これぞ、平均時速180キロ、スピード狂指揮者オッテルローの音楽?

例の17cm盤「アルルの女」のお話がきっかけで、つい衝動買いしてしまった、このCDボックスセットが到着。
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「アルルの女」第1・第2組曲は、広告のデータとは違って最後の一枚に収録されていて、録音データはunknownとされているので、これはちょっとアヤシイと思いましたが、高音歪もない、まずまず良好なステレオ音質で安心しました。
これなら演奏がよくわかる。
当録音は、1997年に蘭PHILIPSの DUTCHIE MASTER SERIESで一度CD化されただけなので、おそらくは、その時の音源の焼き直しでしょう。
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1959年当時のDGG録音は癖がなく、リマスタリングでいじった感じもありません。
このボックスの音源の大半はPHILIPS原盤で、DGGはこの「アルル」と、ハイドンの交響曲第45番、第55番の2曲。
残念ながら、12インチ盤に含まれていた「カルメン組曲」は収録されていません。
あと、通販会社であった米Concert Hall Society(CHS)の音源も少し。
チャイコフスキー「眠りの森の美女」マーラー:交響曲第1番、リムスキー・コルサコフ「シェエラザード」など。
これらの中でオーケストラが「ウィーン祝祭管弦楽団」となっているものは、HMVによればウィーン交響楽団の変名とのこと。この団体、米Voxでは「プロ・ムジカ管弦楽団」の名でも録音。こういう覆面仕事が結構多い。

PHILIPS録音はどうか、
マーラーの第4フィナーレを聞いてみました。
1956年のモノラルですが、音はくっきりとして精度が高い。
独唱者テレサ・シュティッヒ=ランダルの、独特のノンヴィヴラートによる歌唱も、この曲にはお似合いです。オッテルローの指揮は、なだらかな主部と動的な中間部とで、はっきりコントラストを付け、後者では音域を広くとり、奏者の演奏にも弓をはね上げるような勢いがあります。抑えたロマンティシズムと熱血ぶりのバランスが絶妙。

PHILIPSとの比較する意味で、CHS音源の、マーラー1番を聞いてみました。そしたら、冒頭からスクラッチノイズが交じるビリツキ音で、どうも「LP板起こし」っぽい。
…やっぱりな。
年譜によると、PHILIPSと並行して1957年頃おこなわれたCHS録音は、予算の関係で、レジデンティ管を起用したオランダ収録も、PHILIPSのようにコンセルトヘボウを使わず、ハーグのホールで行ったとのこと。その予算不足は、音自体の平板さにもあらわれているかもしれません。
ただ、演奏自体は、オーソドックスながら緻密に眼が行き届き、「アルルの女」にも聞かれた、穏やかな部分での血の通った管楽パートの絡みが美しい。

続いて、オッテルローを代表する演奏と言われる、1951年PHILIPS録音、ベルリン・フィルとの「幻想交響曲」を聞いてみました。
出だしからもう、凄まじく踏み込みの深い低弦と、懐の深い演奏ぶりにたちまちひきこまれてしまいます。第1楽章で、主部に入るや一気に加速する緊迫感も、只事ではありません。
録音にも気合が入っていますね。このセットでは最も古い録音なのに、ちょっとレベルが違います。

ベートーヴェンも聞いてみましょう。
交響曲第4番。これはPHILIPS録音なのに、冒頭からざらざらと荒れ気味で、意外と音質は良くない。けれど演奏は凄い。明るい響き、強靭な音でぐんぐん飛ばす、ソリッドなもの。
オッテルローって、こんな指揮者だったのか!これぞまさしく、スピード狂カーマニアの音楽。
ところが、先に進むにつれてだんだんと穏やかになっていくんですね。
次に収録の「第5」は、あわてず騒がす、じっくり丁寧な歩みで進め、フィナーレでぐっと盛り上げます。

いま、これを書きながらグリーグの「ペール・ギュント」を聞いているところです。
1950年ながらオンマイクの生々しい録音で、奏者の息遣いや指揮者の身のこなしが伝わるような臨場感。これはPHILIPSが発足した直後の、レーベル初録音だったそうです。
ボックスにも宣伝にも記載がありませんが「ソルヴェイグの歌」は独唱付きで、歌手はエルナ・スポーレンベルク。
面白くなってきました。

オッテルローは、ベートーヴェン、ブラームスの交響曲全集を残していません。
レパートリーも、ちょっと、とりとめない感じもします。現在メジャーな人気がないのは、やはりその録音レパートリーのせいなのかもしれない。
ですが、こうして摘み聴きしただけでも、侮りがたい個性派の音楽が息づいています。

さて、そんなオッテルローの「田園」は?
それはまた、稿を改めて…

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コメント

コメント(6)
音源は少しだけ架蔵していますが・・・
こんばんは。HMVのオッテルローの紹介と年譜は大変詳しい資料ですね。
残念ながらオッテルローの音源は、数枚程度で、ほとんど持っていません。・・・

コンサートホール盤のCD(リサイクルショップで1枚100円)を数枚持っていますが、この中でシューマンの交響曲第4番と、ベートーヴェンの交響曲第8番があるのですがハーグ・フィルハーモニックOと記載されていますが、これはハーグ・レジデンティ管弦楽団のことでしょうか?

