音楽を楽しむ会・楽器の世界⑧クラリネット

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2021年第2回 2月13日(土)午前10時~12時 (毎月第2土曜日開催)

今回は久々の楽器シリーズになります。
私の勤務する中学校では、音楽の授業が大変。リコーダーの演奏も、合唱も、思うに任せぬ状況が続いているからです。世の中の音楽事情も大変で、やっとコンサートに出かけても、ステージも客席もいつになく緊張…こんなときこそ、音楽の大切さが感じられますね。
せめてはこの2時間は、リラックスして音楽を楽しみましょう。
取り上げる楽器は、暖かい響きの木管楽器、クラリネットです。ではまず、この曲からお聞いただきましょう。

■「クラリネットをこわしちゃった」

この歌は、フランス民謡を石井好子が1959年に日本語に訳したもの。歌詞の内容はだいたい原語通りとのこと。クラリネットを愛する国らしい歌詞です。「♪オーパッキャマラード」の部分は発音がおもしろくて訳者がそのまま残したそうで、実際は「Au pas camarade」と書いて「友よ、さあ行こう」の意味だとか。「整列ーっ!」の掛け声にも使われる言葉なので、音が元に戻るようにお願いしているのかもしれません。
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今月のテーマ 楽器の世界 クラリネット


クラリネットの音域は、すべての管楽器中最も広く、高いフルート、オーボエと、低いファゴットとの中間にあたります。マウスピースに装着されたリードで発音する木管楽器で、オーケストラでは木管パートの中間の音域を受け持ち、ソロも多く、吹奏楽ではトランペットとともに主役をつとめます。
また、スイング・スタイルのジャズではソロ楽器としても活躍します。

ニュルンベルクの楽器製作者、ヨハン・クリストフ・デンナーによって、18世紀初頭に発明されたと言われています。名称は、小型のトランペット(クラリーノ)に由来。一般にクラリネットと呼ばれるのは、ソプラノクラリネットで、他にもピッコロクラリネット、アルトクラリネット、バスクラリネット、コントラバスクラリネットなどの同属楽器が存在しています。バスクラリネットは、ジャズ奏者のエリック・ドルフィーが得意にしていました。
デンナーがつくった初期のクラリネットは、キイが2つでしたが、その後だんだんキイの数が増えていき、現在もっとも一般的なベーム式と呼ばれるのは16キイです。これはドイツ人の楽器製作者テオバルト・ベームがフルートのために考案したアイデアを元に、フランスのクラリネット奏者、イアサント・クローゼが完成した方式です。一方、ベーム式よりやや古いエーラー式は、ドイツ人のクラリネット奏者で、ベルリン・フィル創設メンバーの一人でもあったオスカール・エーラーによって1900年代に考案された方式です。モーツァルト、ウェーバー、ブラームスなどが活躍した時代はこの方式で、現在もドイツやオーストリアで広く愛用され、ウィーン・フィルやベルリン・フィルはエーラー式を使っています。エーラー式はベーム式よりキイが多く、指使いも難しいのですが、響きの良さは独特で、独奥のオーケストラには合うのでしょう。

1. モーツァルト:クラリネット協奏曲イ長調 KV.622 第1楽章
チャールズ・ナイディック(クラリネット)オルフェウス室内管弦楽団 録音:1987年

モーツァルト晩年の1791年に作曲された曲で、A管(イ調)クラリネットのための名曲中の名曲として君臨しています。
流麗な旋律と華麗なパッセージが多用され、カデンツァは省略という新機軸。モーツァルトならではの魅力に溢れています。悪友のクラリネット奏者、アントン・シュタードラーのために作曲しました。
シュタードラーは低音域を拡大したバセットクラリネットの開発者で、本来はこの楽器のために書かれましたが、現在は通常のクラリネットで演奏できるかたちの楽譜しか残っていません。しかし、最近ではバセットクラリネットを復元した演奏も見られるようになりました。

ナイディックはアメリカの名手。オルフェウス室内管弦楽団は指揮者やリーダーをおかず、合議制で音楽作りをすることで有名なアメリカの室内オケ。そのため、曲ごとに演奏は大きく変わり、首をかしげる演奏になる場合もありますが、このモーツァルトはとびきりの大成功です。


