まろのSP日記第22集を聴きました

「まろのSP日記第22集」~音楽のある街・高崎市編~
12月28日にNHK-FMで放送されました。蓄音機操作は勝原オーナーも知遇を得ている、日本を代表する蓄音機マイスターのマック杉崎氏。

使用蓄音機の説明はありませんでしたが、まろ氏のTwitterにアップされた写真を見ると、EMGのようです。これならホールでも十分な音量があるはずなので、拡声はなしでしょう。
左側に設置されたマイクはおそらく収録用でしょうね。

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<出演者>
篠崎史紀(NHK交響楽団第一コンサートマスター)
入江一雄(ピアニスト)
笹沼樹(チェリスト)
マック杉崎(蓄音機研究家)
落合慶子(NHK前橋放送局キャスター)

喜歌劇「軽騎兵」序曲
作曲:スッペ
BBC交響楽団(管弦楽)、エードリアン・ボールト(指揮)
内容時間:00:07:00
レコードNo:JD-466


1940年発売、ストレートで上品な演奏だが、特別な個性は感じにくい。録音はとても優秀でフォルテも歪まずにくっきり再生される。今回のホールでの公開収録では、蓄音機の響きとホールの残響がミックスされて雰囲気がとても豊かだ。

ワルツ「天体の音楽」作品235
作曲:ヨーゼフ・シュトラウス
ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団(管弦楽)、エーリヒ・クライバー(指揮)
内容時間:00:08:20
レコードNo:FB-22043

録音は1949年2月20日。FB22043はキングレコードの国内盤、レーベルはロンドン。ネコパパ架蔵の盤と同じもので、演奏録音とも素晴らしい。フレーズごとにめまぐるしく変わる表情の豊かさと、舞踏感覚を存分に味わえる。

バイオリン協奏曲 第1番 ト短調 作品26から 第1楽章
作曲:ブルッフ
ユーディ・メニューイン(バイオリン)、ロンドン交響楽団(管弦楽)、ランドン・ロナルド(指揮)
内容時間:00:08:30
レコードNo:7509-A


メニューインの少年時代、1931年11月25日録音。7509-Aはビクター初期国内盤の番号で、これまたネコパパ架蔵「お宝」SP。鳴りきったストラディバリウスの音色の良さと覇気に満ちた演奏が記録されている。優秀録音のはずだが、ホールに響く蓄音機をオフマイクで収録した音は、ソロの音がややくすんだ感じに聴こえてしまう。

ピアノ三重奏曲 ト長調 作品1第2から 第3楽章、第4楽章前半
作曲:ベートーベン
マーク・ハンバーグ(ピアノ)、マージョリー・ヘイワード(バイオリン)、
チャールズ・ウォーウィック・エヴァンズ(チェロ)
内容時間:00:03:45
レコードNo:D60

マーク・ハンバーグ(ハンブルク)は、ロシア系のヴィルトゥオーゾで、SP時代は多数の録音を残したが、現在は忘れられた人で、勢いに任せたような熱情的な演奏で知られたピアニストとのことだが、この室内楽は録音がかなり古く、特別な魅力は伝わりにくい。ヴァイオリン、チェロともども、せかせかと弾き進めているという印象。

五重奏曲 変ホ長調 作品16から 第3楽章
作曲:ベートーベン
木管室内楽協会(演奏)、リュシアン・ヴュルムセール(ピアノ)
内容時間:00:04:55
レコードNo:DB-1641-B

詳細不明。木管合奏が鮮明に聴こえるが、ピアノは引っ込み気味の録音。この部分だけでは、演奏の特徴までは聴き取りにくい。

弦楽四重奏曲 ハ短調 作品18第4から 第4楽章
作曲:ベートーベン
ブダペスト弦楽四重奏団(演奏)
内容時間:00:04:15
レコードNo:71632-D

1941年録音。ブダペスト四重奏団は、3回に渡ってベートーヴェンの弦楽四重奏曲全曲を録音していて、これはその最初の録音と思われる。厳格な響きに貫かれたザッハリッヒな演奏だが、演奏に込められた勢いと覇気がすばらしく、とても現代的だ。録音も非常に優秀なオンマイク収録で、まったく古さを感じさせない。

ピアノ・ソナタ 第31番 変イ長調 作品110から 第1楽章
作曲:ベートーベン
ウィルヘルム・ケンプ(ピアノ)
内容時間:00:06:55
レコードNo:E-105


1936年7月29日録音。ケンプはLP時代、ドイツ・グラモフォンに2度のピアノ・ソナタ全集を録音しているが、戦前も1925-1936年にかけて、かなりの数をドイツ・ポリドールに収録していて、これもそのひとつ。淡々とした中に叙情的な味わいを秘めた演奏スタイルは、後年のものとほとんど変わらないものの、繊細なタッチに漂う孤独感は蓄音機再生によく似合う。

