閑静な住宅地に、ジャズの流れる午後。

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2021年6月5日、土曜の午後、名古屋市内で行われたレコードコンサートです。
オリジナル盤を中心としたジャズのアナログLPを、筋金入りのジャズ愛好家、井上マスターの名調子とともに楽しんでいただこうという趣旨で開催されました。
換気、検温、消毒、窓は開放と、感染対策は万全。定員は余裕を持って設定しましたが、すぐに予約で満席でした。
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再生機器は受注生産のみというメーカーのハイエンド・システム。
大型スピーカー「グランドチャペル」が中音寄りの引き締まったストレート・サウンドで、1950年代のジャズをリアルに再現します。
持ち込みのレコードプレーヤーは、1950年代製造の、トーレンスTD124。
これら新旧銘機の取り合わせが醸し出す、絶妙な音色が室内を満たします。
加えて休憩時間には、お抹茶に和菓子のおもてなし…という、贅沢気分の昼下がりです。
ネコパパの仕事はレコード係。ヴィンテージ機器、トーレンスのカートリッジ交換も含むので、さすがにちょっと緊張しましたが、なんとか失態なくやり遂げることができました。

プログラムのご紹介です。
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■マスターの聴きどころコメント

1 セント・トーマス…演奏の途中でアフロ・キューバン・リズムからジャズの4ビートに変わります。ドラム・ソロの途中です。耳をすませてお聞きください。
2 ホワッツ・ニュー…タイトルは「お久しぶり、元気?」くらいの意味ですが、1番2番3番と曲頭で繰り返され、最後の4番で「アデュー」に変わります。これは「またね」じゃなくて「本当のさようなら」という意味なんです。共演のクリフォード・ブラウンは、本流ジャズ・トランペットの大家と呼ばれるべき人ですが夭折しました。彼の名演と共にお楽しみください。
3 ティー・フォー・トゥー…人生は悲惨でしたが、アニタ・オデイの歌は白人ジャズ・ヴォーカルの金字塔でしょう。素晴らしい疾走感とアドリブです。 
4 テイク・ファイブ…五拍子という変わったリズムで作られています。1.2.3.1.2…という拍に気をつけてお聞きください。45回転のLPを使います。
5 降るか晴れるか…国内盤です。この美女ジャケットで、我が国では大人気なのです。モニカの歌もいいですが、チャック・イスラエルズのベース・ソロがまた、いいんです。
6 ワシントン・ツイスト…昔はやったツイストの曲ですが、ジャズとして演奏しています。盟友ベーシスト、ラファロを失った失意のビル・エヴァンスが西海岸の名ドラマー、シェリー・マンのサポートで快調なピアノを聴かせます。録音は名人ルディ・ヴァン・ゲルダー。
7 春の如く…「イパネマの娘」でヒットを飛ばしたスタン・ゲッツとボサノバ歌手アストラッド・ジルベルトの共演です。実は彼女は、夫ジョアン・ジルベルトのような本格ボサノバ歌手とはみなされていません。本来ポルトガル語で歌うボサノバを英語で歌ったため、人気となったわけですね。 
8 枯葉…最後はやっぱりマイルスです。骨董屋で買ったオリジナル・ステレオ盤です。聞けるのは一生に一度かもしれませんよ。聴きどころは、曲の良さを活かしながら、絶妙な崩し方でジャズになりきった節まわしです。このアルバム、本来キャノンボールがリーダーなんですが、マイルスの存在感は桁外れです。そして、ふただひテーマが出て、終わったと思わせながら、静かなリズムに乗って漂うトランペット…印象的なエンディングです。


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コメント

コメント(4)
豪華ですね。
これは名古屋の鈴木さんですね。名古屋はモノ作りが盛んですものね。
ターンテーブルは英国の名機。カートリッジはシュアーですか?
レコードはいずれも定盤中の定盤ですね。そんな中にも6、7には若干の変化球を入れて。ボッサ・ノヴァは新しいノリとでも訳すのかしら。アルス・ノヴァ(新しいわざ)等みたいに。戦時中の軍事通信技術の発達を受けて、民間でも1950年代にオーディオ技術、特にマイクの性能が向上したことが影響しているのではないかなと思っています。それまでの声を張り上げないと伝えられなかった歌詞を、そっとささやくようにしても伝えられるようになった事情があったのではないのかなと。そんな技術を駆使して新しくささやいたジョアンからすると、アストラッドのはまだ「歌いすぎている」と、ボッサ・ノヴァの立場から見たのでないかな、と勝手な想像です。
ところでモニカ・ゼッターランドはCDの時代になっても活躍していました。ぼくは当時教えていた学生から教えられて「For Lester and Billie」(PHONTCD 7562)1994年、スウェーデン盤を買い(買わされ)、愛聴しています。強引な学生も時にありがたいものです。タイトルにあるように、レスター・ヤング、ビリー・ホリディへのトリビュート盤ですが、これはお薦めです。でも、これは曖昧な記憶ですが、調理中に衣類に火が燃え移っての最期だったのではなかったかな。新栄町にあったフォックス・ホールで追悼したことを思い出します。

シュレーゲル雨蛙

2021/06/08 URL 編集返信

yositaka
Re:豪華ですね。
シュレーゲル雨蛙さん
いろいろと訳があってこの場所に設置されたシステムです。ベルウッドという会社は知りませんでしたが、さすがは雨蛙さんですね。たた、レコードプレーヤーは諸般の事情でマスターの私物を使用。ちなみにトーレンスはスイスのメーカーです。アームはSME、カートリッジはモノラルDENON102、ステレオSHURE V-15 Type IIIでした。
これを途中で交換する仕事もあったので、バランスを取ったり、針圧を測ったりしながらバタバタと動きました。蓄音機と違い演奏時間が長いので安心でした。
プログラム選曲は定番のようで、なかなかひねりが聴いており、さすがマスターと感心しました。

ジルベルト夫妻の逸話はいろいろと聞いていて、興味深いものです。
ジョアンはかなり神秘性をまとった人物で、本格ボサノバ・ファンの人は、ポルトガル語必須、アストラッドは邪道と思うようです。しかし、世界的に音楽が認められることもジャンル形成の上では、重要。それぞれの役割があったのだ、と今となっては思います。
モニカ・ゼッテルンド(人によって発音が違いますが、ネコパパはこれで覚えました)、なんとも悲劇的な最後だったんですね。想像しただけで怖いです。合掌。

本番4日前にもリハーサルをしましたが、当日はまるで別の装置のように、音が向上したのも、オーディオの不思議です。あまり使用されていなかった機器で、わずかでもエージングが進んだのかもしれません。

yositaka

2021/06/08 URL 編集返信

m(__)m
スイスのメーカーだったのですね。失礼しました。SMEとセットの印象が強くて英国に引っ張られたのかな。

シュレーゲル雨蛙

2021/06/08 URL 編集返信

yositaka
Re:m(__)m
シュレーゲル雨蛙さん、ドンマイです。ヴ王の名言「政治の本質は失政」に倣っていえば「文章の本質は勘違い」です。

yositaka

2021/06/08 URL 編集返信

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プロフィール

yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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