ジャズピアニスト、チック・コリア逝去

チック・コリアとキース・ジャレット。このふたりのピアニストは、ネコパパにとって特別な存在だ。クラシック一辺倒だった音楽趣味の方向性を変えた人物だからである。二人とも1970年代に壮大なピアノ・ソロを披露し、クラシックとジャズという、なかなか異質、ある意味で水と油のようなジャンルに風穴を開けた。
出会ったのはチック・コリアが先。たまたまNHK-FMで彼のアルバム「ピアノ・インプロビゼーション」、ー当時は単に「チック・コリア・ソロ」と呼ばれていたと思うーが放送されていて、すっかりクラシックと勘違いして聞き入った。ナレーションでジャズと知ってびっくりした。高校2年生だったか。
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その後、友人宅にもそのLPがあるのを知って、聞かせてもらった記憶がある。そのときはそれで終わり。大学に入ってジャズ好きの友人たちを知り、ネコパパのクラシック一辺倒も緩和のときを迎えるのだが、当時チック・コリアと同じようにソロピアノを得意とする人物がもうひとりいるのを知った。キース・ジャレット。それは、初のソロLP「フェイシング・ユー」と、代表作とも言われている「ケルン・コンサート」を聞いたことで、それはもう、衝撃的な体験と言ってよかった。

ふたりはその後ジャズの第一線で活動を続けたばかりか、バッハやモーツァルトも演奏するなど、クラシックに接近することも少なくなかった。つまりは、そういう素質を持っていたということなのだろう。
キースは以前から病気気味でたびたび活動を中断していたが、昨年秋には脳卒中による後遺症で音楽活動の復帰が困難と伝えられ、残念なことと思っていた。反射的に思ったのはチック・コリアのことで、最近の活動は知らないけれど、来日も多く、昨年はグラミー賞受賞。
かわらず元気なのではないかと思っていた。そこへ、突然の訃報である。以下引用。

チック・コリア氏、がんで死去 ジャズ界の巨匠
2021/2/12(金) 6:55配信 
【翻訳編集】 AFPBB News

【AFP=時事】米国のジャズ作曲家で、エレクトリックキーボード奏者の草分けであるチック・コリア(Chick Corea)氏が今月9日にがんで死去していたことが、フェイスブック(Facebook)の公式ページで発表された。79歳だった。
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公式ページの発表によると、コリア氏はまれな種類のがんを患っていたことがごく最近になって判明していた。発表文では、コリア氏が生前に残したメッセージも掲載された。

同氏は「私と旅を共にし、音楽の火を明るくともし続けることに協力してくれたすべての人に感謝したい。私の願いは、演奏や制作、パフォーマンスなどをしたいという気持ちがある人には、それをしてほしいということ。自分のためでなくとも、ほかの人々のために。世界にはもっとアーティストが必要だというだけでなく、単に本当に楽しいものなのだから」とつづっている。

「スペイン(Spain)」や「500マイルズ・ハイ(500 Miles High)」、「ラ・フィエスタ(La Fiesta)」といったジャズの名曲を世に送り出したコリア氏は、ハービー・ハンコック(Herbie Hancock)氏やキース・ジャレット(Keith Jarrett)氏と並んで20世紀を代表するピアニストの一人となった。米グラミー賞(Grammy Awards)受賞歴は計23回に上る。

