティアン・ルートヴィヒに献呈されたのがこの曲集だ。かなりの中から厳選したと思われるが、バッハの選曲のセンスには、驚くほかなし。
ネコパパはどの曲も好きだが、どれか1曲と言われたら二つのリコーダーとソロヴァイオリンが活躍する第4番だろう。次には長大なチェンバロ・ソロが素晴らしい第5番。でもでも、やっぱり甲乙つけがたい。

録音も無数にあるが、その中でも飛びぬけて個性的なのがラインハルト・ゲーベルの指揮した録音。
ムジカ・アンティカ・ケルンを指揮した、1987年録音のアルヒーフ盤が以前から有名だったが、
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2017年に録音された再録音も登場した。こちらはソニークラシカル盤、ベルリン・バロック・ゾリステンの演奏。

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古楽奏法というにしては、装飾的・即興的な音の追加を避け、速いテンポでストレートに突き進む。その演奏解釈自体は変わっていない。けれど、切り詰めた暗めの音で、ひたすら求道的に深く鋭く追い詰めていく旧録音にたいして、新しいベルリン盤は、音が開放的にブレンドされ、厳しい解釈に体温とほのかな明るさを湛えている。
ゲーベルも年を重ねて丸くなったということだろうか。
厳しくシャープな旧盤は高く評価する人も多い半面、ややポピュラリティから遠く、聴き疲れするということで好まぬ人もいたようだ。わかる。ネコパパも聴くたびにこれは凄いと思うのだが、繰り返し愛聴したかと言われれば、ちょっと。これよりモダン楽器のバウムガルトナーとか、ゲルハルト・ボッセの方を聴きたくなるし、ピリオド系ならレオンハルトやクイケンたちの方が音の愉悦があって親しみやすく思う。でも新しいゲーベル盤だったらどうかな。この演奏なら、聴く回数も増えそうだ。旧録音ほど、聴き手を追い詰めることのない、でもゲーベルらしい新鮮さはしっかり保たれた演奏だからだ。例えば第6番。第1楽章の疾走感は旧盤と変わらないが、ときおりテンポが落ちてしっとりとした瞬間が現れる。第2、第3楽章になると、そういうところが一層目立ってきて、これが実に聴かせるのだ。
第4番の冒頭。旧盤。短く鋭いフレーズでキリキリッと進む合奏部に突き出すようなリコーダーと、柔軟なフレージングのヴァイオリン・ソロが対比される。新盤。鋭い合奏は背後に回って、明るく伸びる音でリコーダーが躍り出る。ヴァイオリン・ソロは逆に少し角ばったフレージングなのが面白い。同じように緻密な表現だが、キリキリ度がカラカラ度に、わずかにとって代わられている。わずかなさじ加減で受ける印象は異なってくるのだ。そして、どちらもすばらしい。

YouTubeには旧録音しか見当たらないようです。



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コメント

コメント(2)
こんにちは
私もゲーベルの新旧盤を聴いて、過去にこんな事を書いていました、
http://micha072.blog.fc2.com/blog-entry-2850.html
たしかに旧盤は「ポピュラリティから遠い」と、初めて聴いた時は
驚きでした、しかしゲーベルならではという意味で、今も他では
聴けない希少的地位を保っているようにも思いますね。

michael

2023/02/05 URL 編集返信

ベルリン・フィルハーモニー室内管弦楽団
michaelさん
いやあ、同じようなテーマで書かれていたんですね。書いていて、何となく既視感がある気がしていたんです。年かも。
旧盤新盤の比較というと、ついつい優劣の問題になりそうですが、そこは避けました。新盤にはピリオド演奏のひとつの極北まで行ったゲーベルが、モダン楽器に立ち返ったという意義があるからです。

近年、バロックとオーケストラコンサートの断絶が目立ち、普通のコンサートでバロック音楽が演奏されない事態になっている気がします。
1970年代は、通常のオーケストラコンサートでバッハ、ヘンデル、ヴィヴァルディなどが普通に演奏されていました。特に暮れの「第9」の演奏会でもよく聴きました。
当時「バロック・ブーム」とかで人口に膾炙し盛大に聴かれたバロック音楽も、今ではライヴで聴くことは稀です。ピリオドスタイルでなければ、という軛によって、多くの人の聴く機会が減っているとしたら、ちょっと残念なんです。

そんなわけでゲーベルには、これからもどんどんモダン楽器を、と期待してしまうんですね。団体名もベルリン・バロック・ゾリステンではなく、ベルリン・フィルハーモニー室内管弦楽団でいいじゃないか、と思います。そのほうがきっとCDも売れると思います。

yositaka

2023/02/05 URL 編集返信

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yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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