ライナーの「田園」~楷書風に秘められた雄弁さ

ベートーヴェン 交響曲第6番ヘ長調Op68「田園」

フリッツ・ライナー指揮
シカゴ交響楽団
653.jpg
日JVC  JMCXR0020(原盤米RCA)  
録音:1961年4月4.8.10日
録音会場:シカゴ・オーケストラ・ホール
プロデューサー:リチャード・ムーア
エンジニア:ルイス・レイトン

第1楽章 10:16
一つ一つの音符を噛み締めるように、きっちりとした第1テーマの開始。
リズムは立ち、しかし力まずすっきりと。第2テーマはスタッカート気味に弾ませる。一つのフレーズの始まりから終わりまで、定規で線を引くような楷書の語法で演奏される「田園」である。弦は各セクションがくっきり分離して浮かび上がり、少しの濁りもない。管楽器ではオーボエがとびきり、鮮明。展開部も明晰だ。音が立ったコントラバスの刻み。いままで埋もれていた裏の音が耳に飛び込んでくる快感。キレはあっても硬さはない、巧みなバランス感覚。情に流されず、肩で風を切って進むような音楽。一瞬も気が抜けない。

第2楽章 14:06
テンポは遅め。じっくり丁寧に、そして、息長く奏でられるフレーズは、たびたび、終わりに行くに従ってリタルダントする。噛んで含めるような進行で、隅々にまで神経を行き渡らせる。
全体の音作りは清冽というよりも、重く落ち着いた、ややほの暗いものだ。川の流れの中に「悲しみ」が見える。聞きものの管楽器のソロやアンサンブルも、腰の重い、沈みがちな演奏に終始する。チェロの支えでファゴットがソロを取る部分など、しんみりとしてしまう。
小鳥の歌の直前でも、大きくリタルダンド。静けさの森に響く憂いを含んだ鳥の声。小川のほとりに静けさが満ちてくる。

第3楽章 3:20
最初はゆっくり、主部は早くなるが、重い音のままでいっぱいに鳴り響くオーケストラの威力がすごい。落ち着き払った村人の三重奏には、わずかな音の外しや乱れもない。つまり「遊び」がない。トリオもインテンポで突き進む。
弓を返し、弦に叩きつける奏者の気迫がそのまま捉えられたような録音にも圧倒される。

第4楽章 3:53
これぞシカゴ、とでも言うようなフォルティッシモの炸裂。
重厚な力が満ち溢れる「嵐」。左側から飛び出してくるような第2ヴァイオリンの相の手など、ゾクッとさせられるような鮮やかさだ。単純なフルパワーではなく、各パートがここぞというところで突出してくる。神業のようなコントロール力である。

第5楽章 8:59
何が起こったのだろう。
こんなにきりっと美しい牧歌のテーマは、聴いたことがない。早めで音が立つのはいかにもライナーだが、凛として笑みを浮かべるような明るさがある。思い切りのフォルテで盛り上げたあと、テンポは一気に加速。「きっちり」を基調にした音楽から一転して、躍動のドラマが始まる。第2ヴァイオリンとヴィオラの強調が、新鮮な響きを作り出す。第4楽章までのノンレガート、楷書的な音出しとは対照的に、横に繋がり、どこまでもしなやか。悲しみも畏れもなぎ払って、一切の停滞なく湧き上がる喜び。初めてこの曲を聴くような気持ちにさせられる。
ライナーという人は「ベストのポケットの幅しか指揮棒を動かさない」と言われるくらい切り詰めた小さな動きで指揮をし、ここぞというところだけ大振りに転じたといわれるが、「ここぞの大ぶり」は、第4楽章ではなく、フィナーレで見せたのではないかという気がしてくる。
クライマックスでは怒涛の大見得を切り、大きくテンポを落として終結する。

