はいチーズ

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絵本館2013.5

なにやらポーズをつけて、棒みたいなものを持って立っている子ども。よしふみ君5歳。ふろしきをマントのようになびかせ、緑がかった灰色の空をバックにしています。
足元にいるのは、ネコらしい。ぼってりと太い線で描かれたタッチ、昭和30年代の雰囲気。あのころの空は、いつもなんかこういう灰色だったような気がしてきます。
一枚めくって扉をみると、焦げ茶色の一筆書きみたいな荒い線で描かれた、商店街があらわれます。のぼりを立てた自転車、に「本・文具」あとは読み取れない店がずらり。みんな木造。
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昭和30年生まれのネコパパ、これだけでもう、タイムスリップしてしまいそうです。
次をめくるとタイトル。描かれているのはネコ。ほっぺたが左によって、あんばらんす。たぬきみたいな下半身は、長さんのネコを思い出させます。さあ、それでやっと第1画面。
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出たっ、路上で遊びまわっている子ども。電信ばしらに三輪車。なわとび。なにやら悩んでいるよしとみ君。
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ああ、ぼくはあかんにんげんやろか。
五歳のせりふか?でも関西弁だとなぜか普通に聞こえるんですね。今度はリヤカーが出てきた。そしてここは、あのころはどこにでもあった、広い広い「空き地」です。

二人の子分に傅かれて、何やら高いところでいばっているのはがき大将の「ふじいのよっちゃん」。彼の手には、いつもたべてる「にくやのチーズ」。
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よしふみ君は、よっゃんがうらやましくてしかたない。
何とか件のチーズをかってもらおうと、おかあちゃんに必死で頼み込みます。「あんなんおいしないで」とすげない返事ですが、今日ばかりは、と泣いて頼み込むよしふみ君に、とうとう折れてチーズを買ってくれました。
そのチーズを今まさに食べようとするよしふみ君の表情のいいこと!
そして、食べた後のギャップがまた、すごい!

思い出してみれば、1960年代まではチーズというのは、ネコパパには馴染みのない食品だった気がします。検索してみると、それもそのはず。日本においては、1970年代末から、生産過剰となっていた牛乳の需要拡大策として、農林水産省が国産チーズ振興政策に取り組み始めたのだそうです。それまでは、珍しい舶来ものだったのかも。そうするとこの絵本に出てくる「にくやのチーズ」って何だったんだろう。
読み手にもわからないものがでてくる、過去の情景。
しかもうまいのかどうかわからない、謎のチーズも登場。こんなの、子どもに読み聞かせていいんだろうか…と一瞬、迷う大人たちもいるかもしれません。でも、心配ないですよ。たぶん。どのみち、聴き手の子どもたちにはこの世界、知らないことだらけなんですから。過去も、現在も、未来も。見ること、知ること、みんな面白い。

この、長谷川義文の独特の絵のタッチも、大いに気に入る子どもがいるはずです。全員とは言わないけれど…
「ピンとくる」絵というのは、一人一人違っていて当然でしょう?
ネコパパは大好きです。


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プロフィール

yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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