獣の奏者考⑤アニメ作品、最終回に


テレビアニメ『獣の奏者エリン』が最終回を迎えた。第50回。
近年まれな、息の長いアニメ作品。それもファンタジー児童文学の新作がほぼ原作通りに映像化され、水準を落とさずに完結したことは大きな意味のある出来事だった。
これによって、原作自体の構想も拡大し、全四巻の作品となったことも重要だ。
アニメ開始当時は刊行されていなかった後半二巻の内容が、この最終回には、生かされている。
「現在進行中」の物語として、小説作品ととアニメ作品が相互に呼応しあう。
児童文学史上、画期的な事件といっていいのでは。

さて、最終回も原作通りの丁寧な運び。
大げさな盛り上げなどは一切していないのがよい。

だが、疑問点もある。
それは、大公の息子シュナンとヌガンの確執とヌガンの死が描かれなかったこと。
ヌガンが父大公に反逆し、奇襲によって殺害したことは明らかなので、ここは決着をつけなければならないところだ。
原作と違い、アニメでは番組の初めから両者の確執が描かれていただけに、これではその伏線が生きてこない。

一方、前真王を暗殺し、姪のセイミヤを新たな王位につけたのち彼女と結婚して実権を握ろうとした策略家、ダミヤはイアルによって斃される。ここは原作第二巻では書かれておらず、アニメ開始後の出版になった第三巻で軽く触れられていることだ。
ダミヤは、声優石田彰の見事な演技もあって、とくに終盤は「凄い悪役」として他を圧する存在感だった。
彼の死が描かれてこそ、完結である。

そして最後のシーンは、世代交代の姿が示唆され、スタッフたちの続編製作への意志がうかがわれる。

この描き方、続編なしではおさまらないだろう。
私としては、ダミアの死はきっちりと描き、あとは原作通り、衝撃的、象徴的な結末(作者上橋菜穂子が「完全に終わっている」と述べた)で一気に締めくくるのが一番と思っていたのだが…
まさか後半二巻の内容に手を伸ばしてくるとは、思わなかった。
エリンと息子ジェシの姿が、母ソヨンとエリンの姿に重なるシーンも、
原作第四巻の終結部を思うと、非情に暗示的なカットだと思う。

登場人物の後日談に軽く触れるのもお定まりだが、イアルのその後については伏せたままてある。これも、アニメの続編がなければ生きてこない締めくくり方だろう。

NHKは、作品にとことんつきあうつもりなのか。

まだ未見の方々、今後NHKは総集編や大規模な再放送をつぎつぎに打ち出してくるとのことなので、ぜひご覧いただきたいと思う。

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子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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