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■強面指揮者が聴かせる、魂の解放

ハンガリー生まれのアメリカの指揮者フリッツ・ライナー。
バルトークの友人で「弦楽器・打楽器とチェレスタのための音楽」や「オーケストラのための協奏曲」の録音で定評があり、ネコパパもそれらは愛聴してきた。けれどベートーヴェンの交響曲全集は録音しておらず、一般的なイメージは強面の専制君主、時には「弾丸ライナー」なんて書かれるくらいで、硬く、冷たい音楽の人と思いがちだった。
それが先日、徳岡直樹氏のチャンネルで「田園」が好評価されていたのを耳にして、改めて聞いてみた。
正直、後半をよく聞いていなかったのである。
前半の二つの楽章は決して固くはないものの、でも、もう少し情感がほしいなと思っていて、それが全体の印象として定着してしまった。
実はこの演奏、後半がすごかったのだ。
とりわけ第4楽章と第5楽章の対比。これほどに雄弁でドラマチックな演奏だったとは。
特に後者での、タガは決して外れていないが、抑えていた感情を一気に解放する高揚感は見事である。

話は変わるが、このジャケット、RCAがステレオ初期にトレードマークにしていた「リビング・ステレオ」の表示がない。エンジニアはプロジェクトの当初から携わってきたルイス・レイトンだが、あの生々しくも鮮やかな「リビング・ステレオ」のサウンドを期待すると、この「田園」はずいぶんすっきりとした、大人しい印象を受ける。特に前半は「ツァラトゥストラ」や「展覧会の絵」のような芸術的なまでの鮮度か感じられない。
ある人は、60年代「ダイナグローブ」を標榜して以後のRCAはシステムも更新され、すっかり「普通のステレオ録音」になってしまったという。この「田園」、第3、第4楽章には「リビング・ステレオ」の残滓が確かに聞き取れるのだが、実際はどうなのだろうか。皆様のご意見もお聞きしたいものである。

参考までに…当盤に添付されていたデータ・カード。
img212.jpgimg213.jpg

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コメント

コメント(25)
新たなる「リビング・ステレオ」
ネコパパ様、こんばんは。
いつも大変お世話になっております。

豊富な情報と知識、ネコパパ様のそれは生きていて、他の人にも豊かな感性への広がりを与えてくれると感謝致してます。

音楽を語れば、その文章は深みを持ち、毎回新しい発見があり、そこにはネコパパ様の素顔が見えるので共鳴する、こうして「リビング・ステレオ」というとても興味深い宝を今回も見つける事が出来ました。
素敵な「田園」をありがとうございます。

よしな

2020/07/10 URL 編集返信

yositaka
Re:新たなる「リビング・ステレオ」
よしな様
過分なお言葉をいただき、痛み入ります。やる気が出ます!

「リビング・ステレオ」の文字がRCAのクラシック盤に踊っていたのは1955年から1959年ころまででしょうか。
私がクラシックを聴き始めた1969年頃には、表示はもう消え失せていて、RCAは詰め込み盤の多い、音質がパッとしないものという印象しかありませんでした。

ところがCD時代に入って、実は同社は、プロデューサーのジョン・ファイファー主導のもと、英DECCAと協力し、最も先進的なハイファイ録音に挑んでしたことを知ったわけです。ところが、その栄光はわずか数年。機材の更新、名録音技師レイトンの事故死と不運が重なり、伝説のレーベルの名声には陰りが見え始めました。

音楽を楽しむのに、ついこんな「事情」を考えてしまうのは、もしかしたら「余計なこと」なのかもしれません。しかし、それが今ここで鳴っている音楽に、厚みと深み、そして物語を加えてくれるのもまた事実なのです。余計なことを知りたくなる誘惑には、なかなか勝てません。

