村上春樹の選ぶ「古くて素敵なクラシック・レコードたち」

村上春樹が自宅のクラシックレコードを写真付き・コメント付きで紹介する本が出た。その枚数はなんと、486枚。
ジャズ盤ではコレクターを自称し、オリジナル盤への執心iにも、並々ならぬものがある氏だが、クラシックのほうは、そんな拘りはなく、衝動に任せてのジャケ買い、値段買いで集めているとのこと。それでも、氏のコレクションの中ではジャズの次、ロックよりも力が入っているというのだから、クラシックファンとしては頼もしい。どこかの雑誌で連載したのをまとめたのかと思ったが、すべて書下ろしという。すべてジャケットのカラー写真付きだが、写真のサイズは小さく、主体はあくまで文章だ。356ページもある。
「ダ・ヴィンチ」のサイトに紹介文があるので、ちょっと引用してみる。

村上春樹さんが自宅のレコード棚からクラシック名曲を厳選!『ノルウェイの森』ほか…小説の描写も振り返りながら音楽を嗜む1冊!
文芸・カルチャー 公開日:2021/6/24
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古くて素敵なクラシック・レコードたち
著: 村上 春樹 
出版社: 文藝春秋 発売日: 2021/06/24

 レコードを集めるのが趣味という作家の村上春樹さんが、自身のコレクションから96曲+4人のアーティストという100の項目で486枚のレコード盤を選び、そのジャケットをずらりと並べて、盤の紹介や感想、意見を綴った『古くて素敵なクラシック・レコードたち』(村上春樹/文藝春秋)。
(中略)村上さんがクラシックのレコードを買うのに、まず演奏家や作曲家が選択の基準となり、さらには素敵なジャケット(いわゆるジャケ買い)であったり、安いからという理由もあるそうです。しかも世間で言われる「名盤」にほとんど興味がなく、ダメ元で面白そうなものを適当な価格で購入、気に入ったものを手元に残しているんだとか。 村上さんは本書冒頭の「なぜアナログ・レコードなのか?」で、「これはあくまで個人的な趣味・嗜好に偏した本であって、そこには系統的・実用的な目的はない」と書いています。
 コレクションというのはその人の性格が色濃く出るもの(個人的には最初に紹介される曲がストラヴィンスキー『ペトルーシュカ』で、「え、その曲から始めるんですか村上さん!?」と驚きました)ですが、さて村上さんはどうなのか? ぜひあなたの目と耳でご確認ください!文=成田全

「ペトルーシュカ」の次はシューマンの交響曲第2番、その次はモーツァルトのピアノ協奏曲第25番…と、配列を見るだけでも、これはそうとう個人の嗜好が反映された本だということがわかる。もちろん、大歓迎だ。村上春樹なら、これでなくっちゃ。
一章で1曲、取り上げるレコードは4、5枚が基本だが、お気に入りの盤が特に多い曲は「上下」二枠をつかって、思いのたけを述べる。
「上下」になっている曲は何なのか、気になるところだ。目次を拾ってみた。

ショスタコーヴィチ: ピアノ協奏曲第2番
ラヴェル: 弦楽四重奏曲
ブラームス: ヴァイオリン協奏曲
シューマン: 謝肉祭
ベートーヴェン: 弦楽四重奏曲第14番
シューベルト: ピアノ・ソナタ第21番
ファリァ: スペインの庭の夜
バルトーク: 管弦楽のための協奏曲
シューベルト: 弦楽五重奏曲
マーラー: なき子をしのぶ歌
ベートーヴェン: ピアノ・ソナタ第32番

村上主義者で、彼の音楽嗜好に関心がある人は、ぜひこの11曲から聞いてみるといいだろう。渋い曲が多いが、どれも飛び切りの名曲ぞろい。なお、本書ではブルックナーを1曲も取り上げていない。ネコパパとしては、そこが惜しいが…
これがどんなふうに紹介されているのか?
実はネコパパも、昨日買ってきて、さらっと斜め読みしただけ。でもきっと面白いぞ。たとえば、ネコパパも大好きなシューベルトの弦楽五重奏曲の賞の冒頭はこうなっている。

「天国的」に長いシューベルトの弦楽五重奏曲。僕はなぜか昔からこの曲が好きで(シューベルトの長い作品に惹かれる傾向がある)、うちには結構多くのレコードが(知らないうちに)集まってしまっているのだが、そのうちからとりあえず八枚を選んだ。演奏者にとっては明と暗、緩と急の切り替えが難しい曲だ。
 実をいうと、この曲で僕がもってとも頻繁に聴いたのは、ヨーヨー・マの入ったクリーヴランドSQのCDだが、どうしてかといえばいつもこれを聴きながらソファで昼寝をしていたからだ。この演奏、決して退屈なわけではないのだが、聴いているとすぐに眠くなって、とても気持ちよくすやすやと眠れてしまうのだ。他の演奏ではそんなことはないのに…というわけでけっこう重宝していた。よかったら試してみてください。

そして、選ばれた8枚の中に、件のヨーヨー・マたちの演奏は入っていない…とまあ、こんな具合である。
本書は基本的に曲を中心に同曲異盤を紹介しているが、最後の4章だけは、特定の演奏家のレコードを選んでいる。タイトルを挙げてみよう。

トーマス・ビーチャムの素敵な世界
ジョン・オグドンの個性的な生涯
マルケヴィッチの穴
若き日の小澤征爾

盟友である小澤征爾を取り上げるのは必然かもしれないが、後の三人は意外だった。
数多い(と思われる)村上主義者たちが、この本を読んでクラシックにハマり、隠れた名盤がじゃんじゃん売れることを期待したい。
さあ、読むぞ。


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コメント

コメント(2)
なかなか、面白そう・・・
村上さんがクラシックを多く聴くとは知りませんでした。
この本・・・なんか読んでみたくなりました。
選曲は名曲ばかりですが・・・
交響曲のお気に入りはあるのだろうか????
HIROちゃんなら、お気に入りは、圧倒的に交響曲だろうか・・・
ミサ曲などの合唱曲もいいな~~~

HIROちゃん

2021/06/29 URL 編集返信

yositaka
Re:なかなか、面白そう・・・
HIROちゃんさん
アマゾンで目次は読めますから曲目をお確かめください。
本は正方形でプラスチックカバーに納められ、密封されているので立ち読みはできません。
意外に交響曲は少なめで、オペラは1曲も取り上げていないのが面白いところです。個人的な好みを前面に出したもので、またそれでなければ、村上春樹の本として成立しないでしょう。
ジャズ・ファンらしく、曲の説明などそっちのけで、演奏とレコードの特色について述べているので、クラシック入門にはあまり適さず、そこが評価の分かれ目になるでしょう。まあ、村上ファンはそんなことは気にしないのではないでしょうか。

yositaka

2021/06/29 URL 編集返信

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プロフィール

yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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