しゃべる不精猫~ネコパパと蓄音機④(最終回)

Dancing!踊るクラシック 2017/03/26 

 

ネコパパと蓄音機の馴れ初めを語る第4回。

勝原オーナー率いる「名古屋蓄音機クラブ」とのお付き合いによって「しゃべる不精猫」となったネコパパの足跡を振り返る。

2017年2月に名古屋・新栄に開店した蓄音機カフェ『エヂソン』。

その店の最初の客となったネコパパは、勝原オーナーと井上マスターに対面。親しい交流が始まる。そこで不肖ネコパパがはじめて解説を仰せつかったのが、このサロンコンサートである。

使用された蓄音機は、勝原オーナー所有のHMV163(1927年発売)。親しみやすいクラシックということで、「踊り」に関係する曲を選んでお聴きいただくことにした。

当時ネコパパはまだSP盤を一枚も架蔵していなくて、以下の盤はすべて「エヂソン」の所蔵品と、井上マスターからお借りしたものである。

教員を生業にしているとはいえ、トークをしながら音楽をご紹介するというのは、人生初めての体験。ネコパパ大いに緊張し、用意したプログラムを配り忘れるなど、大失態を演ずる。それでもエヂソンの狭い空間にぎっしりと参集されたお客様の暖かい拍手が嬉しく、これで図に乗ったわけである。反応がとりわけ良かったのは、メニューインとカザルスの2枚だったと記憶している。

650x_48949008.jpg 

1.喜歌劇「こうもり」序曲(ヨハン・シュトラウスⅡ)

ユージン・オーマンティ指揮ミネアポリス交響楽団 録音1935 Victor

2.花のワルツ~「くるみ割り人形」組曲(チャイコフスキー)

レオポルド・ストコフスキ指揮フィラデルフィア管弦楽団 録音1926.11.48 Victor

3.スペイン舞曲第5番「アンダルーサ」(グラナドス/クライスラー編曲)

ユーディ・メニューイン(ヴァイオリン) ファーガソン・ウェブスター(ピアノ)録音1938.3.21Victor

4.天体の音楽(ヨゼフ・シュトラウス)

エリーザベト・シューマン(ソプラノ)レオ・ロゼネック指揮ロンドン交響楽団  録音1934.6.23 Victor

5.ジーグ~無伴奏チェロ組曲第6番(バッハ)

パブロ・カザルス(チェロ)録音1938.6.3Victor

6.火祭りの踊り~「恋は魔術師」(ファリャ)

アルトゥール・ルービンシュタイン(ピアノ) 録音1930.7.22  Victor

7.  華麗なる大円舞曲(ショパン)

アレグザンダー・ブライロフスキー(ピアノ) 録音1938.11.24Victor

8.  美しく青きドナウ(ヨハン・シュトラウスⅡ)

ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団録音1946.10.30HMV(Columbia)

9.美しく青きドナウ(ヨハン・シュトラウスⅡ/ストコフスキ編曲)

レオポルド・ストコフスキ指揮フィラデルフィア管弦楽団 録音1926.3.16Victor

10.  ハンガリー舞曲第6番

レオ・ブレッヒ指揮ベルリン国立歌劇場管弦楽団 録音1929Victor

 

■日本洋楽事始 ―来日した巨匠たち― 2017/11/04

 

蓄音機カフェ『エヂソン』は、諸事情あって、惜しまれつつも10ヶ月で閉店。

その直後に名古屋電気文化会館で開催された「蓄音機コンサート」は、新聞記事や広告も出て満席の盛況に…

ジャズ、クラシック、タンゴと3部に分かれた大規模な催しの「第2部」を任されるという、ネコパパ一世一代の大舞台となった。明治大正期から戦前までの来日演奏家の系譜をSP盤で辿るという、大胆なテーマを掲げる。下調べには時間がかかったが、知らなかった事実が次々に明らかになって、ネコパパの視野は大きく広がった。

蓄音機はEMGマーク9が使用された。

盤は主として『エヂソン』閉店時に、ネコパパとチャランさんが分割管理することになった貴重なクラシック盤、およそ100枚から選択した。ただし、ハイフェッツのメンデルスゾーンは井上マスターからお借りした。