yositaka

2020/07/10 URL 編集返信

ほほぉ、RCAのLiving Stereoですか
RCAがLiving StereoからDynagrooveへ移行したのは、フリッツ・ライナーのCSO引退と死(1962-63年)とか、Lewis Laytonの死(1964)とかに関係するのかな、と気楽に思ってましたが、このライナー「田園」が1960年の録音で、しかもLiving Stereoではない、となると話はそう簡単ではないのですね。
フリッツ・ライナーという人、みっちはむろんリアルタイムでは知りませんし、RCAってどうせアメリカのオケなんだろー、とかいう思い込みで最近まで聴いたことがありませんでした。(笑)しかし、何年か前に彼のリヒアルト・シュトラウス集を聴いて、びっくりしました。たとえば、「ツァラトゥストラ」、演奏も素晴らしいのですが、音がいい!これがLiving Stereoかぁ、と認識を新たにしました。R.シュトラウスの管弦楽はケンペ、という常識が崩れましたねぇ。
それでLiving Stereoの録音ってどんなのだったのと調べても、あまり資料がないのです。
伝説の雑誌「The Absolute Sound no.49 Fall 1987」に、Living Stereoシリーズのライナー・ノートを書いていたMichael Grayが「 Recording Reiner 」という記事を書いていて、これが参考になるらしいのですが、困った、これは日本の図書館にはなさそうだ。(笑)どうしても欲しいとなると、ebayで買うしかない、面倒だし、お金も掛かります。(爆)
ただ、ネットを検索していたら、こんな記事がありました。
https://positive-feedback.com/audio-discourse/analogue-productions-rca-living-stereos-15ips-reel-to-reel-tape/
ここに、Michael Grayの文章が孫引きされていて、少しですが読めます。
Chicago Symphony Hall was wider and shallower than other halls that RCA had worked in up to then and presented its own set of unique issues to the RCA recording team. By the time RCA recorded Scheherazade and The Pines of Rome, "Layton," according to Gray, "now had his own version of Decca's tree and outriggers. Save that the center mike for his trio was clearly intended for overall pickup from behind Reiner's podium rather than the woodwinds in front of it. While Layton's quintet of string mikes were aptly positioned to pick up reflections from Orchestra Hall's highly directive stage shell and from the hall behind and above them, they didn't always provide a good definitive stage. Layton therefore almost always added one or two wind mikes to his string mix with further accent mikes brought in to highlight musically important parts of the orchestra such as the piano and celeste in The Pines of Rome."
はい、この手の話は厳密性が必要なので、「みっち訳」は省略いたします。(笑)いずれにせよ、デッカ・ツリーの変形マイク配置プラスアルファという感じですね。そして、残念なことに、この頃の技術資料は、レイトンのセッティングを記した書類も含め、1969年にRCAが引っ越したときに、みんな捨てられて無くなっちゃったそうです。(泣)
Gray discovered in the course of writing his piece that, "All" of "RCA's old engineering files, including Layton's session set-up sheets, were destroyed in 1969 when RCA moved from its studios on 24th Street in New York."

みっち

2020/07/10 URL 編集返信

赤ラベル
「リビングステレオ」の表示がない。
データ・カードの上段のRELES欄に October 1963 RED SEAL RELEASE
とありますので赤シールの特別盤で「リビングステレオ」より上位のランクで発売された物と思われます。

チャラン

2020/07/11 URL 編集返信

yositaka
Re:ほほぉ、RCAのLiving Stereoですか
みっちさん、まずは申し訳ありません。1960年はミスで、実際は1961年でした。データカードにもそう書いてありました。(訂正しました)
わずか1年でもこういうことは重要で、1年前、1960年2月の録音である同じライナーの「シェエラザード」ではLiving Stereoの表示が残っているのです。そして、こちらにはDynagrooveの表示がない。
ということは、60年と61年が切れ目だった可能性がありますね。
ちなみに「田園」は、ジャケット裏面にDynagrooveの表示があります。(当CDのブックレットに復刻されています)

