めっきらもっきらどおんどん

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福音館 1985.8.5(「こどものとも」353号)1990.3.1(「こどものとも傑作集」)

扉は、入道雲を臨む遠景と、そちらに向かって枝を振り振り歩いていく、かんたの後姿です。
夏休みのある日「あそぶともだち」が見つからないかんたは、ひとりでどんどん道をあるいて、その先にある鎮守の森に入っていきました。
神社にもだれもいない。かんたは、しゃくだから、しめ縄の飾られた大きな木のそばで、「めちゃくちゃのうた」を大声で歌います。歌の最後は

めっきらもっきら どおんどん

すると、風がとどーっと吹いて、奇妙な声が聞こえてきます。大きな木の穴から聞こえてくるようです。のぞき込んだら、ひゅうッと穴に吸い込まれてー着いたところは夜の山。
むこうから、へんてこりんな三人組が飛んでくる。
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かんたが歌をうたうのが第一場面。つづく第二場面では、空気がぐるぐる、紫とピンクの入り混じった渦を巻いて「あちらの世界」への移動の予兆を表現し、第3場面で吸い込まれるかんたの姿を4連写。ぐるぐる回りながら落下していく、めまいのような気分を表現しています。降矢ななの描くかんたの4つの表情の描き分けが見事です。
第4場面では、丸太に乗って飛んできた三人の「妖怪」がとても小さく描かれ「何だろう」と思っていると、次の第5場面では、いきなりのクローズーズアップが来ます。
「よっほーい、あそぼうぜ」
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はじめは「ばけものなんかとあそぶかい!」とつっぱねた、かんたですが、
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みんなで泣かれたら、しょうがない…
「あそぼう ぼう」って、語尾を反復する「おたからまんちん」の言い回しがいい。つい口を突いて出てしまいます。こういう言い方って、伝統的な遊びことばの語法なんでしょうか。子どものとっさの「造語能力」に驚かされることって、よくありますよね。
「あそんでやるから、だまれっ」とかんたがいうと、今度は「あたいがいちばんにあそぶーっ」って、けんかが始まります。さもありなん。作者たちは、ほんとに子どものやりそうなことがわかっているんです。
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やっとじゃんけんで順番が決まります。1番は「しっかかもっかか」
二番は「おたからまんちん」
三番は「もんもんびゃっこ」
遊びの場面では、しなやかでデフォルメの効いた描線がますます大胆になり、躍動します。そしてつかの間、夢見るような幻想的な瞬間も。それは、第9場面の、ただ一度だけのかんたのクローズアップで、手の上に浮かぶのは海の見える水晶玉。かんたの瞳も水晶のようです。
どうしてこんな素敵な絵が描けるんでしょうか。
4人はリズミカルな掛け声とともに、遊びに遊び、そして全員で丸太に乗って、空を飛びまわります。みんなでうたう「めっきらもっきら どおんどん」の歌がもう一度登場します。
それにしても、この「すてきな三人組」は何者でしょう。日本古来の妖怪か、神様のようにも思えますが、作者のオリジナルのようでもあります。わからないのが、おもしろい。
それから、かんたが何をして、どうやって「こちら」に帰ってきたのか…それは、読んでのお楽しみにしておきましょう。
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この絵本では、遊びに熱中する子どもの気持ちを表現した、一瞬も動きを止めない絵に、思わず節をつけて歌いたくなるようなテキストが加わり、見事に調和しています。
歌のリズムが、伝統的な五七調、七五調とは違う、いわば「変拍子」の音数律を持った「めちゃくちゃうた」なのも新鮮です。
一度読み聞かせをしたら、子どもたちはすぐ夢中になり、二度目からはいっしょに歌いますよ、受け合います。大人も子どもも、めちゃくちゃに歌って、大いに楽しんでみてください。

最後に、補足しておきたいことがあります。ずうっと、気になっていたことです。
この絵本は、1985年に月間予約絵本「こどものとも」の一冊として刊行されました。現在ではハードカバーの「子どものとも傑作集」に入っています。こちらは、1985年初版です。ネコパパの蔵書は1998年発行のもので、古いのですが、この時点でもう24刷。多くの子どもたちに愛されている絵本なのがわかりますね。
ネコパパ庵には初版の「こどものとも」版もあります。こちらはソフトカバーで、今は人の親となった二人の子どもに散々読まれて、もうボロボロなんですが、捨てられないわけがあります。「異同」があるんです。
一つは、「こどものとも」版では、見返しに青空と雲が描かれていること。この雲は、この絵本で何度も登場する「つむじ風」と同じように、ぐるぐると渦を巻いています。
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これが始めと終わりの両方にあるのは「つむじ風」が「こちらの世界」と「あちらの世界」を結ぶ導き手になってことを暗示しています。表と裏で図柄が反転しているのもわかりますね。子どもはこういうことは決して見落としません。
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ところが「こどものとも傑作集」版では、はじめの見開きはただの白紙です。終わりのほうは作者紹介と、奥付け。「青空と雲」がないのです。
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もっと大きな違いは、「傑作集」版の本文の最後のページに加筆があること。
「子どものとも」版は

かんたは あのうたを わすれてしまって どうしても おもいだせない。

で終わっていますが、「傑作集」版ではそのあとに一行、

ーきみなら、おもいだせるかな?

が、加筆されています。
テキストの行数はどちらも4行で「傑作集」版は「こどものとも」版の二行目を一行目の後ろに詰めています。
二つの版を比較すると、個人的には「こどものとも」版が良いのではないかと思います。「青空と雲」は、そのまま生かしてほしかったし、結尾の加筆はないほうがよかった、と考えます。
特に後者は、三人称で書かれたテキストからすると、ここだけ唐突に二人称にするのはおかしいし気がしますし、こういう言葉掛けがあるとすれば、それは読み手の意思で「自ずと発することば」であってほしいと思うのですが…みなさんは、いかが思われますか?
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プロフィール

yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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