オッテルロー/ウィーン交響楽団の「田園」~尻上がりに高まる熱気

ベートーヴェン 交響曲第6番ヘ長調Op68「田園」
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ウィレム・ヴァン・オッテルロー指揮
ウィーン交響楽団
韓ARTIS AT025(CD) 原盤 欄PHILIPS MONO 
録音:1953年2月22~24日
録音会場:ウィーン

第1楽章 11:27
テンポは普通。第1テーマしっかりと踏みしめるように奏される。
提示部の流れは自然で、木管は鮮明。提示部の反復で、本腰を入れたようにノリが良くなり、特にチェロとコントラバスの強さが目立ってきて心が弾む。展開部では、その強い低音を土台に、立体的な構築を試みる。再現部ではテーマが金管の強奏と重なり、豪快に鳴らされ、音圧を増してくる。尻上がりに熱が入ってくる、ライヴ感のある演奏で、それがそのまま「田舎についたときの愉快な気分」の高揚と重なり合う。

第2楽章 12:54
心持ち遅めの開始。やがて、この楽章にはちょっと異質に思えるような、「ずんずん」とリズムを刻む低弦が、心臓の鼓動のように効いてくる。低弦ピチカートも強い。一方で、ヴァイオリンはやや抑制気味。聴きものの木管アンサンブルは大変鮮明で聴き応え十分だ。取れ分けクラリネットとファゴットの音色が美しい。コーダの鳥の歌も音を弱めず、くっきりと吹かせるが、フルートの音量が弱めなのは少し惜しい。

第3楽章 5:26
ちょこまかとした出だしから元気に進むスケルツォ。楽士の合奏はリズムの強いホルンが生きる。躍動のトリオはインテンポであっさり。もう少しリズムを強めても…と思わせるが、反復ではどの部分も勢いを増している。「反復するとノリが良くなる」という演奏法は、オッテルローの特徴かも知れない。

第4楽章 3:26
入りの弦楽の刻みが克明。すぐさまチェロとコントラバスの勢いある響きを土台に嵐の音楽が展開する。ただしティンパニは抑制気味で、そのため最高潮の盛り上げもフォルティッシモの枠内を超えることはない。ただし、最後は、ティンパニが重い一撃を効かせる。

第5楽章 9:23
牧歌のテーマはあっさりと提示される。ずっと抑制気味だったフルートが、ここでは鮮明に鳴る。提示部は淡白すぎるほどで、そのせいか音の濁りもちょっと気になる。寄せては返す中間部に入ると、次第に熱を帯び、音圧が高まってくるが、いまひとつ、決め所で決まっていない。トリル変奏では弦のピチカートの音が立ち、大変美しい。その後もさらりとした流れが続き、コーダの祈りの音楽でようやくテンポを落として感情移入するものの、結尾の和音はいともあっさりとしている。

■俊敏さや疾走感の魅力はあるが…

オッテルローは一筋縄ではいかない。
チェリスト出身だからなのか、低弦がいつも強めでどっしりとしているのは安定感があり、スピード狂ドライバーのせいなのか、ギヤの切り替えが早く、必ずしもテンポが速いわけではないのに、俊敏さや疾走感を感じさせる。
そして、何よりの魅力は穏やかな曲想での、楽器の音にこめられた豊かな表情の細やかさだ。いつも細部がくっきりしていて、音の立ち上がりがよく、奏者たちにイキの良い演奏を求めている。
今回聴いたアーティスの24枚組CDは、そんなオッテルローの魅力の缶詰と言えるだろう。
たた、どの録音も粒ぞろいというわけにはいかない。彼は、どちらかといえば、時々の調子やノリがはっきり演奏に出てしまう性格らしく、出来不出来にはムラがあるように感じられる。この「田園」も、惜しいことだが、彼のベストとは言えないように思う。
第1楽章の後半や第2楽章は、比較的個性がよく出ているが、第3楽章以降は、もっとできるのでは、と思わせるところが多い。特に第4楽章から終わりにかけては、あまり生彩が感じられず、録音の古さも気になってしまう。オーケストラが手兵のハーグ・レシデンティではなく、ウィーン交響楽団であることも、なにか関係があるのかもしれない。

オッテルローが無念の交通事故死を遂げる1か月前の1978年6月、彼ははじめてのベートーヴェン交響曲全集の一環として「田園」を録音した。
オーケストラは当時首席指揮者を務めていたシドニー交響楽団。全集録音は5曲で途絶、オーストラリアではCD化されたものの、残念ながら世界的な販売はないままに、廃盤になっているようだ。ここに絶好調のオッテルローの演奏が刻み込まれているとしたら、どうだろう。ぜひ、聴いてみたいものである。


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コメント

コメント(2)
まろのSP日記
”まろのSP日記”がNHKラジオ第1で放送されました。
私はオンタイムでは番組終わりの20分しか聴けませんでしたが聴き逃し配信があります。
https://www.nhk.or.jp/radio/ondemand/detail.html?p=1716_01
2020年9月29日(火) 午前11:50配信終了です。

不二家憩希

2020/09/22 URL 編集返信

yositaka
Re:まろのSP日記
不二家憩希さん
ありがとうございます。
またやられました!!
そろそろ放送されるだろうと、番組ホームページは時々チェックしていたんですが、今も更新されていません。
昨年12月の放送予告で停止したままです。せっかく昨年意見のメールをだしたというのに。AMに変わったから、出さなくていいなんてことがあるんでしょうか。週一度、FM番組を確認するだけで手一杯です。
けれども聞き逃し配信があったので、本当に助かりました!
さっそく「らじれこ」を使って録音しました。じっくり拝聴したいと思います。

yositaka

2020/09/22 URL 編集返信

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プロフィール

yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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