マイケル・グレイの評文にhis own version of Decca's tree and outriggers. とはっきり書いてあるのは頼もしい。 当時RCAとDeccaは協力してステレオ録音に取り組み、RCAのヨーロッパ録音はDeccaのクルーが行っていたようです。逆のケースは知りませんが。

outriggersはDecca's treeと一緒にセッティングされる、ステージ前方両側から狙う長いマイクスタンドに取り付けられたマイクのことですね。オーディオ評論家の島護さんは、初期のRCAステレオテープレコーダーはDeccaと同じく6つの入力端子しかなく、そこにダイレクトに入力していたと書かれていました。
それにしても、情報が伝わってこなかったのは資料処分のためですか。1969年はネコパパがクラシックを聴き始めたころです。そんな扱いじゃ、リスナーに情報が伝わって来るはずがありませんね。

yositaka

2020/07/11 URL 編集返信

yositaka
Re:赤ラベル
チャランさん
残念ながらそれはちょっと違うようです。
RED SEALは既にSP時代から使われている、同社の上位ランクのクラシック盤のことで、Living Stereoは、同社がステレオ録音を標榜するために使った「トレードマーク」です。別概念。
日本でも、これを大きく看板に取り付けた宣伝カーが、町を巡回している様子が写真に撮られていましたね。このトレードマークが実際に使用されていた録音システムとリンクするかどうかが問題。その資料が処分されたのでは、検証のしようがないですね。
グレイ氏や島氏は関係者からの聞き取りもやって調査したと思われます。二人とも鬼のような人です。

yositaka

2020/07/11 URL 編集返信

データ・カード
データ・カードを見ているとSIDE2は、モノとステレオとなっております。

オケの人数まで記録している貴重な資料ですね。

チャラン

2020/07/11 URL 編集返信

その後分かったことなど
いくつか分かったことがあります。まず、レーベルの変遷ですが、これが詳しいです。
https://www.shadeddog.com/labelography/
RCAビクターのわんこが背景影付きなのでShaded Dogなんですけど、Dynagrooveの出現は1963年以降のようです。またLiving StereoとDynagrooveの入れ替わりは緩やかで、一時期は両者が混在していたと思われます。なお、ライナー「田園」は1961年録音ですが、LPレコードのリリースは1963年と思われます。(LSC 2614, M2RY-1546)レコードのレーベルにはDynagrooveの表示があります。

もう一つは、ジャック・ファイファーのインタビューです。
https://www.analogplanet.com/category/interviews?page=23
Part1と2に分かれていますが、1996年CESショーでClassic Record誌のマイク・ホブスンが行ったインタビューです。ファイファーは、このインタビュー(1月)の翌月に心臓の発作で亡くなっています。これはめちゃ面白いです。たとえば、Living Stereoのデモを社内で行ったら、重役の1人が「ツァラトゥストラ」の初めに入ってるハムは一体なんだいと聞いたとか。(爆−もちろんあのC音の持続です)マイク・ホブスンも同じレコードを、冒頭にノイズが入っているとかで安く買ったとか。(笑)

はい、それで肝心なことは、Dynagrooveの、Living Stereoと比べて変わっている点はダイナミック・イコライザーの使用とカッティングの変更である、という点です。Dynagrooveの名の由来は、Dynamic Equalizerなんですね。つまり、Living Stereoの高ダイナミックレンジを、家庭用装置で聴きやすいようにレンジを縮め、周波数特性を変えてあるのです。どうもこの頃、ユーザーからLiving Stereoの音は温和しいという苦情が来ていたらしいです。今でもそうですけど、ダイナミックレンジの広い音源の再生は、良い装置と部屋が必要です。でないと、小さい音はノイズに埋もれてしまいます。
まぁ、詳しくは原文をご参照ください。ダイナミック・イコライザーはミックス・ダウンの時にかけますから、レイトンさんの録音スタイルに変化があった訳ではなさそうです。

みっち

2020/07/11 URL 編集返信

Re:その後分かったことなど
みっちさん
詳しい資料をありがとうございます。しかも面白い!

