かいぶつになっちゃった

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ポプラ社 1974年12月 新版2013年4月

表紙は、四角に集まった動物たち。ヘビにペリカンにトナカイ、馬に犬にウサギに毛虫、トンボ、鳥…脈絡のない集団です。輪郭はくっきりと描かれ、表情豊かなのに、どこか現実離れしているような「どこにもいそうで、どこにもいない」動物たちです。そんな彼らが、不信の目で左側に視線をやっている…
表紙をめくるとタイトル。その下に、歯をむき出したぶきみな「かいぶつ」。第1画面は森の中の屋敷です。ああ、これこれ。まるで猫の手が空に向かった何本も生えているような、奇妙な木々の生い茂る森。独特の「木村ワールド」の始まりです。
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あるひ、ことりが やしきに まよいこんだ。
「うわあ でたー。かいぶつが くいついたよーっ。」

小鳥の知らせを聞いたみんなは、ブルブルッとして、小鳥の話から想像を広げ、「こわいかいぶつ」の姿を思い描きます。

「やまみたいに おおきくて なんでもかんでも たべちゃうそうだ。」

「たべちゃうそうだ」の言葉に鋭く反応するみんな。木村ワールドはほのぼのとしていそうで、実は違う。疑心暗鬼と弱肉強食が支配する背糧なのです。食べられるなら、その前に反撃する。そこでみんなは意思統一します。

「みんなでかたぐるまして、おおきくなろう」
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そこでみんなはあつまって、かさなって、かたまって、とうとう、かいぶつを圧倒できそうなおおきな動物のすがたになります。屋敷のほうへ歩いていくと、森の仲間が怖がって逃げ出します。それを見て、
「よしよし、これなら だいじょうぶ」
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ところが、と言おうか、やっぱり、と言おうか、ことりが屋敷で見たかいぶつは、たたの、たけのこだったのです。
安心したみんなは、からだを離して元にもどろうとするのですが…
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ここからが、この絵本の恐ろしいところです。
みんなは固まって、離れない。仲間は怖がって近寄らない。森中から仲間はずれになり、そしてとうとう、ほんものの怪物になってしまうのです。
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絵本は数あれど、こんなおそろしい作品はめったにありません。

■アンチ「スイミー」の絵本

大人であるネコパパは、ここから人間不信やら、誇大妄想やら、過剰防衛やら、一致団結の暗黒面やら、いろいろなことを考えてしまいます。「団結と協力の価値」をうたった「スイミー」とは違って、教科書に掲載されるようなことはまずなさそうです。アンチ「スイミー」の絵本、とみてもいいかもしれません。
でも、だからといって「読み聞かせ」に不向きなんてことは全然ありません。
子どもたちは、なんと器が広いこと。読み聞かせをすると、みんな大喜びです。切り詰めたテキストと、絵で語る展開にスキはなく、一見コワモテのようでいて、子どもの心にはぴたりとフィットするようです。

発売当初は地味な一冊で、入手困難な時期もあったのですが、のちに、同じ森の仲間たちが活躍する人気シリーズ「ぱっくんおおかみのえほん」の一冊に生まれ変わって、長く読み継がれる一冊になりました。
うちに長いことあった初版本は、もう本の形を成さないくらいボロボロに擦り切れてしまい、知らないうちになくなっていました。いま手元にあるのは新版のほうです。内容は変わりませんが、初版と違って紙がツルツルになり、鮮明で発色もいいかわりに「不気味さ」はちょっと薄れてしまったかも。
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yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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