亡き友と聴いた曲②ボレロ


中学生のとき、この曲は音楽の鑑賞曲に入っていた。
どんな曲だろうと思い、授業時間の前に聴いてやろうと、17センチ盤を手に入れた。
シャルル・ミュンシュ指揮ボストン交響楽団の演奏だった。RCA録音。定価700円。
小さいながら、しっかりした見開きジャケットに入っていたはずだ。しかし…
たるかった。
同じメロディが、同じリズムに乗って延々と続く。二面に渡って収録されていたのだが、レコードを裏返して針を落とすと、
またもや同じリズム、同じメロディーが続いていく。これには愕然としたことを今も覚えている。
確かに楽器が徐々に増え、最後には大きく盛り上がる。それはいいのだが、人を食った、内容のない曲に感じられた。

亡き友は、ドビュッシー、ラヴェル、フォーレの音楽を大切に聴いていて、
「ボレロも名曲だよ」
と、話したものだ。
「まさか。これを聴くなら、『ダフニスとクロエ』のほうがよっぽどいいよ」
「そんなことはない。これを聴いてごらん」
そう言って、大きなステレオにレコードをかけた。

すばらしい「音色」だった。

一つ一つの楽器が、温かく、おしゃれな彩りの音色を撒き散らして、ゆったりと進んでいく。
耳をそばだてて聴き入るしかなかった。
この演奏は、そのエレガントで優雅なパリの音色がすべて。単調な進行だからこそ、楽員たちは持てる力をすべて出して、えもいわれぬ香りの音楽を奏でていくのである。
盛り上がりの迫力や興奮には、あまり関心がないようだ。だから、そのような音楽を期待する人には、拍子抜けかもしれない。
でも、いろいろな演奏を聴いたのちにこの盤に戻ると、
やはりこれしかない、これこそがボレロの故郷だ、という気持ちにさせられる。

これを教えてくれた彼がいなかったら、今でも嫌いな曲のままだったのかな。
そして、この指揮者の魅力に気づくのも、だいぶ遅れたのかな…と思ったりする。


アンドレ・クリュイタンス指揮
パリ音楽院管弦楽団
録音は1961年11月 パリ、サル・ワグラムにて。EMIクラシックス


指揮者クリュイタンスは1967年没。同年、この美しい音色のオーケストラも発展的解消と称して消滅する…
レコードに刻まれた音だけが、この最高のボレロを再現してくれるのだ。

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yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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