音楽を楽しむ会・ベートーヴェンを聴く-傑作の森③

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豊明市立図書館自主企画

2021年第7回 7月10日(土)午前10時~12時 (毎月第2土曜日開催)

今月のテーマ ベートーヴェンを聴く・傑作の森③

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1. 交響曲第6番ヘ長調OP68「田園」

★7人の指揮者による「田園」聴き比べ
(2020年12月放送のNHK-FM「クラシックサロン」より)

①(管弦楽)アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団、(指揮)ウィレム・メンゲルベルク
(0分35秒)
★冒頭から、テンポが目まぐるしく変わって怪しい雰囲気をかきたてる、まさにメンゲル節。スタジオ録音よりも、いっそう表情の濃厚な1940年ライヴを選んでいる。
②(管弦楽)ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、(指揮)ウィルヘルム・フルトヴェングラー
(0分45秒)
★1944年戦中のライヴ。あまりにも遅く暗い出だしに、観客も戸惑っているみたいなざわつきが。禍々しい雰囲気。ベートーヴェンよりも指揮者の個性を聞く演奏。
③(管弦楽)コロンビア交響楽団、(指揮)ブルーノ・ワルター
(0分40秒)
★1958年録音。何気ない開始のようで、既に一音一音に叙情の呼吸が感じられる。
④(管弦楽)ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、(指揮)ヘルベルト・フォン・カラヤン
(0分35秒)
★1962年録音。機能美とメタリックな駆動力が感じられる、音楽よりは壮年期のカラヤンの野心にほだされる感じ。
⑤(管弦楽)ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、(指揮)カール・ベーム
(0分37秒)
★1971年録音。弱音の抑制された響きで始まるが、これこそ、続く仰ぎ見るように壮大な立体建築の音楽への布石だ。
⑥(管弦楽)バイエルン国立管弦楽団、(指揮)カルロス・クライバー
(0分32秒)
★1983年ライヴ録音。冒頭から舞い上がるようなクラクラ感がある。彼が生涯ただ一度演奏した「田園」である。
⑦(管弦楽)ロシア・ナショナル管弦楽団、(指揮)ミハイル・プレトニョフ
(0分33秒)
★2006年録音。冒頭の僅かな部分で聴かせるテンポの激変ぶりは、誰かとそっくり。

いかがでしたか。
ほんのはじまりを比較しただけでも違いは大きいことがわかるのではないでしょうか。演奏時間だけでも、クライバーとフルトヴェングラーでは10秒も差が出ています。
面白いのは、最初のメンゲルベルクと最後のプレトニョフの解釈が似ていることです。テーマの頭のところだけ、たいへん遅く、しかしすぐにギヤチェンジするように高速化する。酷似していますね。演奏時間も2秒の違いです。現代の切れ者指揮者が半世紀以上前の演奏を参考にしているとしたら、興味深い事実です。
クラシック音楽の醍醐味は聴き比べです。

★第1、第4、第5楽章のライヴ映像
サイモン・ラトル指揮 
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
収録 2013年5月1日 プラハ城スペイン・ホール

この曲はベートーヴェン(1770年 - 1827年)が1808年に完成させた6番目の交響曲です。 ウィキによると、演奏時間は約39分(第1楽章:11分、第2楽章:13分、第3楽章 - 第4楽章 - 第5楽章:15分)となっていますが、平均値でしょう。反復の有無、指揮者の解釈や時代による演奏様式の変化によりが出ます。
一般に、第4楽章をクライマックスとしてフィナーレを早くすっきりと演奏する場合が多いことが「後半3楽章、計15分」という数字にも表れています。
けれども、本日ご視聴していただくサイモン・ラトルとベルリン・フィルの演奏では、第1、第2、第5楽章をそれぞれ約13分です。ネコパパとしては、フィナーレをクライマックスとして堂々と演奏されるのが好きなので、ラトルの時間配分は好ましく思いました。

さて、この曲は異例の5楽章で構成され、第3楽章から第5楽章は連続して演奏。各楽章に描写的な標題が付けられるなど、現在の視点で見ても独創的なスタイルです。
徹底した動機展開による統一的な楽曲構成法という点で、一見対照的な姉妹作「第5番」との共通点も多いのです。
標題は、初演時に使用されたヴァイオリンのパート譜にベートーヴェン自身の手によって「シンフォニア・パストレッラ (Sinfonia pastorella) あるいは田舎での生活の思い出。絵画描写というよりも感情の表出」と記されているそうです。また、各楽章についても次のような標題があります。

