これは なみだ?

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福音館 1984.6.1

黄色い花びらからおちる、一滴の水。
扉には、そこは滑らかな緑の葉。第1画面は、そこに落ちた一滴の雫。
「これは」の文字。
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そこにやってくる一匹のアリ。
ことばは「なみだ?」

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しょっぱい、
にがい、
すっぱい、
からい、
つめたい、
なみだ?
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…と、画面が進むごとに、アリの数は増えていきます。
やがて、雫のまわりを、円になってぎっしりと取り囲むアリたち。その数がピークになったかと思ったところに

いいえ、これは

と否定の言葉があらわれて、

おいしい、
あまい、
あたたかい、
はなの…

と続きます。こんどはありが少なくなっていき、雫も減っていって、ついに雫は消え去って、アリもいなくなります。
最後の場面は、葉っぱの頭上。次の一滴の雫を落とそうとする、黄色い花びらのアップです。
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一瞬の時間の、小さな出来事の中にある、命の永遠さが、最少の言葉と、視点を絞った写真によって、鮮やかにとらえられています。
「なみだ」を形容する言葉は五つ。
「みつ」を形容する言葉は三つ。
喜びの言葉は、悲しみの言葉より、ずっと少ない。それでも、生の時を満たすには十分…そんな、生きることの秘訣が、きざまれているかのようです。

絵で語る絵本作家、長新太に、あえてテキストだけを依頼して、栗林慧の写真と組み合わせる。これも松井直のアイデアなんでしょうか。
何度見ても、うっとりして、世界が好きになる。
こんな絵本は、もう二度と作れない気がします。

三歳のソノも、この絵本が大好きです。ネコパパは、ひとことひとことをゆっくり、気持ちを込めて読みます。いつもなら、大慌てで、自分でページをめくってしまうソノも、この絵本の時は不思議とそれをしません。
読み手も、聴き手も、一緒になって「うっとり」できる。
人生にそんなには多くない、素敵な時間がながれます。

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プロフィール

yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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