あの、ワルター1957年ライヴ「エロイカ」が正規音源初登場!

正規音源初登場!ワルター、ミュンシュ、モントゥー『トスカニーニ・メモリアル・コンサート1957』(2枚組1枚価格)
カテゴリ : ニューリリース
掲載: 2021年07月15日 13:00
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 1957年1月16日。就寝中に大往生を遂げたトスカニーニ。2月3日にカーネギーホールで行われたのが「メモリアル・コンサート」。トスカニーニとも御縁が深かった三大巨匠(ワルター、ミュンシュ、モントゥー=登壇順)が、それぞれトスカニーニの十八番を振るという伝説の演奏会。オーケストラは旧NBC交響楽団であるシンフォニー・オヴ・ジ・エアー。トスカニーニが長らく応援していたミラノにある音楽家の老人ホーム“カーサ・ヴェルディ”への基金コンサートも兼ねていたことが解りました。この度ニューヨーク・パブリック・ライブラリー所蔵のマスターテープからの商品化が実現しました。演奏内容の素晴らしさは言わずもがな。その上当盤の音質のダイナミックレンジの広さは既出盤の比ではありません。カーネギーホールの豊かな響きがキッチリ収録されております。ワルター協会からのLP初出が1973年。ほぼ50年を経て初の正規発売となります。
ワルターは80歳を超えておりましたが、このコンサートの直前1月23日にはシカゴ響に客演。さらに2月17日にはニューヨークフィルとマーラーの「復活」を演奏。同時にスタジオ録音も行うという気力体力の充実が目覚ましい時期です。「英雄」は悠然としたテンポを基調としながらも繊細で効果的なテンポ変化を駆使しティンパニの強打は凄まじく、宇野功芳先生が絶賛したことも有名。この名演は直前にマルケヴィッチが同オケを指揮していた(録音セッション)からなどというまことしやかな説がありますが、有名な第三楽章ホルンのトリオなど最初は低く(小さく)、次は高く(強く)という、進軍が遠くから近づいてくるような絶妙な指揮ぶりはワルターだけです。演奏後の聴衆の拍手を制する姿も感動的。
ミュンシュの「海」。その豪快さに圧倒されます。音色の艶やかさには目も眩むよう。練習嫌いと言われておりますが客演オケでもいつものビュンと矢を射るような音の突き刺さり方はどこでも徹底しております。モントゥーのしみじみとしか言いようがない「エニグマ」。ゆったりしたテンポで、渋い悲しみを籠めた名演です。同じオケを同じ日に振ってこの明らかな音色の違い。つくづくこの時代の大指揮者は自分の音楽の理想がはっきりしていたものだと感慨無量です。
(東武ランドシステム)

「トスカニーニ・メモリアル・コンサート」
(1)ベートーヴェン:交響曲第3番「英雄」
(2)ドビュッシー:交響詩「海」
(3)エルガー:エニグマ変奏曲

(1)ブルーノ・ワルター(指揮)
(2)シャルル・ミュンシュ(指揮)
(3)ピエール・モントゥー(指揮)
シンフォニー・オヴ・ジ・エアー

録音:1957年2月3日カーネギーホール,ライヴ録音(モノラル)

この「英雄」は、高校時代に宇野功芳の著書「ブルーノ・ワルター/レコードによる演奏の歩み」(1972音楽之友社)で初めて存在を知って、著者独特の扇動的批評文によって「ききたくてしょうがない」レコードの一つになった一枚だった。
そこで紹介されていた盤は日本ワルター協会盤で、一般の高校生にはとても入手できそうもないプライベート盤だったので、あきらめていたのだったが、1976年、米ワルター協会の原盤を使用した日本コロムビア盤LPが発売され、ようやく渇きを潤すことができたのだった。
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オーケストラが旧NBC交響楽団であるシンフォニー・オブ・ジ・エアーであるためなのか、弦の響きは切っ先が鋭く、切迫した勢いがあり、ティンパニの強打も強烈で、ちょっと聞きにはトスカニーニの演奏を連想させてしまう。しかしワルター独特の歌っていくような呼吸、微妙なテンポの動き、第3楽章トリオでのホルンのレガート奏法、フレーズの強調箇所などに気を付けて聞いていくと、翌1958年に録音されたコロムビア交響楽団とのステレオ録音と、ほとんど変わることのないワルターの「英雄」解釈であることがわかる。
それだけに、オーケストラの持ち味が適度にセーブされた第2楽章と、感慨深げにテンポを落として追悼の念を込めたかのようなフィナーレ後半はいま聞いても感動的だ。
もちろん、一般向きの録音ではない「ヒストリカル録音」の範囲内での話である。

