エンソくんきしゃにのる

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福音館 1986.7.1(子どものとも364号⇒こどものとも傑作集)

ネコパパ庵の蔵書は「こどものとも」初版なのですが、状態はボロボロです。
全体を半分に折り曲げたようなしわが入り、ホチキス止めの真ん中から3枚6ページ分がすっかり外れて、一枚一枚をセロテープで補修してあります。そのテープも茶色く、剥がれ落ちて、バラバラ。読み直すにあたって、メンディングテープで再補修しました。みなさん、セロテープで本を修理するのはやめましょう。
息子の銀鼠君が大好きで、こういう状態になるまで繰り返して読みました。これに限らず、彼はスズキコージの絵が大好きでした。今もきっと。

表紙を広げると、裏表紙までつながって、エンソくんののる汽車の全体が見られます。3両編成の蒸気機関車で、乗っているのは二人の機関士、エンソくん、羊飼いと犬、そして、客車いっぱいの羊たちです。
扉は、南ヨーロッパ風のね異国情緒あふれる街の中心部、時計のついているのが駅、その前に池を中心にしたロータリー。バス、トラック、たくさんの人々。
ここは、ほげたまちのほげたえきです。

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トランクを持って歩いているエンソくん。田舎のおじいさんのところへ、一人で遊びに行くのです。切符売り場で緊張して「えーと、ほげたまで こども いちまい」と言ってしまい「ほげたは ここですよ」と言い返されます。不思議な会話ですが、読者にとっては、まず「ほげた」という奇妙な名前の町に「いく」ことが先決。だから、これでいいのです。それから人でごった返すホームへ。自分の乗る汽車はどれかな。
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「ほげた」発「ほいざ」行きの汽車に無事に乗り込んだエンソくん。切符を買うところからじっとエンソくんを見守っていた緑の服のおばさんが、向かい側のボックス席に座ります。絵をおっていくと、おばさんがエンソくんをそれとなく気にかけていることがわかります。

いよいよ汽車は出発。街を走る汽車の全景。わくわくしますね。橋をわたり、トンネルをくぐると、景色は一転して緑あふれる高原です。
おばさんはここで
「ぼうや、きをつけてね」
と一声かけて、汽車を降ります。どうやら、他の人間たちも、みんな降りてしまうようです。
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ここまでが、絵本の前半です。そのあと、入れ替わるように、「どっとのりこんで」きたのは、高原の駅のホームで待っていた、羊飼いのおじさんと、たくさんの羊たちです。
エンソくんはおなかがすいたので、駅弁売りから駅弁を買いました。開いてみると…
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羊の形のコロッケがごろんとはいっていました。それまでちょっと緊張して堅くなっていたエンソくんの表情が、はじめてほころびて、笑顔のアップになります。
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みんな いっせいに たべはじめ、
いっせいに ねむりました。
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汽車はどんどん走って、もりのおくの「ほいざ駅」に到着します。角の生えた馬に乗ったおじいさんが、むかえにきています。

スズキコージの絵は「ここではない」世界を描き出していますが、何か不思議な事件や、やっかいごとが起こるわけでもなく、ただ、淡々と進んでいくだけ。この太い、たくましいタッチでがっしりと書かれた登場人物の存在感と、濃密で「濃い」質感そのものが、この絵本を成り立たせています。
物語としてのドラマがあるとしたら、前半の「人々のいる世界」から、おばさんという「保護者」の手をはなれて、羊だらけのなにやら「不思議な世界」にはいっていく「移動」と「場面転換」ということになるでしょう。そこには、もしかしたら、エンソくんの「遠足を通しての独り立ち」という、小さなテーマが忍び込んでいるのかもしれません。
でもまあ、子どもたちはきっとふわふわした羊に囲まれて、お弁当をいっぱい食べて、極楽極楽…が一番の楽しみなのでしょうけれど。

ネコパパは息子に何度も「読んで」とせがまれて、いつのまにか、彼は自分で引っ張り出すようになり、何度も読むうちに、今では彼の一部になってしまった…そんな思い入れのある一冊です。
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プロフィール

yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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