「田舎に到着したときの愉快な感情の目覚め」
「小川のほとりの情景」
「田舎の人々の楽しい集い」
「雷雨、嵐」
「牧歌 嵐の後の喜ばしい感謝の気持ち」

ただし、ベートーヴェンは「音による絵画的描写ではなく感情の表現である」という説明もしています。この種の描写音楽は前例があり、例えばベートーヴェンより少し年長のユスティン・ハインリヒ・クネヒト(1752年 - 1817年)には『自然の音楽的描写』(1784年)という曲があり「田園」とよく似た構成の曲です。クネヒトはベートーヴェンと同じ出版社から楽譜を出していたそうですから、ベートーヴェンがこの曲を知っていたことは確実視されています。

楽器編成
ピッコロ 1(第4楽章のみ)、フルート 2、オーボエ 2、クラリネット 2、ファゴット 2
ホルン 2、トランペット 2(第3楽章~第5楽章)、トロンボーン 2(アルト、テノール)(第4楽章と第5楽章)
ティンパニ(第4楽章のみ)
弦5部(第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス)

動画の後半2;27から少し聞けます。ネコパパのプラハ旅行直前の演奏会なので、愛着があります。


2. <蓄音機コーナー>
ピアノ三重奏曲第7番変ロ長調OP97「大公」~第1楽章
カザルス・トリオ
アルフレッド・コルトー(ピアノ)
ジャック・ティボー(ヴァイオリン)
パブロ・カザルス(チェロ)
録音 1928年

ルドルフ大公に献呈されたため、『大公』と通称されて親しまれています。その通称にふさわしく、優雅さと堂々とした気品がある曲想をもった大作でSP盤で8枚になります。
ベートーヴェンのただ一人の作曲の弟子であったルドルフ大公は、アマチュア・ピアニストとして相当の腕前でした。本作もピアノが主役を演じており、作曲者との身分を越えた信頼が伝わってきます。初演は1814年4月11日にウィーンのホテル「ローマ皇帝」(Zum römischen Kaiser)で行われ、この時はベートーヴェン自身がピアノを弾いたものの、耳がほとんど聞こえなかったために、アンサンブルは乱れ、これを最後に、ベートーヴェンは公の場での演奏をしなくなったそうです。
この曲屈指の名盤といわれるカザルス・トリオの演奏で、第1楽章 アレグロ・モデラート。


3. 交響曲第7番イ長調OP92
ヘルベルト・ブロムシュテット指揮
ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団
【収録】2015年5月7日、ゲヴァントハウス・コンサートホール(ライヴ)

ベートーヴェンが1811年から1812年にかけて作曲した交響曲。昨年の生誕250年記念企画で、NHKが行った人気投票で見事第1位に輝いた曲ですね。
リズム重視の曲想から、現代においても人気が高い。ワーグナーは「舞踏の聖化 (Apotheose des Tanzes) 」と絶賛しています。初演は、1813年12月8日、ウィーンにて、ベートーヴェン自身の指揮で行われています。
同じ演奏会で鳴り物入りの戦争交響曲『ウェリントンの勝利』も初演され、ともに大成功、第2楽章は聴衆からアンコールを求められたそうです。
近年は、かつては「速すぎる」と考えられていたベートーヴェンのメトロノーム指示と作曲当時の演奏習慣を尊重する傾向が強まり、一層スピーディな演奏が増えました。全て繰り返しを行っても40分を切る演奏も。今回お届けするブロムシュテットも、ほぼ40分です。
編成
第3番のような拡張されたホルンのパートはなく、ピッコロやトロンボーンを動員することもなく、書法も明瞭で古典的。「第8番」の初演で一緒に演奏された際は、木管楽器が倍、弦楽器はヴァイオリン各18、ヴィオラ14、チェロ12、コントラバス7、さらに出版譜に無いコントラファゴットも2本加わるという当時としては巨大な編成でした。ベートーヴェン自身は「第8番」をより気に入っていっていたので、「第7番」への聴衆の熱狂には幾分冷ややかだったという話もあります。