レーベルの変遷…最初は大々的に出していたLiving Stereoの表示がDynagrooveに取って変わられたり、そのうち単なるStereoになってしまったり。担当者がだんだんと初心を忘れ、それに伴って録音も特筆すべきものではなくなっていく。目でも確かめられます。

ファイファー氏とのロングインタビュー、歴史的価値があります。
これまた、機材から材質まで、細部までこだわって作っていたものが再発時には邪険に扱われているのを忸怩たる思いで見つめているプロデューサーの気持が伝わってきます。
ファイファー氏はDynagrooveにも忸怩たる思いを抱いていたようですね。島護氏の言われる「音圧戦争」や、CD以降のソニックソリュージョンにも批判的で、手をいれるほど劣化する。近年指摘されている問題は、すでに創始者の目にもお見通しだったわけです。なんと貴重な証言でしょう。亡くなる直前に行われたのは奇跡的でしたね。

それにしてもご紹介いただいたこのサイトはマニアックです。みっちさんのように英語がスラスラ読めたらいいのに。

yositaka

2020/07/11 URL 編集返信

yositaka
Re:データ・カード
チャランさん
印字が重なっていますが、SIDE2だけでなく、全曲、モノとステレオの両方で発売されたと思います。モノは「New Orthophonic」がモノ盤の方のトレードマークでした。1963年といえば日本ではもうモノラル盤は出ておらず、擬似ステレオも流行っていた頃で、当時は猫も杓子もステレオ。新しいものに飛びつくのはともかく、古いものはすぐ捨てる癖があったのですね。
今では逆に、CDの売れ行きが唯一落ちないガラパゴス国になっています。いやカセットもオープンリールも蓄音機も。

yositaka

2020/07/11 URL 編集返信

デッカ盤RB6510(LM2614)の謎
データ・カードを参考にしてディスコグラフィーを調べると
ステレオ盤1963年LSC2614 モノ盤1963年LM2614 共にラベル画像にDynagroove影付きニッパー ジャケット表面にDynagrooveマーク 裏面にDynagroove説明文

1962年デッカ盤RB6510 ラベル画像にRECORDING FIRST PUBLISHED 1962
 ジヤケット表面に赤いRCAマーク 裏面に『RB6510(LM2614)』
 *LM2614は、1963年のはず番号だけが…?です。
Dynagrooveカーブは、RIAAカーブでは、補正が必要なようですね虫が動くといけないので見なかったことにします。

おまけ:ラベル画像が無いので確認していませんが1962年のSB6510 は、ジャケットにRCA赤シール 注記にRed Seal Living Stereo となっています。

チャラン

2020/07/12 URL 編集返信

リビングステレオ
ダイナグルーヴへの移行は62年だと思います。ミュンシュのボレロやラヴァルスはダイナグルーヴで出ました。一方、同じ年の幻想はリビングステレオです。63年のルービンシュタインのチャイコフスキーもダイナグルーヴです。
リビングステレオも初期のものほど音が良い傾向があり、54年の英雄の生涯やサロメが最高じゃないでしょうか。

サンセバスチャン

2020/07/12 URL 編集返信

yositaka
Re:デッカ盤RB6510(LM2614)の謎
チャランさん
ディスコグスによると確かに RB-6510は1962年とあります。本国アメリカより早い。
しかしこれは決して珍しくなく、日本でもバックハウスのブラームス:ピアノ協奏曲第2番やボスコフスキーの1979ニューイヤーコンサートなど、本国より発売の早いのはいくらでもあります。これらの盤の真のオリジナルは日本盤です。

Dynagrooveは、一般向きの機器に向くように音質補正したもので、最初にRIAAカーブを提案したのは確かRCA。なので、少なくともアメリカ盤はRIAAでしょう。特別なDynagroove用のカーブがあったというよりは、RIAAカーブをベースに微妙な補正を加えたと考えて良いのではと思います。ジャック・ファイファー氏の言うとおりなら、原音再生よりも手軽さや簡便性を重視したことになるので、大本をいじるような手間はかけないと思われます。