引用終わり。
この人は、ラテンミュージック、クロスオーバー、エレクトリック・バンドなど、ジャズにとどまらない、というよりもジャズに多彩さを求め続けた人だったように思う。
ネコパパはジャズ好きになったといっても、それはせいぜい60年代初めころまでのいわゆる「モダン・ジャズ」だから、結局この人の音楽全体に、心底興味を持って聴き続けたというのではない。モダン・ジャズ・ピアニストとして聴いたのだ。しかしその「狭い窓口」だけから眺めてみても、やっぱりこの人は大変な人だった。
チック・コリアで一枚というと、やはりこれになる。
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チック・コリア(p)・ミロスラフ・ヴィトウス(b)・ロイ・ヘインズ(ds)
これこそ叙情と前衛が一体になったジャズ演奏。
水も滴るようなタッチから、不気味な内部奏法まで聴かせる多彩さだが、あくまでモダンジャズだ。そんなコリアに引けを取らないほど雄弁なヴィトウスのベース。「トリオ・ミュージック」というグループ名でこの3人は断続的に活動を続ける。ネコパパにとってチック・コリアとトリオ・ミュージックはほとんど同義かもしれない。
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かなり後に再編成されたときのライヴ。音楽は基本的に変わらず、しかし、熟した余裕を漂わせるものに変わった。
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これはバド・パウエルのトリビュート・ライヴで、コリアが結成したグループが総出演して熱演を展開。
もちろん「トリオ・ミュージック」も参加している。
 (5)
「ザ・トリオ」とあるが、これも同じ「トリオ・ミュージック」のメンバーによるライヴ盤。
あまり注目されていないみたいで、レコード店で見かけたのは一度きりだ。片隅にひっそりと置いてあるのを発見して入手した。
目立たない一枚だが、内容は、「ナウ・ヒー」や、ECM盤と同等のすばらしさだと思う。

「トリオ・ミュージック」以外で印象に残っているのは、ヴィヴラフォン奏者のゲイリー・バートンと二人で、壮大なデュオを展開するこの2枚組。
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チック・コリアというと、70年代後半一世を風靡したカモメのジャケットの「リターン・トゥ・フォーエバー」が有名だが、ネコパパは買わなかった。その代わりに聴いていたのは、これだった。「ライト・アズ・ア・フェザー」…気持ちの良い音楽がつづくけれど、やはりネコパパには、エレクトリック・ピアノは合わない…と思ったものだ。
 (3)

そして、出会いで印象的だったピアノ・ソロのLPもCDも、結局入手はせず、随分後になってこれを手に取ることになる。架蔵する唯一のピアノ・ソロのアルバム。
 (3)
どれも長いあいだ聴き返していないのに気づいた。
追悼の意味を込めて、あらためて聴いてみよう。
心よりご冥福をお祈りします。



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コメント

コメント(2)
 ネコパパさんが挙げなかったもので送りました。フリードリヒ・グルダとの共=競演盤。それから、ヴィブラホーンのライオネル・ハンプトンとの共=競演盤です。
 最近思います。かつて鬱陶しかった親たちが死に、代替わり。おらが世かと思ったら、いつの間にか僕らが支持したちょっと上のお兄さん世代が退場。そうして今度は下の世代がぼくらの世代に取って代わり、老害批判。
 ゆく川の流れは絶えないで、ぼくらを老害扱いするその下には、また若い世代が控えていて。森老害とかありましたが、みんなまた繋がって回り持ちの運命なんだなと。
 おもしろいもんですね。

蛙からの追悼盤は、

2021/02/18 URL 編集返信

yositaka
Re:
シュレーゲル雨蛙さん
先週は長くお世話になった知立のジャズ喫茶「グッドベイト」のマスターもなくなりました。69歳。「僕らが指示したちょっと上のお兄さん世代が退場」がますます実感されます。チック・コリアも、年齢はちと高いですが、その世代に入るかも。
>みんなまた繋がって回り持ちの運命
当然のことながら、自分が年を重ねてくると「おもしろい」と言っていいのか、困りますね。まあ、その実感は実はあまりないのです。

「コリア・グルダ・アーノンクール」というモーツァルトを演奏したテルデック盤LPは、随分と話題になり、私も買いましたが、アーノンクールのぎらつく伴奏が、おそらく個人的にダメで手放しました。二人がミュンヘンでやったピアノデュオ「ザ・ミーティング」と、ハンプトンとの共演盤「イン・コンサート」は未聴です。今度チェックしてみます。

yositaka

2021/02/19 URL 編集返信

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プロフィール

yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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