今年2月に入手して、ずっと家で聴いてきた蓄音機ネコグラ3号こと、コロムビア・グラフォノーラ117がついに出前コンサートにデビューした。
といっても、自宅から500メートルの場所にある老人憩いの家だが。毎月地域で開催している地域サロンの企画の一つとして蓄音機コンサート開催となったのである。
内容は、昨年2020年12月に名古屋蓄音機クラブの例会として実施したのと同じ。
音はもちろん、談話室香津原のEMGマーク9とは比較にならないが、童謡はもともと録音レベルの高いものが多く、それなりに聴きやすい音で再生できたと思う。
今回はチピグラ2号ことグラフォノーラ212も使用。2台並べて交互に再生する方法を取った。ネコパパは、当初3号だけで行こうと思っていたのだが、
意外にもアヤママが
「二台並べてやってみたい。私が操作を手伝うから」と言い出した。
事前に家でゼンマイの巻き回数、1枚およそ30回転、1枚ごとに行う針交換、針の落とし方を練習した。全然問題なし。
そこで、当日は操作に幾分デリケートなところがあるチピグラ2号をネコパパが操作することにして、2台並べてのお披露目となった。
参加者は老若男女24名…ちょいと「老」が多かったかな?
12月はしゃべりすぎたので、なるべく話を短くして1時間で終わらせようと考えたが、なかなかうまくいかなかった。
「青い目の人形」で渋沢栄一の後押しで開催されたフレンドシップドール交換会の話が長すぎたし、童謡と関東大震災、戦意高揚の歌詞が終戦直後に書き換えられたという問題提起、本居長与に始まる東京音楽学校と童謡作曲者の系譜など、ついつい口が滑って、大事なことをかなり言いそびれたような気がする。
しかし腐っても退職ヘボ教師、こういう機会が与えられると、調子に乗ってしまうことがよくわかった。童謡歌手の川田正子が3人姉妹の中で一人疎開せず、終戦の日までNHKのスタジオで歌い続けて国民に「希望」を与え続けたという話など、はたして「ちょっといいエピソード」といっていいのか、という思いが募って、思わず口ごもってしまった。ネコパパはこういうところが軟弱なのである。肝心なところでクールになれない。語り手失格である。
蓄音機の音のことも、少し。
ポータブルと卓上型、形は違うが同メーカー・同時期、1930年代中期のコロムビア製で、プラノ・リフレックス式トーンアームとサウンドボックスNo15は、同じものを装備している。
並べて聞いても、音量はほぼ同じだ。ただし、ホーンの特性なのか、ポータブルの2号のほうが高音よりで、きつめの音。3号はまずまずのバランスだが、まだ本領が出ていない気もする。
鉄針は常用のJICOカーボン針ではなく、高音の伸びがあるナガオカSPF4を使用。歌詞を聴き取りやすくするためである。
ただし、1921年の機械録音である「青い目の人形」は、米国製BRYPHONのラウド針を2号で使用した。ラウド針は音を大きくするために使うのではなく、機械録音など、音量の出ない盤に使用すると効果的だということが、やっとわかってきた。
大方の盤ではひどく音割れしてしまう無頼針のBRYPHONだか、今回は本居長与のピアノと、本居みどりの声を、かなり明確に再生してくれた。
もうすぐ終わりという頃合いに、サロンの幹事を務めておられる防災理事から紙を手渡された。
「しまったっ、時間オーバーの警告か」
と冷や汗が出たが、読むと「蓄音機の説明もしてください」というリクエストだったのでほっとした。
最後の曲が終了したあと、機能や発売時期、価格について概略を説明する。
「私は数日前にパソコンを買い替えたのです。12年使ったというと、人からよくそれだけと、驚かれました。でも、この蓄音機はどちらも85年くらいは動いているわけです。1936年は、二二六事件の起こった年。そんな時代に製造されて、激動の歴史をくぐりぬけ、現在も立派に音楽を奏でているというのは、まったく凄いことだと思います」と締めくくった。
終了後、ゼンマイの空回しをしていると何人かのお客様が見に来られて、昔聴いた童謡のことなど立ち話する。ネコパパはこの時間が好きだ。
蓄音機にはそんなふうに人を寄せる力がある。
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コメント
地区の文化行事に対する席の間隔をあけた高齢者の感染症対策もしっかりされています。ただ私のような熱く冷めやすい聴力低下の高齢者は、大声をだしますのでご用心ください。
奥様は、図書館では、受付だけでなく空調・換気にも気を付けてられていましたね。
チピグラ2号は、再整備?と試聴による適正針の検討の結果ほぼ100%の能力を発揮し図書館ではマイクが不要と思えました。
構造は、開口部が後部上向きにありカバーがピアノの屋根のように反射板になって音像を前方に出しています。反射時、中低音が減衰し高音が強く聴こえるようですね。
チピグラ3号は、まだ拝聴していませんが他の所で同型を聴いた感じでは2分割ホーンは、横に2つのスピーカを並べたように広がりのある面音源になっていました。
チピグラ2号は、ワンホーンの点音源ですのでソロ・室内楽に向いていると思われます。
チピグラ3号は、2分割ホーンの面音源ですのでオーケストラに向いていると思われます。
チピグラ3号は、まだまだ本領を発揮していない>サウンドボックスが、OH済みだとエイジングに根拠のない30時間とすると単純に12インチ5分で(1時間当たり盤12面、針12本、ゼンマイ巻き360巻き)×30=腱鞘炎、金欠病、更に盤のクリーング、根性のあるネコパパさんでないとできませんね。(10インチ3分だと・・・)
PS:機械式録音は、溝幅が広く私は電気再生に4.5ミルを使用しますがノイズも大きい。EMGで聴かせて頂いた時、ノイズが少なく再生したので驚きました。
チャラン
2021/06/21 URL 編集返信117→ネコグラ3号です。
これは、針によってかなり音が変わるという特徴があり、適正針を探す面白さがあります。
今度、梅屋の「ペン先型」も注文したので、はたしてどんなものか、相性を確かめてみたいと思います。これを自宅で鳴らすのは音が大きすぎるくらいですが、このくらいの場所(図書館の視聴覚室の半分くらいの広さ)ならうるささがなく、最後列でもよく聞き取れました。
3号の利点は、ゼンマイを巻くのにほとんど力が要らず、ハンドルが軽くすいすいと回ることで、この部分のメンテは相当しっかりしているようです。腰を痛めるリスクの低い「優しい蓄音機」です。
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2021/06/21 URL 編集返信