ただし、ヨーロッパ盤は謎が多く、昔のままのカーブを保持し続けたとか、いろいろ説があり一概には言えません。RB-6510はLSC-2614と同じ音なのか。おそらくそうではないと思います。

yositaka

2020/07/13 URL 編集返信

yositaka
Re:リビングステレオ
サンセバスチャンさん、
1962年ですか。ルイス・レイトンは1964年になくなっているので2年はDynagroove期の仕事をしていますが、音の変化が補正によるものだとすれば、彼自身は同じポリシーで仕事を続けた可能性は高いですね。
英デッカのケネス・ウィルキンソンやゴードン・パリーらがその後も元気に活動して音質を守り抜いたことに比べると、レイトンを失ったRCAは不運。彼の仕事の末期に音質ポリシーを変えたこともまた、レーベルの低迷につながったのでしょう。

「初期のものほど音が良い傾向」
事実はともかく、この言葉は魔法の言葉というか、一種の呪文です。
これに取り付かれると、コロナよりも恐ろしい、不治の病に罹患する危険性があります。ネコパパは、この種のことを思わず口走ることはありますが、決して文字には書かないことにしています。

yositaka

2020/07/13 URL 編集返信

またもや超長文(笑)失礼します
今回いろいろ調べた資料で、まだ挙げてなかったものを、参考までに列挙しておきます。まず、ルイス・レイトンの死亡記事はこれ、1964年4月4日付けのThe New York Timesです。
https://www.nytimes.com/1964/04/05/archives/man-who-died-at-terminal-is-identified-as-an-engineer.html
彼は同年4月1日水曜日にニューヨークのPort Authority Bus Terminalで亡くなっているのが発見されました。事件性はなく、心臓の疾患とのこと。享年63歳。
レイトンはアトランティック・シティに住み、ニューヨークのRCAへは、毎週自宅から通っていました。(つまり単身赴任)水曜日は体調が悪いということで会社を早退したんですね。会社側は彼が自宅へ戻ったと思っていたし、彼の奥さんは金曜日(3日)の夜になっても、彼が帰ってこないので、はじめて変だとわかったわけ。彼は48年間RCAに奉職し、グラミー賞受賞3回(1959、1961、1962)。妻と息子が一人、息子は海兵航空団の軍人で、日本の厚木にいたそうです。

ライナー「田園」はレコード番号LSC-2614で、ジャケットは花の写真ですが、LSC/D-2614という限定版のダブルジャケット・アルバムがあります。これのジャケットはオランダの画家ホッベマの「ミッデルハルニスの並木道」です。これは何のための限定版なんでしょう。ライナーが亡くなったのは1963年11月15日だから、追悼盤というわけでもなさそう。CSO音楽監督任期満了の記念ですかね。
ネコパパさんが貼り付けてくれたデータシート(1枚目)を見ると、「LSC-2614」とタイプされた上に、手書きで「LSC/D-2614」と書き込まれています。またReleaseも「OCTOBER 1962」とタイプされた上に、手書きで「October 1963」とあります。この手書きをした人物のサインは読めないが、日付は「11/12/63」ですね。また出荷日Shipping Dateは「9/14/62」とタイプされています。
ひょっとすると、LSC-2614は1962年に出ているのでしょうか?しかし、オークションなどで出ているLSC-2614盤のジャケット裏にはみな(C)1963となってますねぇ。

そして、Billboardの1963年4月27日号に興味深い記事が載っています。これはGoogle検索で「Dynagroove RCA Billboard」とやると、引っかかると思います。URLはものすごく長いので、ご迷惑になりますから、貼り付けません。
この号の冒頭記事の表題は、『Dynagrooveはまだセンセーションにはなっていない、しかしディーラーは売れ始めていると云っている』というものです。(笑)記事の内容から、このときDynagrooveはニュージャージーのプリンストンで行われた最初のプレス・カンファレンスでの発表から8週間が経ったところだと分かります。すなわちDynagrooveの正式発表は1963年2月末ごろであろう、と思われます。
この8週間で10枚のアルバムが発表されており、売れているのはピータ・ネロ(笑)、ほかは「蝶々夫人」、ボストン響の最初のマーラー、ほかポップスのLPのようです。
そして、Billboardの1963年10月号あたりを見ると、かなりDynagrooveのクラシック・タイトルも揃ってきており、ライナー「田園」も載っています。