その中には、ロシアの名バス歌手シャリアピンが来日時に、ビクタースタジオで録音した「ヴォルガの舟歌」(シャリアピン最後の録音)など、貴重な盤が含まれていた。この日、大空間に響き渡るEMGサウンドは、ラッパ後方のステージにいてさえも、しっかりと伝わってきた。

 blog_import_5d52677323d8f.jpg

1 バッハ作曲、ストコフスキー編曲「トッカータとフーガ」、前半。 

レオポルド・ストコフスキー指揮 フィラデルフィア管弦楽団 録音: 1934 Victor

2 思い出(フランティシェク・ドルドラ) 

ミッシャ・エルマン(ヴァイオリン) レイモンド・バウマン(ピアノ) 録音: 1928.11.6 Victor

3 中国の太鼓(クライスラー) 

フリッツ・クライスラー(ヴァイオリン) フランツ・ルップ(ピアノ)録音: 1936.9.28 Victor

4 ヴァイオリン協奏曲ホ短調(メンデルスゾーン) 

ヤッシャ・ハイフェッツ(ヴァイオリン)トーマス・ビーチャム指揮 ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団 録音: 1949,6.10 Victor

5 歌劇「椿姫」より 1 二重唱「幸ありし日」(ヴェルディ) 

アメリータ・ガリ=クルチ(ソプラノ)ティト・スキーパ(テノール) ロザリオ・ブールダン指揮 ビクター・オーケストラ 録音: 1928.9.6 Victor

6 ロシア民謡「ヴォルガの舟歌」 

フョードル・シャリアピン(バス) G.ゴジンスキー (ピアノ)録音: 1936..2.3Victor(日本録音)

7 火祭りの踊り(ファリャ) 

アルトゥール・ルービンシュタイン(ピアノ) 録音: 1930.7.22Victor

8 交響曲第3番「英雄」第1楽章より 

フェリックス・ワインガルトナー指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 録音: 1936.5.22Columbia

 

■戦後洋楽事始―来日した巨匠たち・戦後編―2018/10/28

 

『エヂソン』閉店後も、勝原オーナーのサロン開催への情熱は冷めず、名古屋の文教地区に40席を収容できる「ギャラリー香津原」を開店された。20184月のことである。

ここでは毎月の蓄音機コンサートのほかに、映画を論ずるサロンも開催され、魅力的な企画が続く。多くの方が参加されることになる。

ここでまたもネコパパに声が掛かる。それでは、と思いついたのは「日本洋楽事始」の戦後編である。日本でSPレコードが生産されていたのは1950年代までで、1950年にはLPが発売された。時期は終戦後約5年間と短い。しかしそれは、調べれば調べるほど濃密で、ドラマティックな時代だった。

お客様は25人ほど、テーブルを囲んでサロン風にセッティングされた会場で、EMG-Mark9の調子は1年前と比べてもいっそう快調であった。とりわけ最後にお聴きいただいたシゲティのベートーヴェン、貴重なアメリカ盤の生々しさは壮絶だったと記憶している。お客様の反応もよく、気持ちよくお話をさせていただけた。

戦後の来日演奏家第1号となったメニューインと、貧しい靴磨きの少年との交流、日本が気に入って3ヶ月も滞在し、下関の無人島まで買ってしまったコルトー、黒人歌手の嚆矢として人種平等を求める闘いの世界的なシンボルとなったマリアン・アンダースンなどの逸話を交えつつ、7枚のSP盤を紹介した。既に、そのほとんどはネコパパの架蔵盤で、1年半のうちに溜め込んだことが良くわかる。恥ずかしいことである。

 blog_import_5d526f7794528_2020060310563520e.jpg

1.ブルッフ ヴァイオリン協奏曲第1番~第1楽章

ユーディ・メニューイン(ヴァイオリン) ランドン・ロナルド指揮 ロンドン交響楽団

録音1931, 11.25 Victor

2.モーツァルト 歌劇「魔笛」より「おいらは鳥刺し」「夜の女王の復讐のアリア」

ゲルハルト・ヒュッシュ(バリトン)エルナ・ベルガー(ソプラノ) トーマス・ビーチャム指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

録音: November 1937 and February - March 1938 Victor

3.モーツァルト ピアノ・ソナタ第11番イ長調K331~トルコ行進曲

ワルター・ギーゼキング(ピアノ)

録音: 1930年代後半 Columbia

4.ショパン ノクターン作品92

アルフレッド・コルトー(ピアノ)

録音:1929.3.19 Victor

5.ショパン 幻想即興曲

ウィルヘルム・バックハウス(ピアノ)

録音:1933 Victor

6.ブランド 懐かしのヴァージニア

マリアン・アンダースン(コントラルト) チャールズ・オコンネル指揮ビクター交響楽団(フィラデルフィア管弦楽団)

