まちには いろんな かおがいて

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1997年9月 福音館

ぼくがてくてくあるいていくと
まちにはいろんなかおがいて…

身近にあるいろいろなものを、次々に「顔」に見立てていく写真絵本です。文章はちょっぴりで、大きくクローズアップされた写真が主役です。マンホールのふた、工場の窓、おしボタン信号のスイッチボックス、消化器、手すりの取り付け金具、水道の栓、砂場の遊具、シーソーのストッパーとボルト、板塀の節、散水ホースのリール、橋の欄干…みんなみんな、顔です。
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テキストは1ページにほんの数行の、簡素なものですが、三歳のソノは、ネコパパがそれを読み終わるのが待ちきれなくて、つぎつぎに自分でページをめくってしまいます。
それから、写真を指さして、
「おめめ!おくち!おはな!」と大きな声で「読み」ます。
そうなると、こっちもじっくり読んではいられなくて、ソノのペースに合わせてどんどんすすめていきます。
裏表紙にも、本文に出てくる三つとは別の「マンホールのふた」がありますから、見逃しちゃいけません。
終わったら、また最初に戻って、何度でもね!すごいスピードで読むのも、じっくり全部読むのも、そのときの気分。
「まだ読んでないでしょ!」なんて、無理に読み手のペースに合わせなくったって、いいんですよ。

ソノと近所の公園に散歩に行くと、この絵本を思い出して「おめめ!」「おくち!」と叫んだりすることもあります。写真絵本のリアル感は、そのまま日常につながる入口です。

佐々木マキは日本を代表する前衛マンガ家ですが、福音館の松井直に見出されて絵本作家としても数多くの素晴らしい作品を生み出しています。絵本作家に絵を描かせない企画、というのを福音館はときどきやるんですが、たいていは傑作になるのが面白い。
筆をとらなくても「世界を見る目」がそもそもビジュアルなんですね。エリック・カールが子どもたちに「フレームを通して周りをみると、事物すべてが『質感』としてとらえられるんだ」と教えていたことを思い出しました。この絵本も、佐々木マキのとらえた「生活の中の質感」なんですね。

24年前の絵本ですが、全体として古さは感じません。
ただひとつ違うのは、現在の町の公園にシーソーがないことです。

きみ どっから きたの
と シーソーが いった

24年後の世界からです。そこではもう、シーソーはなくなってしまいました。
でも、この絵本の中では、出会うことができます。そこから、シーソーを知らない子どもに「シーソーの物語」を伝えるのが、大人の語り手の仕事になるのです。
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コメント

コメント(2)
路上観察学会
赤瀬川源平らの路上観察学会がもっとこどもに近づいてもよいのかしらと思いました。
佐々木マキさんの絵本は、子供に読んだことがあります。みんながハグするお話しでした。

シュレーゲル雨蛙

2021/09/29 URL 編集返信

yositaka
Re:路上観察学会
シュレーゲル雨蛙さん
路上観察学会…「超芸術トマソン」は夢中になりました。子どもの目で世界を見る発想が、考現学という学問の基本なのかと思いました。
でも、あれは、科学研究費補助金というのが申請できるんでしょうか。通るんでしょうか。広い目で見れば、もっとも未来のある学問のひとつだと思うんですけど。

yositaka

2021/10/01 URL 編集返信

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プロフィール

yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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