あのどよめき




昨夜、ふとテレビをつけてみたら老女性歌手のコンサートが放送されていた。
そこで起きたある事件の話をしよう。

フィオレンツァ・コッソット デビュー50周年記念ガラ・コンサート
メゾ・ソプラノ : フィオレンツァ・コッソット
管弦楽 : 東京フィルハーモニー交響楽団
指 揮 : ニコレッタ・コンティ
収録: 2007年11月30日, 東京オペラシティ コンサートホール

声楽は苦手で、テレビ放送されてもめったに見ないのだが、
聞き覚えのある名前で
かなり古くから名前を知っていた人だったので、興味を感じ鑑賞させてもらった。

番組説明によれば

イタリア・オペラ史上最も偉大なメゾ・ソプラノ歌手のひとり。 2007年にオペラ・デビュー50周年をむかえ、70歳を越えてなお衰えを感じさせないその歌声は、 まさに音楽界の奇跡とよぶに相応しい。
50周年を記念して行われたコンサートでは、 オーケストラをバックに得意とするオペラ・アリアの数々を熱唱し、観客を熱狂させた。

とのこと。

そういえばずいぶん昔、テレビで(モノクロ時代)NHKイタリアオペラ公演という企画が放送されていた時代
この人が出演した番組を見た記憶がある。
すでに「大家」とよばれていたのではないだろうか。

視聴したのは番組の途中からで、

ニコレッタ・コンティの指揮で 歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」 (マスカーニ) 間奏曲が演奏されているところだった。終わるとコッソットが登場。同オペラの中のアリア「ママも知るとおり」を歌唱する。
容貌は恰幅のよい老婦人
よく年齢を重ねた人の優雅さと磊落さを漂わせているが
ひとたび声を出すと
年齢を感じさせぬ可憐な声が会場に響く。
いまも現役、というのがうなづける歌声である。

つづいて歌劇「アドリアーナ・ルクヴルール」(チレーア) 、歌劇「アイーダ」(ヴェルディ)よりアリアが唄われ、プログラムは終了。
オルガン前のバルコニーに並んだ男声合唱団員が「50周年おめでとう」の横断幕をひろげる。喝采の中ステージに駆け上がる聴衆からの花束攻勢が続き、会場は一気に華やいだ雰囲気に。

そのあと、老歌手は続けて四曲もアンコール曲を歌った。
「事件」はその二曲目で起こった。

最初の「つれない心 (カタリ)」人も知るイタリア民謡。通常よりも速いテンポの歌唱が熟練を感じさせ、会場はすっかり上機嫌に。
間をおかず、次曲の前奏が始まった。

君が代

その前奏で会場はどよめいた。
数秒、笑いが起こる。
しかし
それはすぐ静まり、コッソットが自然な日本語で、真摯にていねいに唄いすすめていくあの曲が会場を流れていった。

そのあともさらに二曲の歌唱があって放送は終了した。

私の耳に残ったのは
あのどよめきだ。
正直、前奏を聴いての強い違和感がわきおこったのは私も同じであった。

えっ 何でここでこの曲を!!

あの笑いは苦笑であったか、それとも嘲笑であったか
歌手自身は長年にわたって自分を支援し続けてきた この国の聴衆に
敬意を表した
それだけのことだったのだろう。
しかし、そこでの笑いを、彼女はどう感じたか。
これが英国ならば、
聴衆はたいそう喜んで起立して
唱和さえしたかもしれない

しかし日本では
国家といわれるこの歌に対して
人はどのような思いを持っているのか。
あの前奏を聞いて
なぜと思い 笑いがこみ上げる
屈折した思いを生み出しているものが
確かに存在しているのだ。

一つの事件であり 問いかけと受け止めたい。

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コメント

コメント(4)
No title
はじめまして、けしごむおんなと申します。
そんなことがあったんですね…。
私が子供の頃は、当たり前に式典で国歌を歌いましたが
いつの頃からか大きな問題となってしまってなんだか寂しいですね。
学校の先生が歌わないで座っているっていうのを時々テレビで見ますけど、あれはどうしてなんですか?
世間知らずな質問だけど、わからないので改めてそう思いました。

kae*es*i*007

2008/04/13 URL 編集返信

No title
コメントありがとうございます。
この国に生きるものとして
この件はうんと考え、多くの人が意見を交し合わなければならないと思います。
いろいろな立場からの考えがあり、
このようなコンサートの場でも無意識のほころびがあらわれてしまう。
その現状を直視せず
真摯な討論を避け 一方的な強制に向かおうとする現在の行政のやりかたを私は疑問に思います。

善高

2008/04/16 URL 編集返信

No title
自国はもちろん他国の国旗、国歌に敬意をはらうのは国際的にも当然のマナーなんですが…
日の丸、君が代が国旗、国歌として適切じゃないと考えるなら、法律を変えればよいのにね。

えまのん

2008/04/17 URL 編集返信

No title
コメントありがとうございます
大変重要、かつ答えるのが難しいご意見なので、
これは記事を改めて記すことにいたしましょう。
大きな問題と受け止めてくださる読者がいらっしゃるのは大変光栄です。

善高

2008/04/18 URL 編集返信

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yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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