河口湖畔に響いた歌声~ネコパパと蓄音機①

2000年5月。
ネコパパは河口湖にいた。
「河口湖オルゴールの森美術館」(現在は「河口湖音楽と森の美術館」)。広大な敷地にヨーロッパ貴族の別荘を思わせる建物やバラ園が設えられた、テーマパークである。
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当時中学校3年生の担任教師だったネコパパは、数ヵ月後に迫った修学旅行の下見のため、学年教師仲間と訪問先を回っていた。
富士五湖・グループ行動の活動場所の一つがここだったのである。
鵜飼貞雄氏という、大きなレストランのチェーン店を経営しておられる方が、1999年9月、私財で開設されたテーマパーク。ということは、ネコパパの訪問はオープンの翌年だったわけだ。
2000年8月発行の収蔵品目録によると、自動演奏楽器の専門家や米スミソニアン国立歴史博物館の協力している本格的なコレクションとわかる。
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収蔵された豪華なオルゴール、特にディスク交換によって様々な曲目を演奏できる「ディスク・オルゴール」や、複数の楽器を内蔵してパンチ穴を開けたロール紙によって合奏する「自動演奏楽器・オーケストリオン」など、興味深い収蔵品の数々にすっかり魅了された。
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その中で目を引いたのは、大ホール出入り口の廊下をわたり、瀟洒な階段を降りたエントランスホールの一角に並ぶ、数台の蓄音機。
下見に来たのも忘れて、陶然と眺めいっているネコパパに気づいた、若い女性の学芸員が話しかける。
「なにかおかけしましょうか」
「え、いいんですか?」
仕事中をわきまえず反応するネコパパ。
一緒にいた同僚も、興味を持った様子だったので、気が大きくなったのだ。
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「クラシックはありますか」
「三浦環があります。いかがですか?」
彼女がラッパ蓄音機の下の台になっている箱の背後から取り出したのは、三浦環のオペラアリアのSPレコード。
磨きぬかれて底光りしている蓄音機と同様、その盤面も見たことがないくらいピカピカだった。
曲はうろ覚えだが、ヴェルディの「乾杯の歌」だったかもしれない。
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いくらピカピカでも録音は古いものだ。
きっと、かすれてキンキンした音が出るのだろう、そう思って待ち構えた。ところが出てきたのはとても潤いのある美声だった。
小さい蓄音機なのに音量は大きく、スクラッチノイズも皆無である。
「これが蓄音機の音なのか。話には聞いていたけれど…いや驚きました」

あらためて収蔵品目録を見るとそれは1913年アメリカ、ビクタートーキングマシン社製「Victor 6」という蓄音機。
解説文には「特に高価な機器は、原始的な構造にも関わらず臨場感あふれる音色で私たちの心を和ませてくれます」と書かれている。
高価だったのだろう。
この音を聞いた瞬間から、ネコパパの「蓄音機の音」に対する認識は大きく変わった。
機器と盤のコンディション次第では、素晴らしい音が再生できる「現役の」メディアと考えるようになったのだ。

とはいえ、当時はCDの全盛時代。
中学生時代から蓄積したLPも、そのころになるとほとんど聴いていなかった。まさか、それから10数年後、蓄音機を所有したり、SP盤を物色したりするようになるとは…当時44歳のネコパパ氏は、まったく想像していない。(つづく)



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プロフィール

yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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