2. W.A.モーツァルト:クラリネット5重奏曲イ長調 KV.581 第1楽章
レオポルト・ウラッハ(クラリネット)ウィーン・コンツェルトハウス四重奏団 録音:1951年

協奏曲と同様、シュタードラーのために書かれました。1789年9月作曲。
華やかな中にも、協奏曲以上に憂愁の漂うところが、晩年のモーツァルトの心境を思わせる音楽です。深い陰影をもつ響きが印象的です。この作品もバセットクラリネットのために書かれたのではないかと推測されています。
ウラッハは戦前からウィーン・フィルの主席を務めた奏者で、この録音は戦後の混乱期にアメリカのマイナーレーベルによって行われ、曲の真髄を明らかにした演奏として愛聴されてきたものです。その後、マスターテープが紛失していましたが、1996年に当時発売権を持っていたMCAビクターの日本人ディレクターがアメリカの倉庫から発見。再び瑞々しい音で聴けるようになりました。


3. J.ブラームス:クラリネット5重奏曲ロ短調 Op.115)第3楽章
ペーター・シュミードル(クラリネット)、ウィーン・ムジークフェライン弦楽四重奏団 
録音1993年

1891年の夏にバート・イシュルで作曲。ブラームスがクラリネットを用いた室内楽はこの5重奏曲のほかに、二つのソナタ、そしてピアノとチェロとの3重奏曲がありますが、この4曲はマイニンゲン宮廷オーケストラのクラリネット奏者、ミュールフェルトのために書かれました。モーツァルトの作品を意識して作られたこの5重奏曲は、晩年のブラームスの心境を彷彿とさせるような、深い哀愁と悲哀が込められています。
シュミードルもウィーン・フィルの主席を長く務めた人。ウラッハの芸風を引き継いだかのような深く柔らかい音色で、味わい豊かな演奏を行っています。

4. A.コープランド:クラリネット協奏曲 第2楽章
スタンリー・ドラッカー(クラリネット)レナード・バーンスタイン指揮 ニューヨーク・フィルハーモニック 録音1989年10月ニューヨーク

ニューヨーク生まれの作曲家コープランドは、20世紀のアメリカを代表する作曲家の1人。この曲は20世紀の偉大なクラリネット奏者、ベニー・グッドマンのために1947年から1949年にかけて作曲されました。多彩なオーケストレーションを背景に、クラリネットは技巧的なパッセージやカンタービレはもちろん、スウィングジャズの代表者だったグッドマンに合わせ、ジャズの要素も色濃く、いかにもアメリカらしい音楽となっています。
コープランドの作曲の弟子だったバーンスタインが、ニューヨーク・フィルの首席奏者ドラッカーと快演を繰り広げます。


5.フランシス・プーランク:2本のクラリネットの為のソナタ~第3楽章
エルンスト・オッテンザマー (クラリネット)ヴェンツェル・フックス (クラリネット)
録音: 21-22 November 2005

1917年、当時若干18歳だったプーランクは《黒人狂詩曲》初演の大成功によってパリ楽壇に華々しく登場。その翌年に作曲されたのがこの《2本のクラリネットの為のソナタ》です。
シャルル・ケクランに作曲を師事する以前の、独学の時期の作品ですが、明快、簡潔で時にアイロニックな、エスプリに満ちた音楽です。詩人ジャン・コクトーは「スカルラッティやハイドンを手本にした簡潔なソナタで、静寂から、感動的なアンダンテを経て、また静寂へと戻っていく。柱時計のカッコウのように」と評しています。B♭管とA管、二本のクラリネットが用いられ、多彩な音色を楽しむことができます。
ウィーン・フィルとベルリン・フィルの主席同士という贅沢な共演です。

■蓄音機コーナー■
6. スター・ダスト
アーティ・ショウと彼の楽団  solos by Artie, Billy Butterfield (trumpet) and Jack Jenney (trombone)       Victor recorded October 7, 1940, Hollywood

1910年生まれのアーティ・ショウはニューヨーク生まれ。
スイング・ジャズを代表するクラリネットの名手で、この「スター・ダスト」は彼の代表的な名演奏と呼ばれるひとつです。ベニー・グッドマンが「スイングの王様」と呼ばれるのに対して彼は「クラリネットの王様」と呼ばれました。


7. ザ・マン・アイ・ラヴ(私の彼氏)
ベニー・グッドマン・カルテット  Benny Goodman,Teddy Wilson, Gene Krupa, and Lionel Hampton  Victor recorded on July 30, 1937
.
1909年、シカゴのダヤ系ロシア移民の家庭に生まれたベニー・グッドマンは、貧困の中苦労してクラリネットを学び、「スイングの王様」と呼ばれるまでになりました。
クラシックにも秀で、コープランド、バルトーク、バーンスタインが彼のために曲を書いています。