さてここからは、みっちの推論ですが、やはりLSC-2614は63年10月発売だと思います。そしてデラックス盤LSC/D-2614と同時期に併販されたとみます。データシートの1962年10月の謎ですが、これはDynagroove発表の時期が近づいて来ており、そのためリリースを1年遅らせたのではないでしょうか。RCAが世界中の提携先にDynagrooveを広げるのは、63年秋からです。(これもBillboardの記事に載っています)Decca盤RB6510が62年に先行して出ているとなると、このDecca盤はひょっとすると、Dynagrooveではなく、Living Stereoである可能性も?(笑)あっ、これはネコパパさんの云う『不治の病に罹患』、に繋がるかもしれません。(爆)

みっち

2020/07/13 URL 編集返信

yositaka
Re:またもや超長文(笑)失礼します
みっちさん、超長文、ありがとうございます。
なんだかすっかり仕事をさせてしまったようです。
ルイス・レイトンのその記事…多分、ネコパパも見たと思います。Port Authority Bus Terminalというところで「あっ、そうだ、バスの停留所だった!」と思い出しました。
英語がろくに読めないので、それで事故死と思ってしまったのですね。
刑事ドラマでも見て反省します。今後は、英語で困ったらみっちさんに相談することにしましょう。

データシート、貼り付けておいて良かったなあ。
このXRCDは国内盤ですが、マニアックなスタッフのおかげで深読みしていただけました。
情勢から見て、発売は1963年に決まりですね。
それににしても、Dynagrooveへの転換は、最初からお粗末さが漂っていたんですね。ピーター・ネロ。そういう人もいました。ただ、ラインスドルフ指揮ボストン響の「巨人」は、レコ芸の記事か何かで、Dynagrooveも捨てたものではない…とかいう批評を見た覚えがあります。10枚の中の一つですよね。

RB6510はディスコグスにジャケットは掲載されていますが、裏面もレーベル面も上がっていないのが悔しいところです。
だからといってDU店等に探索に出る探究心はありませんけれど。罹患が怖いですし。

yositaka

2020/07/13 URL 編集返信

MONOが,抜けていて申し訳ありません。
デッカ盤RB6510(LM2614)にMONOが,抜けていて申し訳ありません。ラベル(レーベル)画像に「・・・デッカ制作」とあり翌年のLM2614(Dynagroove)と私も音が違うと思います。
私見ですがDynagrooveは、丸針のトレース歪対策と人が知覚される低音の減少をEQで補正する。私の装置に低域補正は無いだからといってEQを調整するのはグリコですしDL103を購入するのは・・・70年には辞めたようで真赤ラベル(レーベル)の被害が少なくホッとしました。
ディスコグスのLSC/D-2614の注記:Dynagroove Stereo. Side B is not banded; Playing time for B1a is for the entire side とありました。
ネコパパさんのJVC-XRCDは、当然補正がしてあり良かったですね。

チャラン

2020/07/14 URL 編集返信

yositaka
Re:MONOが,抜けていて申し訳ありません。
チャランさん
1962年なら、欧米はまだまだモノ・ステ併売が続いていましたから当然あったでしょうね。リビングステレオも両者は別々のコンソールで音調整していたはずですが、問題はそれがいつひとつのコンソールに一本化されたかということです。
これについてはなかなか資料がありません。別々の時代はかなり音が違うのことが、耳で聞いてもわかる気がしました。しかし時代が進むと単に分離していないだけで基本的にはかわらないものになります。分離から統一の時期についての文献があれば見たいなと思います。

yositaka

2020/07/14 URL 編集返信

あまり長文の
あまり長文のコメント連発も気が引けるので、拙ブログに関連記事をアップしました。
https://mitchhaga.exblog.jp/31483384/
お暇なときにでも、ご笑覧ください。

みっち

2020/07/15 URL 編集返信

yositaka
Re:あまり長文の
みっちさん
早速、拝読しました。コメントをいただいた皆様、
みっちさんの記事にご注目ください。米盤の前年に発売された「田園」の、英Decca盤のレーベル面の写真が掲載されています。

