亡き友と聴いた曲①ブーレーズの「海」


この曲の面白さを教えてくれた懐かしいレコード。
亡き友人宅の、一体型「ステレオ」できかせてもらったのがこれだった。
当時私の持っていたのはアンセルメ盤一枚。
まだまだ、愛聴曲にはなっていなかった。

アンセルメ盤を聴いて友人は「ずいぶん下手糞だなあ。一曲目の終わりにのトランペットなんて、これは変だよ」
と言っていたように思う。
のちに彼もアンセルメ盤を購入するのだが、それを聴いて私は仰天することになる。
いや、これは別の話…

ピエール・ブーレーズ指揮ニューフィルハーモニア管弦楽団。
録音は1966年。
レーベルは、当時CBSソニー、現在のソニークラシカル
葛飾北斎のジャケットデザインが今も新鮮だ。

これはテンポが遅く、底知れぬ暗さを持った「海」である。
第一楽章はその暗さが際立ち、
第二、第三楽章では個々の楽器の鮮明な立ち上がりが際立つ。
アンセルメ盤が速いテンポで、一つ一つのフレーズに熱い共感と勢いを込めて演奏しているのに対して、
ブーレーズの演奏は音の一つ一つは鮮明だが、そこに演奏者の感情移入はあまり感じられない。体温が低い。
しかし、決して低温のままで終わるわけではない。

最大のクライマックスは第三楽章、コーダ直前の、弦が音を一気に伸ばす緊迫の場面だ。
初めて聴いた時は、そこに金管のファンファーレが入らないことに驚いた。アンセルメ盤やミュンシュ盤とは違っていたのだ。
しかし、譜面の違いによる違和感だけではない。
今聴き直してみると、ブーレーズはこの部分に、彼には珍しいほどの気合を入れていることがわかる。ここから終結まで充実こそが、この盤の名声を高めたのではないかと感じられるのだ。
さらに演奏を特徴づけているのが、ハープ。全曲を通じて鮮明に響き渡り、「海」に満ちる水の輝きをちりばめる。
ライヴで聴く「海」からは、到底聴こえてこない音量
ブーレーズの「海」は、まさに「レコード芸術」だったのだな…。

友と聴き、耳を奪われたこの演奏、当時としては斬新だったのだろう。しかし今では遠い過去の思い出のように、光を発しない、色あせたものに感じるのはなぜだろうか。

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yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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