プランタン管弦楽団、ベートーヴェン第4交響曲を熱演

地元名古屋のアマチュア・オーケストラ、プランタン管弦楽団はネコパパの贔屓。
音楽に一本筋が通り、いつもハッとするような新鮮な音楽体験をさせてくれるからだ。しかもチケットはワンコイン。
頃中で中止延期が続き、演奏会情報も危ぶまれていたけれど、アンケート協力者にはちゃんとはがきで知らせてくれる。前回は予定が合わず涙をのんだが、今回は喜び勇んで出かけた。
オータム2021チラシ
会場の芸術創造センター、コンサートではあまり出掛けた記憶がないが、当団旗揚げの記念すべき会場とのこと。デッドな音響の多目的ホールだが、分解能(ソノリティ?)は抜群で、キレのいい演奏にはぴったりだ。

プログラムは変則的で、最初に二曲の短い管楽合奏曲を少人数で演奏したのちオーケストラが入り、中村暢宏のヴィオラ弾き振りで、ブルッフのロマンティックな小品を演奏。彼のヴィオラ・ソロはモーツァルトの協奏交響曲以来で、朗々としてオーケストラとの溶け合いもいい。
後半は、1曲目の「魔弾の射手」から、リズムの鋭い、推進力のある演奏が繰り広げられる。金管楽器も安定して剛毅な音で曲想をもりあげる。
メインのベートーヴェンでも、一貫した躍動感で押し切る。第2楽章も、抒情的と言いうよりも沸き立つような勢いが優先し、後半2楽章でますます意気盛んとなる。奏者ではとりわけクラリネットとティンパニが秀逸。第1楽章のあとの拍手も観客の気分がよく表れていたと思う。
ちなみにネコパパのすぐ前の席に、小学校の2,3年生くらいの女の子の姉妹が座っていて、一緒に指揮をしたり、第2楽章では居眠りしたりと、率直そのものの聴きっぷりだったのが面白かった。
曲が終わると、中村さんの恒例のスピーチがあり、アンコール曲としてレスピーギの「シチリアーノ」が演奏された。
聴きごたえ十分の演奏会だった。

それにしてもこうしてメインとして演奏されると、つくづくベートーヴェンの第4交響曲っていい曲だと思う。しばしば第4、第7というプログラムが組まれ、前座みたいな扱いになりがちだが、ネコパパはむしろ第4のほうが好きだ。偶数信仰ではない。両端楽章はさすがに第7のほうが演奏効果も上がりかっこいいが、中間2楽章は第4のほうが優れているように思う。第2楽章はアダージョ、本物の緩徐楽章で、のびやかな歌に満ち、第3楽章は第7と同じABABAと、トリオが二度挟まれるスケルツォなのに、第7のような(演奏によっては)弛緩した感じをあたえることがない。

■ネコパパとベートーヴェン第4

第4番を初めて聴いたのは、1970年にTV放送されたサヴァリッシュ/N響のベートーヴェン・チクルスだったはずだが、このときのはさっぱり記憶になく、きちんと聴けたのは父の職場の同僚の方からいただいたワルター/ニューヨーク・フイルのモノラルLPだった。衝撃的だったのは、自分で購入したフルトヴェングラー/ベルリン・フィルの戦中録音(フォンタナ廉価盤)だった。以来、さまざまな演奏をレコードでも聴いてきたが、愛聴したい、いい演奏がとても多い。この場を借りて、そのなかのいくつかをご紹介したい。
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ブルーノ・ワルター指揮 ニューヨーク・フィルハーモニック(1952)
ワルター盤を選ぶとしたら、コロムビア交響楽団とのステレオ盤を挙げるのが順当だろう。だが、今のネコパパは、独特の音色美と厚みに満ち、冒頭から引き込まれる、この1952年録音盤に魅了されている。思えばこの曲の出会いとなった演奏。原点回帰ということかも。
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ピエール・モントゥー指揮 ロンドン交響楽団(1961)
すべての夾雑物をそぎ落としたようなソリッドさながら、軽やかな自在さも備えた演奏だ。20歳ごろにLPで聴いて、これこそ、この曲の、ひとつの究極の姿ではないかと思えた。
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オットー・クレンペラー指揮 バイエルン放送交響楽団(1969)
この指揮者にはたくさんの同曲録音があって、どれも良く、一枚に絞るのは困難だが、フィルハーモニアとの1960年チクルスを横目でにらみながらも、えいっと選べば、クレンペラーの晩年の境地のようなこの1枚になるだろうか。モントゥーとは対極の遅めのテンポで構築された、深淵なる音楽世界。
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マリス・ヤンソンス指揮 バイエルン放送交響楽団(2012)
来日時のサントリーホールのライヴ演奏をTVで視聴して、指揮者とオーケストラが一丸となって生み出される生命力の充満に圧倒された。以来ヤンソンスのファン。彼自身もこのときの演奏の価値に気づいたらしく、いったんミュンヘンのライヴで収録した全集<金箱>を、これも含めて7曲分、東京ライヴと入れ替えて再発売している<銀箱>。こんな指揮者、なかなかいないと思う。
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サイモン・ラトル指揮 ベルリン・フィルハーモニー(2015)
ウィーン・フィルに続く、ラトル二度目のベートーヴェン・チクルスは、モダンスタイルでの演奏に立ち返った。その判断は正しかったと思う。中では、2,4,8番がネコパパのお気に入りだ。特に4番は、緊張感が途切れず一気に聴け、スーパーオーケストラの機動性とはこれか、と納得もさせてくれる。
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朝比奈 隆指揮 新日本フィルハーモニー(1998)
堂々たるスケールとゆったりとした呼吸感という、朝比奈翁独特の造形美が楽しめる。彼は多数の全集録音を残しているが、この曲については、大きな出来不出来はなく、どれもいい。中で技術的にも表現の点でも隙がなく、すっきりとまとまっていると感じるのが、この生前未発売のチクルスの一枚だ。生誕 110年を祝しての発掘。オクラにならなくてよかった。
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カルロス・クライバー指揮 バイエルン国立管弦楽団(1982)
これ、ほんとにネコパパの愛聴盤なの?と聞かれると、返答に窮するけれど、少なくともカルロスの録音中、最良のものと思うのは事実。1986年、日本公演のTVを見て感心し、それからこれを聴いて、やっぱりこの一気呵成、自信と活力に満ちた棒は凄いと思った。
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エフゲニ・ムラヴィンスキー指揮 レニングラード・フィルハーモニー(1973)
テンポは速い。カルロスとよく似ている。しかし、硬質な透明感と、細部に凝った情報量の多さは、この指揮者独自の世界だ。とにかく時間をかけて、徹底的に追い込んだ音楽。一瞬も聴き流すわけにはいかない。同じ時期に何種類も録音があって紛らわしいが、ムラヴィンスキーによる同曲初のステレオ録音として、ビクター・メロディアからLPとして発売されたのがこの1973年4月29日のライヴ盤。Altusには、この前日と、1か月後の日本公演のいずれもライヴ盤があるけれど、ネコパパの愛着はこちら。
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プロフィール

yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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