録音は記録用のモノラルで、キンキンという雑音が入ったり、強音で潰れがちで、残響はほぼ皆無と、決して万全ではないが、それなりに情報量は多い。ワルターの評伝によると、NBCからラジオ放送された形跡はないとのこと。日本ワルター協会もM&Aも、同じ音源という話はどこかで読んだ記憶があるが、素性はわからなかった。
日本コロムビアからはその後廉価盤LPとしても再発され、
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CD時代以降も同社が較的早い段階でCD化していた。
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輸入盤では米ワルター協会あらため、M&AからもCDが出ていたし、キングレコードからもセブンシーズ・レーベルとして発売された時期もあった。これも原盤はM&A。
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そして、2007年、米M&Aは、当日の全曲目を収録した2枚組CDを発売した。
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ワルター・ファンであるネコパパは、好奇心に打ち勝てず、これらのCDはほとんど入手した。
ところが、どういうわけかどれも音質がぱっとしなくて「音が出ているだけ」という感触。初出の日本コロムビア盤の印象は蘇らない。結局CDはどれも処分し、聴くときには、相変わらず古いLPを取り出して聴くしかなかった。
思えば無駄な出費を重ねたものである。ごめんなさい。
2007年盤は、LPの音と同等になったと感じていた。他の指揮者のものも収録されている完全版だし、まあ、これで一見落着だろうと思っていた。
そこへこのニュースだ。
しかも今回は正規盤とあり、ニューヨーク・パブリック・ライブラリー所蔵のマスターテープからの商品化と明記されているのが頼もしい。音質は既出盤の比ではありません、と販売元のコメントには書かれている。
鵜呑みにはできないが…
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ヴァイトブリック・レーベルは以前、ストックホルムでのワルター・コンサート正規録音を放送局のテープを使用して発売し「さすがマスターテープ使用」と思わせてくれたのは事実だ。やはり見逃せない。隠遁中の身ではあるが、ここは決断するとしようか。

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コメント

コメント(4)
マスターテープからの商品化?
私も宇野功芳氏の扇動的な文章にやられ、このディスクをなんとしても入手しなければと思いましたが、初めて聴いたときは、録音の貧しさにがっかりしました。
「ニューヨーク・パブリック・ライブラリー所蔵のマスターテープからの商品化が実現」とは非常に魅力的な文言ですが、なぜ今まで実現しなかったのか不思議です。マスターテープに記録されている音質自体が、たいしたものではなかったのかもしれません。(今回採用したテープもオリジナルではない?)
以前書いた自分の記事を読み返してみたところ、「録音はそんなに悪くなく、先のニューヨーク・フィル盤よりも良いと思いました」などと述べているので、とりあえず買い直さなくてもいいかな?などと考えていますが、購入した方の感想を是非とも伺いたいところです。
よろしくお願いします!

ハルコウ

2021/07/18 URL 編集返信

yositaka
Re:マスターテープからの商品化?
ハルコウさん
日米のワルター協会の音源は、徳岡直樹氏によると、かつてアメリカにあったプライベートなテープ音源ライブラリーCRAAが重要な役割を果たしていたようです。たた、組織はすでに解散しているとのことで、発売者の証言でもない限り後をたどるのは難しいでしょう。
今回は正規に許可を取っているとはいえ、出所は放送局でなく、公共図書館というのがポイントです。つまりそれだけではどんな素性のテープなのかはっきりしない。ライナーノーツにその種の情報があればいいのですが、さてどうなんでしょう。
いずれにしても入手はするつもりなので、聴いてから判断したいと思います。
それにしても演奏の価値判断は人それぞれで、昔は他人の言葉に一喜一憂しましたが、個々の意見があまりにも違いすぎたり、よく理解できないものが多いことがわかってきました。ハルコウさんの評文はそんなことはまったくありませんが…
それで近頃は、これは、という盤については、自分で聴いて判断するまで、極力、人の意見は読んだり聞いたりしないよう気を付けています。

yositaka

2021/07/18 URL 編集返信

えっ!・・・正規盤での発売・・
この音源は日本コロンビア盤のLPレコードと輸入CDで持っています。
個人的には「英雄」のベスト1になっているのですが・・・特に第2楽章が素晴らしいと思っています。
この演奏がマスターテープからの正規発売とのことですが・・・
テープ録音の音は時間と共に劣化しますし、本当に良い音なのだろうか?
今のところ、新たに購入するつもりはないのだけれど・・・・

余談ですが、今日はカール・ベームの1975年来日公演でのブラームス交響曲第1番の2つの演奏を聴いてみました・・・ブログにアップしてみました。

HIROちゃん

2021/07/19 URL 編集返信

Re:えっ!・・・正規盤での発売・・
HIROちゃんさん
>テープ録音の音は時間と共に劣化しますし、本当に良い音なのだろうか?
良いかもしれませんし、悪いかもしれません。
一般的な傾向は、私はあまり考慮しません。
音のコンディションは、千差万別、結局聴いてみるまではわからないのです。
経年劣化、再生回数、保存環境、保存状態、どれも関係者以外には知りえない情報だと思います。
ワルター・ファンとしては、買って聞くまで納得できそうもないので、私は躊躇なく買います。たた、結果がよかったとしても、人におすすめするかは…疑問です。唯一無二のすぐれた演奏だと思いますが、あくまでヒストリカル音源ですから…

yositaka

2021/07/20 URL 編集返信

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プロフィール

yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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