今年94歳の長老指揮者、ブロムシュテットによる演奏で聴きましょう。
この映像の収録時は88歳でしたが、溌溂とした表情で、俊敏に進める演奏ぶりの若々しさは、見事です。

第1楽章
Poco sostenuto - Vivace イ長調 4分の4拍子[注 1] - 8分の6拍子 序奏付きソナタ形式(提示部反復指定あり)。
トゥッティで四分音符が強く奏され、オーボエがソロで奏でる。長大な上昇長音階が特徴的な序奏の後、付点音符による軽快なリズムの音楽が始まる。リズムが主題部展開部再現部すべてを支配しておりワーグナーの評が示す通り。
第2楽章
Allegretto イ短調 4分の2拍子 複合三部形式。
ワーグナーはこの楽章をさして「不滅のアレグレット」と呼んでいる。変奏曲の形式であり、葬送行進曲を思わせる哀愁を漂わせつつも、暗くなりすぎず、色彩豊か。「アレグレット(少し速く)」を緩徐楽章とするのは異例だが、全楽章の中では最も遅い速度設定である。
第3楽章
Presto, assai meno presto ヘ長調(トリオはニ長調) 4分の3拍子 三部形式。
形式的には三部形式となっているものの、活発な主部と、遅いトリオが2回現れ、ABABAの型になっている。
第4楽章
Allegro con brio イ長調 4分の2拍子 ソナタ形式  
熱狂的なフィナーレ。同一リズムが執拗に反復され、アウフタクト(弱拍)である2拍目にアクセントが置かれている(現代のロック、ポップスにおけるドラムスの拍子のとり方と同じである)。第1主題は後年の資料研究からアイルランドの民謡「ノラ・クレイナ」の旋律からとられたとされている。

動画の後半で、少し聞けます。前半の「田園」も、なかなかいいですよ。


さて次回は…
再開 豊明市立図書館音楽を楽しむ会2021第8回ネコパパチラシ_page-0001
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コメント

コメント(2)
7人の指揮者による「田園」
★7人の指揮者による「田園」聴き比べは、良かったですね。
①ウィレム・メンゲルベルクは、冒頭の叙情的な田舎道を歩いてきた第1楽章標題の「田舎に到着したときの愉快な感情の目覚め」の曲想を良く表現していると私は、思います。
②ウィルヘルム・フルトヴェングラーは、手持ちのフランス協会盤で聴き直すと酷いワウフラッタが発生していました。戦争の電気事情でテープレコーダへの電圧変動が激しかったと思われます。
④ヘルベルト・フォン・カラヤンのBPOは、個人的に好きでないので・・・「アウトバーン」を疾走してきたポルシェのようでせわしく感じます。
⑦ミハイル・プレトニョフは、①ウィレム・メンゲルベルクと標題「田園」を同じ解釈していると思いました。

ヘルベルト・ブロムシュテットの動画いつもは、目を閉じていますが、目を開けて嬉々として指揮をするブロムシュテットを見ていました。

チャラン

2021/07/14 URL 編集返信

yositaka
Re:7人の指揮者による「田園」
チャランさん
毎度ご夫婦での参加ありがとうございます。今回はちょっと欲張りすぎでしたね。
この日は、珍しくお子様の来場もあったので、テスト用に持参した童謡「あめふり」のSP盤もかけてしまいました。「梅雨」「自然」つながりで何とかカッコが付いたでしょうか。

「田園」聞き比べは、またもFMエアチェックを流すという問題行為でしたが、中身は主に版権切れの音源なので、お目こぼしをいただきましょう。
フルトヴェングラーの44年盤は、番組では<クラウン PAL-1026>というCD創世期の国内盤が使われていたようです。出所不明の半海賊盤で、NHKはよくこんなものを使ったなあと思います。でも意外に音は悪くなかったですね。

ブロムシュテットの第7は全集チクルスの一つですが、全曲中でも屈指の演奏と思います。あの精力的な振りっぷりで汗一つかかない。88歳で第7が一番なんて、若すぎますよ。

yositaka

2021/07/14 URL 編集返信

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プロフィール

yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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