「明るくマニアック」でワルター特集がライヴ配信されました!

昨夜10月17日はちょっと興奮しました。指揮者・作曲家の徳岡直樹氏が案内を務めるYouTube番組が「ブルーノ・ワルター特集」、なんとまあ、190分超の生中継を配信されたのです。
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ネコパパは全部を視聴できず、聞けたのは後半の1時間そこそこかな。
でも、ワルター・ファンの一人として、こんな機会はめったにない、楽しい時間でした。チャットには、浩瀚なワルターサイトを主宰されている日本一のワルター・ファン、DANNOさんも参加されていましたし。

さて、徳岡氏のコレクションは、フルトヴェングラーの場合とは違い、ワルターに関しては、ほぼCDで占められているようですが、発売されたものは、海外盤・国内盤問わずほとんどカバーされているようで、流石です。
コロムビア交響楽団との晩年のステレオ録音を中心に、今も聴き継がれているワルターの録音遺産ですが、このステレオ・セッションは彼の音楽の一面を捉えたもので、1930年代から40年代の録音からは、必ずしも温厚・温和でやりすぎない指揮ぶりとは違う、火花の散るような熱演を繰り広げる場合も多かったことを強調、ワルターの音楽をより多面的に見る視点の重要さを指摘されていました。例に挙げられていたのは1940年代のメトロポリタン・ライヴ、ベートーヴェンの歌劇「フィデリオ」(1941年)や、ロスアンジェルス・フィルを指揮したドヴォルザークの「新世界交響曲」(1942年)など。ネコパパも全く同感です。
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そのうえで、ステレオセッション群の音質に関する再検討も、たいへん興味深いものでした。
まず、演奏団体のコロムビア交響楽団が、巷間言われているような「小編成」だったのかについての再検討。これについては、今回の新たな再発セットで公開されたセッション写真や資料をもとに、各曲に合わせた十分に人数を使った編成だったこと、とくにマーラーは思い切った大編成で、面白いのは交響曲第2番「復活」よりも、「大地の歌」の方がより多い人数を集めていたという指摘がされました。「小編成で、人数が大きく聞こえるのは録音のマジック」という根拠無き通念は必ずしも正確ではなかったことが明らかになったのです。また、マーラーの件では「大地の歌」初演者であるワルターの思い入れが反映しているのではないかとネコパパには思えました。
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ワルター録音における音質の検証も、耳を引きつけました。SP時代の復刻では、国内東芝盤の方がヨーロッパ盤のICONボックスよりもはるかに良いというご意見は大いに賛同。
また、徳岡氏がとりわけ愛聴してやまない、モーツァルトの交響曲第40番ト短調のステレオ盤は、発売された殆どすべてのCDをお持ちのようで、音質の変化にも敏感に反応されています。
吉田秀和も指摘している「低音の強調」については、実際の演奏そのものと、マスタリング上の操作の二つが原因としてあったのでは、という見解を示されました。中でも、ディスク再生時の「ブーンとハウリングが聞こえるほどの、中低音の増強」については、新規発売のCD解説が指摘する「当時一般の再生機器に合わせた加工」であると認め、今回の新マスタリングの方針を一定程度評価されておられるようです。
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徳岡氏はステレオ盤のベートーヴェン交響曲全集についても、同様の愛着心をお持ちのようで、画面上にずらずらと既発売盤を並べられる様子をみて「ここまでやるか!」と驚嘆しましたが、ネコパパも人のことは言えません。
それだけ、発売ごとの音の変化が気になる、音質の不安定な商品でもあるわけです。
このステレオ盤全集の中では「田園」に評価が集中する傾向が昔からありました。それを牽制する意図なのか、この「田園」の演奏はそれほどでもない、ワルターならもっと素晴らしい演奏ができたはずた、と従来の評価を相対化する主張を徳岡氏は展開されています。
氏の「第40番」への執着と同じようなものを、ネコパパは「田園」については持っているので、このあたりは、あまり冷静には聴けませんでした。1936年のウィーン・フィル盤の方が、まだいいんじゃないでしょうかという言い方や、1977年のベーム来日公演での演奏を引き合いに出されたりもしましたが、うーん、そういう比較は、氏自身が日頃の動画で戒めておられることじゃないのかな、と思ったりもしましたが…ワルターのほかの交響曲演奏にも目を向けて欲しいという思いから来るレトリックとも思われるので、まあ、いいでしょう。
今後は音の編集に問題のある録音、例えば二箇所で録音されたものがミックスされたという「第九」や、一部擬似ステレオが混合されているというマーラーの「復活」の編集痕の検討にも取り組みたいとのこと。大いに期待されるところです。


このライヴ中継はいつまで公開されるのかな?未聴部分は早めに聞いておかなくちゃ。



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コメント

コメント(2)
マニアック! 
いや、ついていけない、ついていきたいけど。脱帽です。
ユーチューブ、聴くか聴かぬか。それが問題です。

しかし、やはり音はかなり変わる、弄ることができるのですね。

レコードでは物理的、素材(マスターテープ、テープデッキ、アンプ、カッティングマシン、ビニールの質や量等々)的要素も大きいのに対して、CDは人為(リマスターするエンジニア)的要素がレコードのそれよりも大きいかな。どうなんでしょう。いずれにしてもレコードもCDもライヴそのものではない。

ワルターじしんや録音現場が実際にどうだったかは後方に退き、作り手や聴き手がよいと思う音が前面にせりだしているのならば、ワルターがたとえばベルリンのワインヤードで演奏しているような音質がよいCDになっているかも。
もちろんレコードも日本盤の古いのは、日比谷公会堂の音が音決めの基準だったかも。ウィーンへ行きたしと思へども、ウィーンはあまりに遠し、という時代の日本でクラシックのレコード作りは、難行苦行だったことでしょう。
CD時代には、それがかなりよくなったのではないのかな。
ネコパパさん、どうなのでしょう?

シュレーゲル雨蛙

2020/10/19 URL 編集返信

yositaka
Re:マニアック!
シュレーゲル雨蛙さん
音質の好みは人それぞれですので、話すのが難しい。
ワルターCDのマスタリングは1回目がオリジナルプロデューサーのジョン・マックルーア、2回目がズービン・メータの甥のベジュン・メータ、そして3回目が今度出たアンドレアス・マイヤーの手になるもの。他にも日本独自のものがあり、それぞれかなり違いがあります。どれも各エンジニアが自己の耳で最善を尽くしているのでしょうが、その価値観が違うんですね。
今回のマイアー盤は、マスター音質の加工を極力減らす方針で作られているとのことで、ダイナミックレンジが広大、高域も低域もぐんと伸びた印象で、ボリューム調整が難しいし、相当なハイエンド機でないと音が出し切れない気もします。

3年ほど前にワルター「巨人」の「サブマスター」と言われる2トラック38センチオープンリールテープを聞かせてもらったことがあるんですが、ちょっと次元の違うリアル感があって、LPにもCDにも入りきれない音と感じました。マイアー盤はそれに肉薄しようとしているみたいです。問題は、うちの家電オーディオごときでは身の丈に合っていない気がすること。長年聴き慣れたものが耳に馴染むということもあります。ということで、今のところ判断は保留です。

yositaka

2020/10/19 URL 編集返信

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プロフィール

yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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