■映像で楽しむクラシック■

8.クラリネットとオーケストラのためのラプソディ (ドビュッシー)
ヴェンツェル・フックス(クラリネット)ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団サー・サイモン・ラトル(指揮) 収録:2007年

ドビュッシーはガブリエル・フォーレの推薦でパリ音楽院の卒業試験の審査をすることになりました。この曲は1910年の試験のため課題曲として1909年12月から1910年1月にかけてピアノ伴奏版が書かれ、翌1911年の夏に、数か月を費やして管弦楽化されました。
初演はドビュッシーの死後の1919年。《牧神の午後への前奏曲》を思わせる抒情と、《前奏曲集》の一部に似た諧謔が交錯する印象的な作品です。クラリネットの「ロマンティックな甘さ」が、ドビュッシーのクールな語法の中で生かされ、ドビュッシーは書簡の中で「私の書いた作品のなかでも最も愛すべきもの」と述べる程の自信作しなりました。クラリネット奏者にとっての重要なレパートリーとしてよく演奏されますが、演奏は大変な技巧を要する難曲です。


さて、次回は…
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コメント

コメント(4)
ご苦労様でした。
図書館のコロナ対策の換気は、ホールと違い窓を開けてバッチリでしたね。
(防音・暖房は、❓>演奏が、良ければ寒さを忘れる)
蓄音機も修理から帰って絶好調でした。
あの音量なら無理して117にしなくてもいいです。
最後の「クラリネットとオーケストラのためのラプソディ (ドビュッシー)」のDVD良くありましたね~。スクリーンが、4:3なのでラトルがよりスリムにみえました。
何時もは、目を閉じて聴いているのですが、ズーと目を開けていました。ドビュッシーが、自画自賛した気持ちが良くわかります。

チャラン

2021/02/13 URL 編集返信

yositaka
Re:ご苦労様でした。
チャランさん
本日も30人参加で楽しんでいただけて、良かったです。ポータブルの212と卓上型の117、販売時期が同じで、トーンアームもサウンドボックスも共通なので、すんなり手になじみます。音はそれぞれの味があって、聴き比べも楽しい。
両者に付属のサウンドボックスのNo15はジュラルミン製のダイヤフラムを持ち、頑丈ですが、重量がありすぎるので、軽量の戦後製No.29と併用するとレコードを傷めにくいとのことです。
No9,No15,No29と簡単に交換できるのは、カートリッジ交換に似た楽しみ方ができていいですね。ただ、入手は難しそう。
ラプソディ、10分の曲ですが、中身は詰まっていますね。ドビュッシーはこういう出来に満足するようです。

yositaka

2021/02/13 URL 編集返信

懐かしのプーランク
こんばんは。

さすがに守備範囲が広いですね~。知らない曲がたくさん。

でも,プーランクのソナタは思い出深い曲です。仲の良かったクラリネット吹きが「この曲やろうぜ」といって楽譜をもってきたんです。ぼくはフルートだったので,「どうやってやるんだ」といったら,「オレがB♭管でA管のパート吹くから,お前は思いっきり頭部管を抜いてH管にしろ。これなら半音ちがいだからできる」と言うんです。抜けそうなほど頭部管と側部管を抜いて,無理やり合わせて遊びました。ある意味,この曲はブッ飛んでますから,まわりの先輩から「あの二人はまたとんでもない曲を吹いている」とあきれられました。
若くして亡くなってしまった友人との懐かしい思い出です。

リキ

2021/02/14 URL 編集返信

yositaka
Re:懐かしのプーランク
リキさん
さすがはリキさん!あのプーランクをフルートでやってしまうとは…録音で聞いていても、ふたりがぴたりと息をあわせなければ曲になりません。ご友人とは、きっと気心のしれた交流だったのでしょう。
先回、ジャズピアニストのチック・コリアの記事を載せましたが、高校時代、ジャズをはじめて聞かせてくれた友人も、若くして亡くなっています。
彼にはジャズだけではなく、ストラヴィンスキーもバルトークもブーレーズもはじめて教えてもらい、心置きなく話せたのです。ネコパパも、あちこちから、いろいろ頂いて、やっとのことで今を生きているのだと思います。

yositaka

2021/02/14 URL 編集返信

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プロフィール

yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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