ピアノ協奏曲 第4番 ト長調 作品58から 第2楽章
作曲:ベートーベン
ワルター・ギーゼキング(ピアノ)、ザクセン国立管弦楽団(管弦楽)、カール・ベーム(指揮)
内容時間:00:04:20
レコードNo:JW669


1939年録音。ドレスデン時代のベームの録音は、ドイツ以外ではブルックナーの交響曲第4番と、バックハウスとのブラームス第2協奏曲しか発売されなかった、と聞いていたが、JW669は国内盤の番号なので、日本では出ていたことになる。
演奏は重々しいオーケストラに粒立ちの良いピアノが映えて、たいへん魅力的。CD復刻盤は架蔵しているが、どこかで好状態のSPに出会ったら、手を出してしまいそうだ。

ここからはゲスト演奏家によるライヴ演奏になります。

バイオリン・ソナタ 第5番 ヘ長調 作品24「春」から 第1楽章
作曲:ベートーベン
篠崎史紀(バイオリン)、入江一雄(ピアノ)
内容時間:00:07:15
ピアノ三重奏曲 変ホ長調 作品1第1から 第1楽章
作曲:ベートーベン
篠崎史紀(バイオリン)、笹沼樹(チェロ)、入江一雄(ピアノ)
内容時間:00:07:40
ピアノ三重奏曲 変ロ長調 作品97 「大公」から 第1楽章
作曲:ベートーベン
篠崎史紀(バイオリン)、笹沼樹(チェロ)、入江一雄(ピアノ)
内容時間:00:08:55

蓄音機が主役の演奏会での「箸休め」ということもあるのでしょうが、演奏は模範的で、細部まで丁寧。細かい音の絡みがくっきりと聞き取れる、気持ちが良いものでした。特に笹沼樹のチェロは音が伸び伸びと豊かです。

交響曲 第7番 イ長調 作品92から 第4楽章
作曲:ベートーベン
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(管弦楽)、フェリックス・ワインガルトナー(指揮)
内容時間:00:06:55
レコードNo:J8541


1936年2月24日〜26日録音。ネコパパも架蔵のコロムビア国内盤。
ワインガルトナーの演奏は全体としては近代的にスタイリッシュ、ところが細部では微妙な音の強弱や緩急が多彩という独特の様式をもっていて、細かく聴けば聴くほど魅力を増してくる。この第7フィナーレも、あっさり淡白なようで濃い部分は濃く、盛り上げる部分は熱い。録音もまた素晴らしく、番組を締めくくるにふさわしい選曲である。

…というわけで、聴き応えのある番組でした。来年はベートーヴェン生誕150年ということでこういう選曲だったのですが、ネコパパが愛聴してやまないヨーゼフ・シュトラウス没後100年ということは知りませんでした。まろさんによると兄のヨハン二世は弟ヨーゼフについて「人気は僕だが、才能は弟」と述べていたそうです。わが意を得たりです。

「文句が多い」と言われそうですが、蛇足を一言。残念だったのは蓄音機自体についてのコメントがなかったこと。マック杉崎さんには、そこを語ってほしかった。まろさんの蓄音機解説は一般的なもので、「一曲聴くたびにゼンマイを巻きながら…」というのは、今回されたガラード製電動モーターを備えたEMGには当てはまらないと思います。

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コメント

コメント(2)
ギーゼキング。
1月2日午後4時からNHK-FMでSP盤ジャズの番組があります。
ブルーノートの最初期からの盤を詳しい解説付きで放送されます。
この番組は12月30日にラジオ第一で放送されており、私は聞きましたがなかなか良かったです。

ギーゼキングの演奏良いですね。
私はギーゼキングが50年代に録音したドビュッシー等の演奏が気に入らず(世評の割にイマイチなピアニストだな)とずっと思っていました。
ですが、SP盤時代の演奏は素晴らしい。
ギーゼキングは戦中時にナチに加担したことで、戦後虐められたから戦後は冴えないのかな?と思っています。

不二家憩希

2019/12/31 URL 編集返信

yositaka
一発勝負
不二家憩希さん
情報ありがとうございます。SP盤ジャズの番組、両日とも録音予約しました。AMとFM、ネットラジオでも音質が違うものかどうか、聴き比べてみたいと思っています。

ギーゼキング、最近1937年録音のグリーグ、ピアノ協奏曲のSPを入手しました。
伴奏はハンス・ロスバウド指揮ベルリン・シュターツカペレ。盤の状態はあまりよくないのですが、疾走感と気迫に満ちた演奏で、戦後カラヤンの指揮で録音したものとは相当に印象が違います。ギーゼキングは天才肌で、譜読みはしても練習はあまりせず、録音も一発勝負という話も伝わっています。
また、戦後の録音は自宅での録音のせいか、あるいはマイナーなブランドのピアノを使っているせいなのか、いまひとつパッとしない音であることも影響しているかもしれません。

yositaka

2019/12/31 URL 編集返信

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プロフィール

yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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