そこにはマニア垂涎のRed Seal Living Stereoの文字があり、マニア軽蔑のDynagrooveの文字はありません。

なんだ、この胸騒ぎは。
「ワンピース」のゴールド・ロジャーよろしく「探せいっ!」と叫びたくなりますね。
いやいやもちろん探しませんよ、ネコパパはね。

yositaka

2020/07/15 URL 編集返信

みっちさん良く調べられましたね
いや~!!!みっちさん良く調べられましたね。
英デッカ MONO RB6510 のレーベル画像と説明は、調べられましたがSTEREO SB6510 のレーベル画像 語学がダメな私は、徹夜しても調べられなかった。
(いい演奏で聴きたいと血道を上げるボケ老人です。)

楕円カッタで丸針用に溝をカットし、楕円針で聴く? 録音をEQで補正してある?
機械マニアの私は、推測をしていましたが、みっちさんの調べられた文献の画像と証言を読んで・・(Dynagroove)盤をどうしょう。

チャラン

2020/07/15 URL 編集返信

みっちです('◇')ゞ
>いや~!!!みっちさん良く調べられましたね...

チャランさん、ありがとうございます。
インターネットを使った検索は、コツが掴めると、素早く効率的に行えます。今回の探索もさほど時間はかけていません。ただ、そのやり方を文章で説明せよ、と云われると、なかなか難しいのです。やっていることは、Google検索で出てきた結果をざっと見て、望みの結果に近づくように、入れているKeyword群に足したり、引いたりしているだけなんですが。

ちなみに、今回SB-6510の画像を拝借したのは、イギリスのKingsway Hall Classical Recordsというところです。
これですが、65ポンドで売られています。FREE SHIPPING WORLDWIDEとあるから、買えそうですよ。ネコパパさん、胸騒ぎしませんか。(爆)
https://kingswayhallclassics.com/products/beethoven-symphony-no-6-pastoral-reiner-chicago-symphony-sb-6510

みっち

2020/07/15 URL 編集返信

yositaka
Re:みっちです('◇')ゞ
Kingsway Hall Classical Recordsとは、店名からして凄味があります。ロンドンにあった伝説的な録音会場の名前ですからね。実物は老朽化で取り壊され、いまでは同名のホテルが建っているとのことです。一度泊まってみたいです。もしかしたらこのレコード店もホテル建物にあったりして…

65ポンド…送料も同じくらいとして、130ポンド、17,453.80円でざっと18000円というところですか。
チャランさん、1枚どうでしょう?ネコパパはちと手が出ず、足が出ます。

yositaka

2020/07/16 URL 編集返信

LM2732(Dynagroove)
先ほど金山でMONO LM2732(Dynagroove)プロコフィエフのVn協奏曲No,1を楕円針で試聴苦手なプロコフィエフが、私には普通?に聴こえたので真赤ラベルを1900円で購入してきました。
明日の例会で丸針で聴いたら・・・ネコパパさんの評価が楽しみです。
ついでにLIVING STEREO LSC-2496 LSC-2566も持って行きます。

チャラン

2020/07/16 URL 編集返信

Re:LM2732(Dynagroove)こっちも
チャランさん
Dynagrooveはエリック・フリードマン(Vn)エーリッヒ・ラインスドルフ指揮ボストン交響楽団。
livingstereoは、ライナー指揮シカゴ交響楽団の「交響曲のこころ」(いいとこどり集)と、
アルトゥール・ルービンシュタイン(P)アルフレッド・ウォーレンスタイン指揮RCAビクター交響楽団のグリーグ:ピアノ協奏曲、ファリャ:ピアノ小品集。
ルービンシュタインは例のTAS Super LP Listに選出されているそうです。

これはlivingstereo後期の1961年の録音ですが、
実はルービンシュタインには1956年のlivingstereo初期にも同じ曲LSC-2429を録音していて、指揮者・オーケストラも同一です。
音質比較するのも一興ですね。こっちも買ってください(笑

yositaka

2020/07/16 URL 編集返信

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Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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