追悼 ペーター・シュライヤー氏 84歳

年の瀬に訃報が続く。
ドイツの名テノール歌手、ペーター・シュライヤー氏死去。

伝説的オペラ歌手ペーター・シュライヤー氏死去 84歳
12/27(金) 6:28配信AFP=時事

img_eff27a6c3af1d1f22cbcea83d6209c1f88295.jpg
2011年9月24日撮影

【AFP=時事】20世紀を代表するリリック・テノールとして広く知られるドイツのオペラ歌手・指揮者のペーター・シュライヤー(Peter Schreier)氏が25日、出身地のドレスデン(Dresden)で亡くなった。84歳だった。同氏の秘書が26日、明らかにした。長い闘病生活を続けていたという。

シュライヤー氏は2000年に、舞台で恋する若者を演じるには年を取り過ぎたという理由から65歳でオペラから引退したが、数年間はリサイタルを続けた。その後は健康問題が悪化するまで、教育活動と指揮に専念した。シュライヤー氏は、ドイツのベルリンからオーストリアのウィーン、ザルツブルク(Salzburg)、イタリアのミラノ(Milan)さらには米ニューヨークまで、世界の一流の歌劇場や音楽祭で定期的に公演した。

数十年にわたるキャリアを通じ60以上の役をこなしたシュライヤー氏は、ヨハン・セバスチャン・バッハとウォルフガング・アマデウス・モーツァルトの歌い手としておそらく最もよく知られているが、レパートリーにはその他リヒャルト・ワーグナー(Richard Wagner)も含まれる。
シュライヤー氏は過去に独DPA通信に対し、「音楽のない日は無駄に過ごした日」と語っている。

引用終わり。

■晴れた空に真っ直ぐに伸びていく歌

この記事には「伝説的オペラ歌手」とあるが、オペラがあまり得意でないネコパパにとって、シュライヤーは、「モーツァルト歌手」「バッハ歌手」の印象が強い。
モーツァルトでは、カール・ベーム、オトマール・スウィトナー、コリン・ディヴィス指揮のオペラ全曲盤ではたいてい出演していたし、ベームの「レクイエム」(映像版)でもソロを勤めていた。

441.jpg

バッハではルドルフ・マウエルスベルガーと、カール・リヒター指揮の二度目の「マタイ受難曲」。とくに前者は繰り返し聴いた。

 (2)

シュライヤーの歌はヴィヴラートを目立たせず、ひたすらに真っ直ぐに、晴れた空に伸びていく歌。なので、世俗の感情を表すオペラよりも、あこがれ、孤独、祈りを歌うリートや宗教曲にいっそうの適正があったのかもしれない。

ただし、それは繊細であっても、決して脆弱な歌ではなかった。
いつかTVで視聴した「マタイ受難曲」。確かライプツィヒ・ゲヴァントハウスの来日公演で、指揮はハンス・ヨアヒム・ロッチュ。複数の独唱者の中でも、シュライヤーは声量も、表現力圧倒的な存在感で他を圧していたことが、いまも鮮やかに思い出される。

初めて愛聴したシュライヤーの録音は、シューベルトの歌曲集「美しき水車小屋の娘」。
単身赴任で住んでいた古いアパートの、すぐ近くに建っていた図書館から借り出した、ビクター盤のCDをカセットテープにダビングしたもので、ピアノはワルター・オルベルツ。1974年録音。この曲集は、以降彼の十八番として、生涯に渡って歌い続け、聴かれ続けることになった。

626.jpg

訃報を知って、今あらためて聴き直しているのも、同じ曲集だ。
架蔵しているのは1980年2月28日・29日録音のLP(インターコード)で、伴奏はシュテフェン・ツィールの弾くハンマークラヴィール。ウィーン・コンツェルトハウス・シューベルトザールでの録音。
自在この上ないフィッシャー=ディースカウの歌唱もいいが、やはりこの曲は「空に向かって一直線」のテナー、シャライヤーの歌がいっそう似合っていると思う。この盤では、ハンマークラヴィールの古雅な響きとあいまって、寂しさの色を深めた歌声が心にしみる。

118648.jpg

シュライヤーのライヴを、一度だけ聴いた。
ただし歌ではなく、指揮者としての演奏会で、オーケストラはベルリン・シュターツカペレのメンバーからなる、エマヌエル・バッハ室内管弦楽団。
プログラム前半はバッハのブランデンブルク協奏曲第5番、後半はモーツァルトの交響曲第40番ト短調だった。指揮者としてもやっぱりバッハとモーツァルト。
名歌手をずっと後ろ姿だけ見ていることになったのは残念だったけれど、演奏はすばらしかった。ト短調フィナーレ、再現部直前の異様なフレーズで大きくテンポを落とし、空気を一変させたことは、今も鮮明に記憶している。

心からご冥福をお祈りいたします。






関連記事
スポンサーサイト



コメント

コメント(2)
永遠の王子様
昨夜まで北海道にいて新聞、テレビ見ていませんでした。FMも聴いていませんでした。そうか、シュライヤー亡くなったですか。
シュライヤーはやはり魔笛のタミーノ王子様が忘れられません。ぼくが見たのはベルリン国立歌劇場来日公演でした。王子様というには、もうかなりのお年でしたが、かっこいいんだな、これが。嵌まり役でした。王子様のイメージがこのとき焼き付いてしまいました。CDではバッハの宗教曲もありますが、ああ、王子様が歌っていらっしゃると。タイツ姿を思い出して。つい微笑。
バレンボイムの指揮より、王子様。夜の女王はスミ・ヨーさんだったかしら。じゃあお姫様は? ウーン、残念。記憶力が。
お姫様より王子様インパクト大ですね。

今年もいろいろお教えいただき、ありがとうございました。良いお年を!

シュレーゲル雨蛙

2019/12/31 URL 編集返信

yositaka
Re:永遠の王子様
シュレーゲル雨蛙さん
年明けの返信になります。あけましておめでとうございます。
私もベルリン国立歌劇場の「魔笛」を名古屋市民会館で見ています。
1980年3月30日。指揮はスウィトナー、出演者はブルマイスター、フォーゲルなど、なかなかの顔ぶれでしたが、残念ながら名古屋公演のタミーノはシュライヤーではなく エバーハルト・ビュヒナーでした。指揮者としてのシュライヤーも素晴らしかったですが、一度は歌唱も聞いてみたかったなあ…
今年もよろしくお願いします。

yositaka

2020/01/01 URL 編集返信

コメント投稿
非公開コメント

プロフィール

yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

ご訪問ありがとうございます

月別アーカイブ

検索フォーム

QRコード

QR