タイマー録音しておいた番組のなかに「クラシックカフェ」が入っていた。
NHK-FMの定例クラシック番組で、エアチェックなどめったにしないものだが、ネコパパが図書館で解説担当している「音楽を楽しむ会・ベートーヴェン特集」の参考になればと思って予約したのだろう。
車の中でだらっと流していたら、たいそうマニアックな番組だった。ベートーヴェンの交響曲第5番、俗にいう「運命」の聴き比べなのだ。
後でホームページで確認してみたら、8月13日放送とあった。
プログラムはこうである。
▽ベートーベン特集(6)
粕谷紘世
「交響曲 第5番 ハ短調 作品67 から 第1楽章」
ベートーベン作曲、リスト編曲
(6分00秒)
(ピアノ)グレン・グールド
<CBS/SONY 28DC5266>
「交響曲 第5番 ハ短調 作品67」 ベートーベン作曲
(31分15秒)
管弦楽)ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(指揮)ヘルベルト・フォン・カラヤン
<ポリドール F26G29021>
「交響曲 第5番 ハ短調 作品67 から 第1楽章の冒頭」
ベートーベン作曲
(0分35秒)
(管弦楽)ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
(指揮)ウィルヘルム・フルトヴェングラー
<EMI CC30-3361/63>
「交響曲 第5番 ハ短調 作品67 から 第1楽章の冒頭」
ベートーベン作曲
(0分40秒)
(管弦楽)コロンビア交響楽団
(指揮)ブルーノ・ワルター
<CBS/SONY 35DC78>
「交響曲 第5番 ハ短調 作品67 から 第1楽章の冒頭」
ベートーベン作曲
(0分33秒)
(管弦楽)フィルハーモニア管弦楽団
(指揮)オットー・クレンペラー
<EMI CC33-3244>
「交響曲 第5番 ハ短調 作品67 から 第1楽章の冒頭」
ベートーベン作曲
(0分30秒)
(管弦楽)ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
(指揮)レオポルド・ストコフスキー
<ポリグラム POCL-90011>
「交響曲 第5番 ハ短調 作品67 から 第1楽章の冒頭」
ベートーベン作曲
(0分30秒)
(管弦楽)ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
(指揮)カルロス・クライバー
<ユニバーサル UCCG-51003>
「交響曲 第5番 ハ短調 作品67 から 第1楽章の冒頭」
ベートーベン作曲
(0分30秒)
(管弦楽)サイトウ・キネン・オーケストラ
(指揮)小澤征爾
<ユニバーサル UCCP-1047>
「交響曲 第5番 ハ短調 作品67 から 第1楽章の冒頭」
ベートーベン作曲
(0分25秒)
(管弦楽)ドイツ・カンマーフィルハーモニー管弦楽団
(指揮)パーヴォ・ヤルヴィ
<BMGジャパン BVCC-34166>
「交響曲 第5番 ハ短調 作品67 から 第1楽章」
ベートーベン作曲
(7分47秒)
(管弦楽)ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(指揮)ウィルヘルム・フルトヴェングラー
<ポリドール POCG-9494>
「交響曲 第5番 ハ短調 作品67 から 第4楽章」
ベートーベン作曲
(9分40秒)
(管弦楽)ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
(指揮)レオポルド・ストコフスキー
<ポリグラム POCL-90011>
「交響曲 第5番 ハ短調 作品67」 ベートーベン作曲
(30分35秒)
(管弦楽)ムジカエテルナ
(指揮)テオドール・クルレンツィス
いやいやいや、これはなかなかの選曲だ。
さきの「チコちゃんに叱られる」といい、8Kリマスターのドキュメント映像といい、NHKのクラシック担当ディレクターの顔が見たくなってしまう。
最初がグールドのピアノ版、最後が話題のクルレンティス盤で、途中は20世紀のレジェンダリーな演奏が、部分的ながら「これでもか」というくらいに立て続けに流される。
フルトヴェングラーなど、1947年盤と1954年盤の二種類が使われるという念の入れよう。
また、かなりのクラシックファンでも、あまり愛聴しているとは思えない、ストコフスキー指揮ロンドン・フィル盤が二度にわたって登場する。
正直ネコパパも、これは真剣に聞いたことがなかったし、今回聴いてみても、とくにこの指揮者らしい個性的演奏というわけでもないので、ディレクター、なぜこれを?と思ってしまった。
クルレンツィス盤については別の記事でも触れているが、今この曲を聴くとしたら、もっとも刺戟的な演奏なのは間違いない。
立て続けに流された冒頭部分では、意外にみんな、出だしは苦戦していることが感じられた。パーヴォ、小澤、クレンペラー、どこかおずおずと開始される。最も自信満々に聞こえるのは、カラヤンとワルターだったのが意外だ。
フルトヴェングラーで驚いたのは、例の1947年の二日目の演奏(グラモフォン盤)の音質がずいぶんきれいに整った、艶のある音に聞こえたことだ。POCG-9494というのは、昔のDGGのジャケットデザインをあしらったもので、1994年発売のもの。オリジナル・イメージビット・マッピング(OIBM)というリマスター技術を使っていて、ネコパパの架蔵盤CDのPOCG2131(1990年発売)とはだいぶ音が違うと言われているが、ラジオ音質でもこんなにわかるのか。
他の演奏も、ちょいとレコード番号を検索してみると、使用している盤がバラバラだ。
ワルターやクレンペラーは1980年代初頭に発売された、古い国内盤CDを使っているし、奥様の絵画をあしらったカラヤンも、かなり昔に出た盤だ。一方で、クライバーは2016年発売の最新リマスターSHM-CD盤だったりする。
部分的な使用ということもあって、上記フルトヴェングラー以外は、特に音の違いが気になるものはなかったが、それにしてもNHKのレコード倉庫は、いったいどんなふうに整理されているのだろう?
