ワルター指揮ニューヨーク・フィルのライヴを2曲収録したLPを入手。仏TAHRA原盤を使用して日本のレーベルALTUSが制作したものである。2018年6月の発売で、2枚組。
LP1
ヴァイオリン協奏曲
エリカ・モリーニ(Vn)
1953年12月20日録音
LP2
交響曲第2番
1951年2月4日録音
会場はいずれもカーネギー・ホール
ブルーノ・ワルター指揮 ニューヨーク・フィルハーモニック交響楽団
演奏はどちらも早めのテンポ、分厚い響きで、たっぷりと歌い上げたもの。
もともとワルターにぴったりの曲想で、汲めども尽きぬ音楽の流れに浸ることができる。
ワルター唯一の録音であるヴァイオリン協奏曲のソロは、オーストラリア生まれのエリカ・モリーニだ。最初のあたりはややおとなしく、音量も小さめだが、第1楽章の中盤から俄然勢いが出て、手に汗握る熱演になる。聞き覚えのないカデンツァ(自作?)では、切れのある名人芸で会場を静まりかえらせる。
楽章の終わりごとに盛大な拍手が入るのも微笑ましい。
第2交響曲は協奏曲より2年前の演奏。
米コロムビアが収録した有名なセッション録音は1953年12月28日収録なので、これと比べても2年前になる。
演奏解釈はコロムビア盤とほとんど同じで、歌また歌、の前半2楽章、中間部の弾むリズムが印象的な第3楽章、一転してアッチェレランドの連続で、熱狂的に盛り上がるフィナーレ…と、いつもながらのワルター節が楽しめる。違いはこちらのほうが金管やティンパニの強奏が抑えられ、弦楽器主体の、柔らかめの響きで進められていることだろう。ネコパパはセッション録音も好きだが、51年盤にはそれとは別の、一歩引いた奥ゆかしさが感じられる。こちらも愛聴盤になりそうだ。
実をいうと、この2曲のライヴ音源は、初めて聴いたのではない。今は亡き今池のクラシック盤専門店ラ・フォーレで、伊NUOVA-ERAという怪しいレーベルで出たCDを入手していた。1990年頃で、2枚で5000円もしたのに、あまりピンとこなかった。その後、2004年に仏TAHRAから再発。2枚組CDで2500円くらい。今度は正規盤だから、と期待したのだが、顕著な改善は感じられなかった。そこそこ鮮明だが、高音寄りの軽くて中抜けしたような音だった。
しかし今回のLPは、中音域がしっかり出て、頼もしい。レベルオーバー気味の米コロムビアよりも聴きやすいくらいである。この2曲が好きな人には、一聴をお薦めしたい。
ただ、価格は1枚当たり7000円と、高め。
最近はLPブームで、発売当初は高価だった各種のヨーロッパ製リマスター重量復刻盤も、だいぶ買いやすくなっているが、この盤のような少量生産の国内盤はそうもいかないらしく、むしろ値上がり気味。ファンの懐も考えて、もうちょっと「勉強」してほしいものだが…ちなみにネコパパはネットオークションで割安に入手。
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コメント
先ほどはありがとうございます。
とても嬉しかったです。
ワルターのブラームスの第2番が大好きで、ニーヨーク・フィル盤53とコロンビア響60を購入しました。
51年盤は初めて知ったもので、拝読させて頂きとても喜んでいます。
また、エリカ・モリーニに非常に興味を持っています。
私はどうやら往年の演奏家に惹かれるようです。
平成直前の生まれで、未熟者ですが、どうぞよろしくお願いいたします。
よしな
2020/02/08 URL 編集返信ワルターのブラームスがお好みとは、趣味の重なる部分がありそうで嬉しく思います。
モリーニという人は、特別に気を付けて聴いてきたわけではないのですが、この録音に関する限り、実力のある人だと感じます。
ロジンスキーとのセッション録音も聴いたことがありますが、それほど印象に残らず、ブラームスは合わないのかなと思っていました。もう一度聞きなおさなくてはと思っているところです。
これからもよろしくお願いします。
yositaka
2020/02/08 URL 編集返信-
2021/09/05 編集返信ミルシティンはブルッフとゴルトマルクの協奏曲も最高です。ゴルトマルクはワルターとの録音もありますね。そちらはまだ聴いてませんが、ご感想を頂ければ嬉しいです。
ネコパパさんのお陰で、まだ聴いていない名盤がこれからたくさん聴けそうです。今後ともよろしくお願いいたします。
豆餅
2021/09/10 URL 編集返信音楽については素人ですから、個人的な好きなものばかり聞いています。それでもご参考になるとしたら、書き続けている甲斐があるというものです。こんな意見でよろしければいつでもどうぞ。
ゴルトマルクの協奏曲、ワルターの共演は米DISCOCORP盤LPで架蔵しています。
渋くて良い曲です。ただ録音は、ソロは明晰ですがオーケストラはぼんやりしていて、決して一般的とは言えません。ブレック盤があればいいんじゃないかと思います。
yositaka
2021/09/11 URL 編集返信豆餅
2021/09/12 URL 編集返信>我が家で大ブームです
素敵な家族ですねえ。クラシックファンは家庭内でも聴くときはひきこもるのが普通と思っていましたが、家族で楽しめるなんて素敵なことです。家族が持てなかったブラームスも喜んでいるでしょう。
yositaka
2021/09/13 URL 編集返信ワルターのマーラー9番を再生したら、「こんな暗い曲、やめーな、鬱になるで」と言われ、勝手に停止ボタンを押されたし。マタイとショスタコーヴィチ5番も同じ目に。
でもブラームスのヴァイオリン協奏曲は「キレがあって、ええ曲やん」とえらくウケました。ブルッフの協奏曲やフォーレのレクイエムとか、たまに家族みんなで大ヒットします。
迫害にもめげず今日も聴きます(笑)。
豆餅
2021/09/17 URL 編集返信いやいや。それだけ各曲の特徴や曲想を理解されて鋭く反応されているとは、ご家族の耳の鋭敏さに感服です。
フォーレのレクイエムで大ヒットとなれば、なおさらそう思います。
フォーレのレクイエムといえば先日亡くなったミシェル・コルボの得意曲でしたが、この機に初めて聴いた4回目の、最後となった2006年の録音には驚きました。静かな中にも荒ぶる魂の感じられる演奏。惜しい人を亡くしました。
yositaka
2021/09/17 URL 編集返信豆餅
2021/09/18 URL 編集返信ラ・フォルジュルネの常連で、日本にはよく来られていたのに、宗教音楽苦手なため敬遠してしまいました。縁は大事にしたいものですね。
yositaka
2021/09/18 URL 編集返信