スクロヴァチェフスキのブルックナー第7番、栄光への序章。

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ブルックナー:交響曲第7番 ホ長調 WAB 107 (1885年稿・ノヴァーク版)

ザールブリュッケン放送交響楽団 
スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ  (指揮)
録音: 27, 29 September 1991, Kongresshalle Saarbrucken, Germany


交響曲第7番の第2楽章「比較試聴」という、大胆な企画を進めておられる「クラシック音楽の名曲名盤この一枚」のハルコウさんが「お薦め」マークを付けている、数少ない1枚。これは聴かなければならない。
スタニスラフ・スクロヴァチェフスキはネコパパの好きな指揮者の一人だが、この盤についてはあまり強い印象が残っていない。彼が11年間をかけて完成したブルックナー交響曲全集の最初の一枚で、演奏会の好評を受けて全集化が決まったものだ。
この全集には発売当時、ネコパパも期待して、新盤が出るたびにこつこつと買い集めた。
当初はアルテ・ノヴァという廉価盤レーベルからの発売で、新録音なのに1000円以下で買えたのも魅力だった。
最初のうちは「廉価盤としてはなかなか」、録音が進行するとともに「これは、ただならぬ全集」と印象が変わっていったことを記憶している。

第1楽章は、序盤が素晴らしい。弦楽器が遅いテンポで、あの魅力的なテーマを演奏するのをきくと、たちまち音楽に没入させられる。一音一音に気持ちがこもり、ちょっとした音の「返し」にもぐっとくる。しかし、それからテンポが速まり、音楽が躍動を始めると、軽めの金管と、余裕を残して、というよりは、頂点まで出し切らないフォルティッシモが呼吸の浅さを感じさせ、物足りない気持ちになってくる。金管群の咆哮する個所では、出の音が揃わなかったりする綻びも散見。コーダではノヴァーク版の指定どおり、ぐんぐんテンポを上げていく。これは面白くない。

第2楽章も、序盤の遅い部分の気持ちの込め方がいい。冒頭は、第1楽章とはまるで違う色調の、沈んだ響きがなんともデリケートだ。第2テーマが出ると光がさしたように明るくなる。以後も情感の浮き沈みが丁寧に描き分けられていくが、惜しいかな、ここでもテンポが速くなると、リズムの軽さと響きの薄さが気になってくる。弦楽器はヴァイオリンの共感度が高く、長いフレーズでクレシェンドするところは美しいけれど、低弦が意外に鳴らないのは、デリケートさを強調するためだろうか。最後の山場ではフレーズを短く、アクセントをつけて上昇。頂点のシンバル、トライアングル、ティンパニは抑え気味に鳴らしているが、この内に秘めた迫力には強いインパクトがある。

第3楽章主部は、この演奏の特徴である「早い部分の雑駁さ」が感じられる。軽快な流れはそれなりに心地よいが、もうひとつ、リズムの強靭さが欲しくなる。トリオでは一転してテンポを落とし、弦の歌が魅惑の限りを尽くす。クライマックスでは大きなリタルダントもあらわれる。

第4楽章。この大曲のフイナーレが12分弱しかないなんて、ブルックナー、どうしたんだ、といつも思う。朝比奈翁やチェリビダッケは、何とか全体のバランスを取ろうとテンポをかなり落としているけれど、それでも15分は超えられない。
スクロヴァチェフスキは11分45秒でサクサク進む。音も明るく軽い。これでは第1楽章とのギャップはますます大きくなる。1991年の時点で、この指揮者とオーケストラのコンビは、遅い部分は溺れるほどに表情的で、早い部分は軽快そのもの。両者のギャップを埋める「深い呼吸感」が定まっていない気がするのだ。

スクロヴァチェフスキ、1991年の第7交響曲は、彼の「栄光への序章」を記録する記念碑的録音である。

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コメント

コメント(4)
再度、聴いてみます・・・アルテ・ノヴァの廉価盤はたくさん持っています。
この記事の前の朝比奈隆 氏の2000年盤の第5番、この投稿のスクロヴァチェフスキ・・・
暫く聴いていないので再度聴いてみたいと思います。

アルテ・ノヴァの廉価盤シリーズはたくさん購入しました。演奏者はそれほど有名でなくても1枚880円と録音が新しいのが魅力でした。
スクロヴァチェフスキ指揮/ザールブリュッケン放送交響楽団 のブルックナーは全曲購入しましたが、第5番、第7番が発売時880円、第8番は2枚組で1,760円だったのですが、それ以後の録音は全て1,000円になってしまいましたね。

HIROちゃん

2021/09/18 URL 編集返信

素直に感動しました。
スクロヴァチェフスキ/ザールブリュッケン放送響のブルックナーは、評判が出始めてから、どれ私も聴いてみようという気持ちで聴き始めました。先見の明があるネコパパさんのように「新盤が出来るたびにこつこつと」買ったのではなく、安かったこともあって、どさっとまとめて購入してしまいました。だから一曲一曲のインパクトが弱いのです。同じように廉価盤で出ていたティントナーより良いとは思うものの、それほど優れた演奏とは当時思っていませんでした。
今回HIROちゃんさんのリクエストにより、ブルックナー:交響曲第7番第2楽章の聴き比べを行なうにあたって聴き直してみたところ、これは優れた演奏だと感心しました。全集の最初の一曲だったのは知りませんでしたが、スクロヴァチェフスキとしても気持ちが入っていたのでしょう。
素直に感動しました。

ハルコウ

2021/09/18 URL 編集返信

yositaka
Re:再度、聴いてみます・・・アルテ・ノヴァの廉価盤はたくさん持っています。
HIROちゃんさん
持っているだけで愛聴しない盤がかなりあります。人生の時間は限られているので、それは仕方のないことです。ブログを続けているとこうして、聴こうとする刺激を与えてくださる記事に遭遇するのでうれしいです。時間がたつと、見えてくるものがあります。当時は安いので「お買い得」、それだけで聴いた気になっていたとしたら、ミスターSにも失礼なことでした。
当時のアルテ・ノヴァの価格破壊は凄かった。ここは独BMGの傘下で、NAXOSと張り合おうとした様子もありましたが、残念ながら息が続きませんでしたね。ミスターSとジンマンに光を当てたのは功績でした。

yositaka

2021/09/18 URL 編集返信

yositaka
Re:素直に感動しました。
ハルコウさんのおかげてミスターSの栄光への序章たる録音に改めてふれ、全体として、遅い部分のみずみずしい演奏に聞き惚れました。

当時私はティントナーのシリーズも同時に1枚1枚買って、違いを楽しんだものです。両者は楽譜の選択も、演奏のアプローチもかなり違っていて、簡単に優劣を決めることは難しいですが、共通しているのは、二人とも4番以前の作品がよく、後期はやや物足りない気がしたことです。ティントナーもしばらく聞いていないので、そろそろ再聴のチャンスかもしれません。

yositaka

2021/09/18 URL 編集返信

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プロフィール

yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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