こんな具合に、色々と楽しめる番組だった。こういうのを、もっとやってほしい。次はぜひ「田園」を、なんて、無理だろうなあ。
- 関連記事
-
スポンサーサイト
コメント
フルトヴェングラーで驚いたのは、例の1947年の二日目の演奏(グラモフォン盤)の音質がずいぶんきれいに整った、艶のある音に聞こえたことだ。>聴いてみたいです。
そして1954年盤-1947年POCG-9494とネコパパさん架蔵盤のPOCG2131-録音ピッチに問題がある1943年6.27-30BPOの聴き比べとピッチ補正をしてみたいですね。
ネコパパさんリクエストの「田園」は、「クラシックカフェ」が厳しい指摘で・・・です。
チャラン
2020/08/25 URL 編集返信昔FM愛知でCBSソニー提供の「マスターワークスコンサート」という番組があって、そのCMで「運命」の冒頭をずらっと並べて聞かせるものがありました。中学生のネコパパはずいぶん刺激されたものですが、今回の「クラシックカフェ」はその拡大版みたいなものです。
ベートーヴェン生誕250年にコロナ騒ぎも加わって、番組編成にマニアックさが入り込む隙ができたということでしょう。たまたま聴けたのはラッキーでした。
フルトヴェングラーの「運命」1947年DG盤(東独ETERNAのテープ使用)はよく話題になっていて、編集があるとかないとか、独盤LPは実は疑似ステとか、いろいろ言われています。
個人的には、指揮者の個性が全開した快演だと思います。戦中の放送録音である1943年盤に比べて、音はずっと明るいですね。43年盤の音がやや重いのは、ピッチの低いせいなのかもしれませんが、その判断は難しいです。
yositaka
2020/08/25 URL 編集返信NHK所蔵のCDがたまたまそれだったか、ディレクターの私物を使ったか、でしょうね。
NHKはごく普通に私物を放送に使います。
私もこの番組は聞きました。
面白い企画だとは思いましたが、正直途中で飽きてきました(笑)
聴き比べということでしょうが、要は同じ楽譜で同じ曲の部分の繰り返しですから。
「違うから何なんだ!?」という気にもなってきます。
そりゃ、それぞれの指揮者は(意識的に、無意識に)他と違うように指揮しているのですから違って当然です。
不二家憩希
2020/08/25 URL 編集返信いやあ、当然、飽きますよね。普通は。
それに、この番組の時間帯は、多くのリスナーはBGMとして聴いているでしょうから、同じ曲がバンバンかかったら「なんじゃこりゃ」と感じるはずです。こうした、一部のファンが狂喜して、そうでない人は呆れているようなものをマニアックというんですね。
>NHKはごく普通に私物を放送に使います。
そうなんですか。まあ、著作権料は支払っているんですから、同じ音源なら何を使ってもいいですよね。
SPレコードの番組なんか、ほとんど私物のようですし。ある番組で「割れていてかけられません」と言っていたものが、数日後には別の番組で流れたりしています。
ただ、番組中ではいっさいアナウンスされないレコード番号が、番組表にはなぜかきちんと書いてある。これにはなにか理由があるのでしょうか。
そういえば、昔はNHKでも、「この時間に使用したレコードは『グラモフォン』でした」とレーベル名(会社名ではなく)を必ずアナウンスしていた記憶があるのですが、あれはいつからなくなったのでしょうか。
yositaka
2020/08/25 URL 編集返信NHKの放送現場はネコパパさんが想像されているよりもずっと雑・アバウト・大雑把です。スタジオ内は驚くほど綺麗ですが(笑)
レーベル名のアナウンスがされなくなったことも上記と同じような理由でやらなくなったと推測されます。
またNHKでは”余計なことは言わずに元の放送原稿をできるだけ簡潔にする”という方針があるようです。
時に収録中に偉い人が見に来てチェックして「ここ削れ・削ったら?」みたいなことを指摘したりします。
不二家憩希
2020/08/25 URL 編集返信なるほど、つまりこういうわけですね。
本来、著作権のあるものは表示しなければならない。でも、実際に気にするリスナーはいないので、レコード会社の申し入れによって放送では省き、表示責任は番組表に表示することで果たしたこととする。昔の書籍にあった著者検印の省略と同じ理解です。
NHKでもっともクリーンな場所がスタジオで、あとは混沌の世界…なんだかハレとケの関係みたいです。まあ、どんな職業でも、それはそうなんでしょう。
「余分な言葉は言わず、削れるだけ削る」は、言葉に関する普遍的な原則ですが、そこからこぼれるものに「味わい」や「本音」があったりする。それを許容する器もまた大事にしたいものです。
いつもながら、不二家のコメントは勉強になります。
yositaka
2020/08/25 URL 編集返信