録音: 1941,9.25 Victor

7.ベートーヴェン ヴァイオリン協奏曲 第3楽章

ヨーゼフ・シゲティ(ヴァイオリン) ブルーノ・ワルター指揮ブリティッシュ交響楽団

録音: 1932.2.3 Columbia

 

■蓄音機サロン・「名月」の巻  2019/09/15 

 

「ギャラリー香津原」で開催。中秋の名月にちなんで、「月」にかかわる名曲を蓄音機BMGマークⅨで楽しむひとときであった。

日頃この会には付き合わないアヤママも、井上マスターの奥様のお誘いもあって席に陣取る。これにはいささか緊張した。

参加者は約20人。3時間の長丁場で「ジャズ」「クラシック」「歌謡曲」と続いた。クラシックは3曲を選ぶ。特にエーリッヒ・クライバーの「天体の音楽」、日ロンドン盤は珍しい盤で、録音・演奏とも良いものと思われたので、敢えて全曲を聴いていただくことにした。

 

1 「ベルガマスク組曲」より「月の光」(ドビュッシー/ストコフスキー編曲)

レオポルド・ストコフスキー指揮フィラデルフィア管弦楽団 1937年録音

2 ピアノソナタ第14番嬰ハ短調 作品27-2 『幻想曲風ソナタ』

ヴィルヘルム・バックハウス(P) 1934年録音

3 ワルツ『天体の音楽』作品235(ヨゼフ・シュトラウス)

エーリッヒ・クライバー指揮ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団 1948年録音

DSC_1436.jpg 

惜しいことに、この「ギャラリー香津原」も、同年11月を持って21ヶ月の活動を閉幕する。

これら一連の「名古屋蓄音機クラブ」の活動で調子付いたネコパパは、地元図書館でのレコードコンサート「音楽を楽しむ会」の講師も引き受け、蓄音機コーナーを設けてSP盤の紹介を定例化する。

「ギャラリー香津原」は「談話室 香津原」に引き継がれ、今後の活動にも期待が膨らむ。

まだまだ、ネコパパと蓄音機との縁は続きそうである…

(おわり)



関連記事
スポンサーサイト



コメント

コメント(2)
脇で見ているネコパパさんと蓄音機
「名古屋蓄音機クラブ」の大黒屋での例会に参加されてからのネコパパさん
豊富な知識と過去の音楽遺産をリアルに再生する蓄音機に目覚めてSP盤探しに奔走され、岡崎の楽友が、遺品のSP整理を依頼されると私を誘って頂きに行き又、蓄音機で聴けるニーベリングに通っていますね。
そんな熱い思いか、蓄音機カフェ『エヂソン』開店1番に駆け付けましたね。
分けて頂いたお祝いのケーキ「美味しかった」ですよ。
『エヂソン』閉店時に、ネコパパさんは、主にコロンビアと私がビクターを預かりました。其の後、大量の預かった盤と購入した盤を聴くために78回転も再生出来るレコードプレーヤーを購入されましたが、蓄音機の魅力が捨てがたく「音楽を楽しむ会」にチビクラ2号を活用されていますね。
チビクラ2号のゼンマイが切れた時、秘かにHMV130になるかと期待しましたが・・・良心的で腕のよい技術者により1日で前より良くなって返却されネコパパさんますます舌の回転が滑らかになりましたね。

チャラン

2020/06/04 URL 編集返信

yositaka
Re:脇で見ているネコパパさんと蓄音機
チャランさん
頭でっかち猫が、ちょいとほぐれて不精猫に。不精猫がおしゃべり猫にと、蓄音機のおかげでネコパパも変貌を遂げました。
ポケモンの進化みたいなものです。
ここには書きませんでしたが岡崎のkonken君と名曲喫茶ニーベルングの蓄音機設置もからみ、周囲の蓄音機事情はいっそう複雑多彩になりました。
縁というのは面白いものです。

さてネコパパの蓄音機ですが、チビグラ2号が生還したため、当分は現状維持です。再生機材にはもともと関心が高いものの、所有如何という話には乗りが悪い。そこは変わらぬ不精猫。
でもチャランさんは、蓄音機入手の野心が消えていないと推測しています。ひょっとして年内に動くか?

yositaka

2020/06/04 URL 編集返信

コメント投稿
非公開コメント

プロフィール

yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

ご訪問ありがとうございます

月別アーカイブ

検索フォーム

QRコード

QR