音楽を楽しむ会・ベートーヴェンを聴く/傑作の森②

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豊明市立図書館自主企画
2021年第5回 5月8日(土)午前10時~12時 (毎月第2土曜日開催)

またしても緊急事態宣言の発令で、心配の多い日々ですが、このひとときだけは、頭を空っぽにして音楽の世界でおくつろぎいただければと思います。感染対策は万全です!さて今回も、昨年延期になったベートーヴェン生誕250年記念企画。お馴染みの名曲をたっぷりお楽しみいただきましょう。

今月のテーマ ベートーヴェンを聴く/傑作の森②


1. ピアノ協奏曲第5番^変ホ長調op73「皇帝」~第1楽章
ダニエル・バレンボイム(ピアノ)
クラウディオ・アバド指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団  
収録 1994年5月1日

■概要
1810年完成。ルドルフ大公に献呈。
ピアノ協奏曲のソロは全て自分で弾いてきたベートーヴェンですが、ここにきてついに断念、信頼できるピアニストに委ねることになりました。その背景にあったのは、戦争です。
この曲は、ナポレオン率いるフランス軍によってウィーンが占領される前後に手がけられています。作曲に取り組んでいる最中の1809年、フランス軍はウィーンを完全包囲し、シェーンブルン宮殿を占拠。ウィーン中心部も砲撃されました。
その後両軍の間で休戦協定が結ばれるも、皇帝フランツを初め、ベートーヴェンを支援してきた貴族たちもこぞって疎開、ウィーンに於ける音楽活動は一時途絶えてしまいます。ベートーヴェンの住居近くにも砲弾が落ちたことから、彼は弟カール宅の地下室に避難、なおも作曲を続けましたが、フランス軍による爆撃音は、進行していた難聴をより重症化させてしまい、ついに彼はこれまで自身で行ってきた初演のソロを諦めたのです。

■初演とその後
初演は1811年1月13日に行われたロプコヴィツ侯爵宮殿に於ける定期演奏会。唯一の作曲の弟子でパトロンのルドルフ大公の独奏により、非公開で演奏されました。
公開初演は11月28日にライプツィヒ・ゲヴァントハウス演奏会に於いて、フリードリヒ・シュナイダーが弾き、翌1812年2月12日にはケルントナートーア劇場にてピアノの一番弟子、カール・チェルニーの独奏によるウィーン初演。
残念ながら聴衆には複雑に感じられたようで、不評に終わり、存命中に二度と演奏されることはありませんでした。現在の名声は後年、リストが好んで演奏して以後に確立されたようです。

■「皇帝」という通称の由来
「皇帝」の通称は、ベートーヴェンとほぼ同世代の作曲家兼ピアニストで楽譜出版も手がけていたヨハン・バプティスト・クラーマーが、雄渾壮大とか威風堂々といった当楽曲で抱いた印象から付与したものといわれ、ベートーヴェンの死後、主として英語圏で定着したとのこと。

■第1楽章 Allegro 変ホ長調 4/4拍子
協奏曲式ソナタ形式。慣例に反して、いきなりピアノの独奏で始まる。
提示部はまずオーケストラで提示してからピアノが加わる。第2主題は最初短調で示されてから本来の長調に移行する。
展開部は木管が第1主題を奏して始まり、豪快に協奏しながら第1主題を中心に展開。コーダに入る所ではベートーヴェン自身により、ドイツ語でカデンツァは不要である旨の指示がある。


2. チェロ・ソナタ第3番イ長調~第1楽章
パブロ・カザルス(チェロ) オットー・シュルホフ(ピアノ) 録音:1930年

1808年に完成。ベートーヴェンはデュポール兄弟などチェロの名手との交流があり、チェロ・ソナタというジャンルを音楽史に生み出した人です。そのためか、ベートーヴェン作の室内楽曲の中で、この5曲は生前から高く評価され「チェロの新約聖書」として、チェロ奏者にとっての大切なレパートリーになっています。
最も知られているのがこの第3番。ネコパパの大好きなチェリストのスティーヴン・イッサーリスは「本作品によって歴史的に初めて、チェロはピアノと対等な役割を与えられた」と語っています。チェロ本来の低音とカンタービレの能力を生かしながら、高音なども積極的に活用し、チェロの持つソロ楽器としての可能性を大きく広げた傑作です。古い録音ですが「チェロの神様」カザルス自身が「これ以上の演奏はできない」と高く評価していたSP録音を蓄音機でお聞いただきましょう。

■第1楽章 アレグロ・マ・ノン・タント
イ長調、2分の2拍子、ソナタ形式。
チェロが雄大なイ長調の第1主題を奏し、ピアノもそれを受けて曲は始まる。展開部では、チェロとピアノの有機的な関係が示される。再現部を経て、コーダでは動機圧縮の手法によってさらに曲は盛り上がりを強め、チェロの旋律で曲を閉じる。


3. 交響曲第5番ハ短調op67「運命」
グスターヴォ・ドゥダメル指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団     
収録 2012年5月1日

さて後半は「運命」です。全曲たっぷりお楽しみください。
この曲はベートーヴェンの作曲した5番目の交響曲で、日本では一般に「運命」と呼ばれ、クラシック音楽の中でも最も有名な曲の1つです。ベートーヴェンの交響曲の中でも最も緻密に設計された作品で、その主題展開の技法や「暗から明へ」というドラマティックな楽曲構成は、後世の作曲家に模範とされてきました。「運命」の通称は、ベートーヴェンの弟子アントン・シンドラーの「冒頭の4つの音は何を示すのか」という質問に対し「このように運命は扉をたたく」とベートーヴェンが答えたことに由来するといわれます。しかし、シンドラーは現在では師の業績を美化したいためか、様々な史実の改竄を行った人物であり、このエピソードの信憑性は、いまではほぼ否定されているようです。
1807年から1808年にかけて、交響曲第6番『田園』と並行して作曲されました。1808年12月22日、オーストリア・ウィーンのアン・デア・ウィーン劇場にて「交響曲第6番」として初演。ところがこの初演に大問題があったのです。