また、ベートーヴェン交響曲第7番は、コンサートホール盤ではウィーン・フェスティバル・オーケストラとの表記・・・これはウィーン交響楽団かな?

ああらためてチョットだけ、つまみ聴きをしてみましたが・・・録音が悪いです。(コンサートホール盤は以前から音の評判は悪かったのですが・・)
ベートーヴェン・・・あまり真剣には聴かなかったのですが、特徴のある演奏とは思いませんでしたが・・・

HIROちゃん

2020/07/29 URL 編集返信

Re:音源は少しだけ架蔵していますが・・・
HIROちゃんさん
ハーグ・レジデンティ管弦楽団とハーグ・フィルは同じ楽団だと思います。
当セットではすべてレジディティ管弦楽団と表記されています。
レジデンツは政府所在地、いわば首都の意味で、ハーグ首都管弦楽団。「都響」ですね。
それがなぜ、いつから、いつまでハーグ・フィルと表記されたのか、長らく疑問に思っています。英語・オランダ語のウィキをちょっと検索してみましたが、わかりませんでした。
ウィーン・フェスティバル・オーケストラはウィーン交響楽団の変名とのことです。プロムジカ管弦楽団といい、覆面仕事が目立つのは、ウィーン・フィルと比較して、資金に恵まれていなかったからかもしれません。

演奏は、1950年代前半のものがとても精力的で勢いに満ち、録音もモノラルながら生々しくて驚いているところです。例えばハイドンは最初の2曲が1959年のDG録音、3曲目の「オックスフォード」が1950年のフィリップス録音。端正で緻密なはじめの2曲に対して、3曲目は見違えるような怒涛の力演。ふたつの「幻想」も同様です。
しかしコンサートホール録音は概して録音も演奏もぱっとしない。

ノスタルジーで衝動買いしたもので、大きな期待もなく「細部に凝った穏健な演奏」を予想していただけに、この事態にはちょっと驚いています。

yositaka

2020/07/29 URL 編集返信

Re:Re:音源は少しだけ架蔵していますが・・・
演奏楽団について、いろいろありがとうございます。
「幻想」の演奏は良いとのことですが・・・
どうもこの曲は苦手意識が強くほとんど聴きません。
ミュンシュとクリュイタンス(どちらも2種類)があればいいな・・と思っていて数枚だけの架蔵です。

HIROちゃん

2020/07/29 URL 編集返信

Re:Re:Re:音源は少しだけ架蔵していますが・・・
HIROちゃんさん

今夜は1952年録音のベートーヴェンの第九を聞いてみました。
これは、LP録音として最初に録音された第九だそうです。

いやはや…
これまでに聞いたことのない個性的演奏に、すっかり嵌ってしまいました。
細部まで音を読み切り、普通に流す部分は一瞬たりともなく、内声部も存分に喋らせる。息の長い第3楽章ではオッテルロー自身が歌いながら指揮している様がわかります。そしてフィナーレは冒頭一音だけを強く、あとは弱音に抑えるという離れ業で開始、叫ばず、なだらかに膨らませていく独特の流れが、なんとも知的な輝きに満ちて魅力的です。

オッテルローとは何者なのか?
只者ではない、という確信が湧いてきました。

yositaka

2020/07/29 URL 編集返信

ハマっておられますね^^。
オッテルロー・ボックス、“嵌られた”ようですね^^。

単発でも出た『幻想』やフランクの交響曲などは興味がありますが、そういう「興味」で求めだすと、同じモノ期のベルリン・フィルの『幻想』ではマルケヴィッチのもあり、すぐ収拾がつかなくなりそうで、前に書きましたとおり、私はCHS録音のマガロフとの協演2枚だけにとどめておくことにします;;。
ちなみに、この2点は、まあまあの音だと思います。

> いつから、いつまでハーグ・フィルと表記されたのか、長らく疑問に思っています。
オランダ語で「Residentie Orkest」というのが、外国へのセールスではわかりにくいので、「Hague Philharmonic Orchestra」としたような‥‥もしかすると、PHILIPSあたりのマーケティングでこう呼称し、現在まで異名として並行的に使っている、のかもしれない、とか…。

へうたむ

2020/07/31 URL 編集返信

yositaka
Re:ハマっておられますね^^。
へうたむさん
英語版ウィキでもハーグ・フィルハーモニーと同一とは書いてありますが、どんな経緯でこの名称が使われだしたかは不明なのです。多くのオーケストラが、「フィルハーモニー」「交響楽団」「管弦楽団」を使い分けて別個の存在であることを主張しているのに比べると、ちょっとイージーかなとも思います。

>“嵌られた”ようですね

余人に代えがたい個性を聴きとってしまうと、やはりわくわくします。出会う機会がありましたら、ちょっと気を付けてお聴きになってください。もっとも、ムラはあります。これだけまとめて聴く機会があってはじめて気づいたくらいですから。

yositaka

2020/07/31 URL 編集返信

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プロフィール

yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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