ワルターのトリプル・コンチェルト。

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ベートーヴェン 三重協奏曲ハ長調 作品56
ジョン・コリリアーノ(ヴァイオリン)
レナード・ローズ(チェロ)
ワルター・ヘンドル(ピアノ)
ブルーノ・ワルター(指揮)ニューヨーク・フィルハーモニック
【録音】1949.3.21 30番街スタジオ(モノラル)

第1楽章冒頭のオーケストラ序奏部から、重い響きと熱量の高さが感じられ、ワルターの曲への入れ込みのただならなさが実感される。大きく盛り上がって独奏部に入ると、ローズのチェロがいい感じだ。音自体が深々と美しく、くっきりとした輪郭線を描いて進む。次のコリリアーノのヴァイオリンはコロラトゥーラのアリアのよう。細い響きできりりと歌う。殿のピアノはヘンドル。なぜか音が遠くてはっきりしない。順にソロを回して展開部に入るとしばらく三者の絡みが続くが、演奏ぶりは最初に感じたのと変わらない。コリリアーノは弱音になると途端にか細くなってオーケストラに負け気味、ヘンドルは茫洋としていて、ローズのチェロにばかり耳がいく。一人になった時の堂に入ったテンポの落とし方など、自信をもって弾き進んでいて溜飲が下がる思い。ソリストとして活躍した人はやっぱり違うな。ワルターはオーケストラの出番になるとここぞとばかりに勢いが上がる。
短い間奏曲のような第2楽章も、ほとんどローズのソロがメインで、切れ目なく突入住めフィナーレのパッセージも彼のペースだ。
この曲、ベートーヴェンとしては今一つの出来と呼ばれることが多いが、少なくともフィナーレは聴きごたえがある力作だと思う。
ソロの交代だけでなく、ソリスト同士の掛け合いも華麗で、ボヘミア舞曲風の強靭なリズムも快感だ。チェロのローズはもちろん快調を維持、ようやくソロのトップに躍り出る見せ場もあるコリリアーノも、溌溂たる弾きっぷり、ピアノのヘンドルもここにきて音の立ち上がりが俄然よくなる。「三重協奏曲」としてのまとまりがぐんと出てくるフィナーレに、指揮者の棒も満足げだ。

このレコードはワルターのディスク録音の最後の時期にあたるものだが、曲が地味なためか売れ行きはいま一つだったようだ。最初はSP盤と10吋LPで録音後すぐに発売されるが、12吋盤として再発されるのは10年後の1959年である。
今回ワルターの77CDBOXにオリジナルジャケットとして復刻されているのは、この59年盤のジャケットで、当時は53年録音の「レオノーレ序曲第3番」がフィルアップされ、今回のCDではさらに同年の「エグモント」序曲が収録されている。
ステレオ再録音がなされなかった2曲の序曲の演奏は、ワルターのオペラ劇場での演奏を彷彿とさせる、テンポの激しい動きを伴った、知る人ぞ知る熱演である。

一方、初出のSPと10吋盤は、77CDBOXにも別冊解説書にもジャケットデザインが紹介されていないが、幸いチャランさん所有の10吋盤を聴かせてもらうことができた。
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しょぼくれたベートーヴェンの肖像画が、なかなかの味わいで、個人的には名デザインだと思うが、文字ばっかりで地味すぎるとも思える。これだとやっぱり売れないかな?
同じジャケットで国内盤も出ている。名曲喫茶ニーペルングで聴き比べの機会があったが、どちらも原盤は同じもののようで、音質は鮮明だ。
ぜひこれはCDと聴き比べたいと思い、国内盤のほうをチャランさんから借用して、ネコパパ庵の「家電オーディオ」で比較してみた。
CDとLPでは、もともと比較の対象にならないが、参考までに印象を書き記す。全体の余裕のある響きはCDに軍配があがり、ソリストの演奏部分はLPがより生々しく繊細で、個々の楽器の違いを聞き分けることができた。
ローズのチェロは、音の強弱の変化がCDよりずっと幅広く感じるし、コリリアーノのヴァイオリンも音が近く、より艶やかに聞こえる。この二人の演奏の情報量は、LPのほうがずっと多い。ただし、ヘンドルのピアノはそんなに印象が変わらない。
彼は当時のニューヨーク・フィルの副指揮者で、このセッションには急遽声がかかったとのこと。それじゃあ確かに条件は悪い。でも、逆に言えば売り出しのチャンスともいえた。その後指揮者として一本立ちし、RCAにも録音を残したが、あまりぱっとせず、今聴けるのは伴奏ばかりだ。逃した魚は大きかったか?



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コメント

コメント(2)
「返却催促無し」
初出のLP10吋盤は、再生帯域が狭い当時の装置(電蓄)に補正したコロンビア・カーブ(#7はold Col LPにセット)にしないと低・高域がより良い再生音になりません。(You Tubeに投稿してある音は?)
当時のLP・SP録音は、ソロに焦点が合ったMONO録音ですのでオケに焦点を合わせてデジタル編集したCDとは、聴こえ方が異なるようです。ワルター・ファンには、当時のLPは物足りないと思います。
お貸しした国内盤は、スタンバーを輸入し川崎で初期にプレスしたものと思われます。
「返却催促無し」ですのでたまに掃除して可愛がってやってください。

PS:どうでも良い事ですが録音は、私の誕生日の数日前で感無量です。

チャラン

2021/10/19 URL 編集返信

yositaka
Re:「返却催促無し」
チャランさん
投稿音源はおそらく前回のエディションのCDでしょう。
1949年なので著作権の問題はなし。音質も、DACを使ってオーディオで聴くと大変良好です。カーブの問題もないと思われます。YouTubeにもいろいろあるけれど、これはうまく再生していますね。ディスク録音ですが、テープ録音との違いはほとんど感じません。
お借りしたほうは初期LPで、モノラルなので、標準的なRIAAカーブではないのでしょうが、うちでは特にトーンコンをいじらなくても聴きやすい音でした。しばらくお借りします。

yositaka

2021/10/19 URL 編集返信

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プロフィール

yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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