■初演時のプログラムと騒動

交響曲第5番ヘ長調『田園』(注:現在の第6番)
アリア "ああ、不実な人よ"(作品65)
ミサ曲ハ長調(作品86)より、グロリア
ピアノ協奏曲第4番
(休憩)
交響曲第6番ハ短調(注:現在の第5番)
ミサ曲ハ長調より、サンクトゥスとベネディクトゥス
合唱幻想曲

聴衆は「暖房もない劇場で、少数の観客が寒さに耐えながら、演奏を聴いていた」とされています。しかもこの演奏会、全体で4時間を越える長尺で、前日までトラブル続きでした。
練習時にはベートーヴェンが不真面目な少年合唱団員を殴り、これに怒った演奏者たちが「彼の指揮では演奏しない」と、演奏をボイコット。なんとか本番だけ本人がぶっつけで指揮するという妥協案で決着したものの、第1部で演奏されるはずのアリアは、予定歌手がドタキャンし、代役も緊張のあまり歌えなくなり退場。その後はなんとか進行したものの、第2部のフィナーレを飾る「合唱幻想曲」では、合唱に混乱がおこり始めからやり直すという不手際になりました。演奏もひどかったと思われますが、当時の資料はトラブルの件ばかりで肝心の曲の評判はほとんど分かっていないようです。

■楽曲
「暗から明へ」という構成をとり、激しい葛藤を描いた第1楽章から瞑想的な第2楽章、第3楽章の不気味なスケルツォを経て、第4楽章で歓喜が解き放たれるような曲想上の構成をとっている。ピッコロ・コントラファゴット・トロンボーンを用いているが、これらの楽器は、交響曲において今まで一度も使われたことのない楽器であった。

■ドゥダメルについて
グスターボ・アドルフォ・ドゥダメル・ラミレス(1981年1月26日 - )は、ベネズエラの若手指揮者。ユース・オーケストラやサルサ・バンドでトロンボーン奏者として活動していた父親と声楽家の母親の元で、幼い頃から音楽に親しみ、5歳頃から国家あげての音楽教育「エル・システマ」に参加して才覚をあらわし、10歳でヴァイオリン、12歳のときに指揮を手がけます。1999年には「エル・システマ」の成果を世界に示す役割を担った「シモン・ボリバル・ユース・オーケストラ」音楽監督に就任して世界各地で演奏し、脚光を浴びました。サイモン・ラトル、クラウディオ・アバドの支援でヨーロッパ各地に招かれ。2004年、グスタフ・マーラー国際指揮者コンクールに優勝。2010年以来、ベルリン・フィル、ウィーン・フィルの指揮台にも盛んに立って活躍しています。
ただし、故郷ベネズエラのマドゥロ独裁政権に対しては、2017年5月に反政府デモで音楽家が死亡したことをきっかけに、批判的姿勢に転じ、母国の演奏団体とは決別。現在はスペイン国籍となっています。


さて、次回は…
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コメント

コメント(2)
「ドゥダメルの運命」
映像主体の演奏は、ともすれば各パートのアップ映像に目と耳がいき全体の演奏が聴きとれなくなるので私は目をつぶって聴いていますが「ドゥダメルの運命」は、違いました。
演奏会場が、ウィーンのスペイン屋内騎馬練習場とのことでしたがレリーフが見事で音響も抜けが良い文化歴史の深さを感じました。BPOも暗く寒いドイツから明るい間取りのホールで軽快?に一味違う演奏していました。ドゥダメルの指揮 彼の持ち味がでていてよかったです。
フライングの7人の「運命冒頭」聴き比べ私は、聴きなれたフルベンがいいですね。
「運命」は、70~80歳にならないと味がでないのかなと思いました。
パブロ・カザルス(チェロ) 録音:1930年は、蓄音機で聴くとカザルス独特のチェロの響きを再現していました。家にある盤もEQカーブを変えてもう一度電気再生してみますが、さてどこに格納したのやら。
無用な事:
無料で聴かせていただく図書館の音響装置、スピーカが壁面に埋め込んであり壁面の化粧板を叩くと経年で板が浮いている音がする・・・。

チャラン

2021/05/09 URL 編集返信

yositaka
Re:「ドゥダメルの運命」
チャランさん
ドゥダメル2012年の「運命」は、木管を前に出したさわやかな響きが特徴で、深刻ぶったところのない若々しさが魅力でした。
スペイン騎馬学校は、楽友協会ホールやコンツェルトハウスのできる以前からウィーンを代表するコンサート会場だったようです。下は土なので、絨毯を敷き詰めたりステージを設置したりするのは大変だったでしょうね。
「運命」冒頭7種類聴き比べは昨年6月にNHK-FMで放送された「クラシックサロン」のエアチェックです。約5分なので「引用」でいいかなと。古い録音ばかりですし。
カザルスは、9分50秒をSP両面に詰め込んでいる「収録限界に挑戦」した盤のため音が小さく、アメリカ製のラウド針を使ってみました。意外に音が前に出ましたね。
音響設備は貧乏財政で改善は難しそうです。篤志家(とくしか)の寄贈でもあるといいのですが。

yositaka

2021/05/09 URL 編集返信

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yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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