からくさ、蔦、そして竜


からくりからくさ

■梨木 香歩著
■ \1,680 (本体 : \1,600)
■新潮社
■サイズ : 20cm / 380p
■1999.5


以前紹介した『りかさん』の姉妹編で、出版はこちらが先。時間軸はこちらがあと。
同時に発想され、時期を同じくして書かれたのではないか。
続編として読むこともできるが、物語の描き出すものは全く異なっている。
ファンタジーの要素は、こちらではミステリーのそれに変化し、児童文学とは一味違う、小説としての規模と複雑さを備えている。
それでも『りかさん』を一読して心ひかれたこどもたちであれば、すこし歯ごたえはあるものの
かならずや本作品にも共感できるだろう。
児童文学の優れた一冊として書架に入れるのに何の迷いもない。

ある書籍紹介文によれば…

古い祖母の家。
草々の生い茂る庭。
染め織りに心惹かれる四人の娘と不思議な人形にからまる縁。
蛇の夢。竜女の面。
クルドの地。呪いと祈り、憎悪と慈愛。
リバーシブルの布―私たちの世界。
何かを探すためでなく、ただ日常を生き抜くために…。

りかさんのパートナーである少女、よう子は、本作では大学に行く代わりに、職人修行として染色に励む年ごろの女性
蓉子、として登場する。
祖母の死後、あの古い家の管理人となった彼女のもとに、三人の女性が住人として身を寄せる。
蓉子は相変わらず『りかさん』とともに暮らしている。
新しい住人たちは最初は戸惑うものの、やがて彼女を自然に受け入れるようになる。
ただし、『りかさん』であれほど生き生きと活躍し、よく話したこの命ある人形も
本作では始終無言のまま、物語の推移を見守る存在になっている。
『りかさん』のような異世界への旅を期待する読者は、きっと、とまどうことだろう。
私も、もちろん。

物語は、四人の織りなす静かな会話ですすめられる。が、りかさんは決してわきに退いたのではない。
そこにりかさんが『居る』というだけで、
粗末な網戸もない、
しかし絶えず機織りの音が流れるこの古い家は、時空を飛び、四人の隠れた絆を結び付ける。
りかさんが、なぜりかさんでなければならなかったのか。
そこには、人間の執念、怨念、死と誕生、せつない愛情、彼方への憧れが、どのように絡まり、織り上げられ、秘められて、いたのか。

時間空間を超え、生と死の境界線すらも超えて、隠された謎は次第に明らかになっていくのだ。

からくさ、蔦、そして竜。

年輪の刻まれた古い日本語、植物や色、染色や織物に関する術語が駆使され
親切なふりがなもほぼ全くつけられていない。
読み進むのには骨が折れたが
この歯ごたえこそ、「からくりからくさ」という物語が必要としているもの。

終盤の息をのむようなイメージは、この文体あってこそのものだろう。このような言葉の使い手にかかると、人は言葉によってどれだけ多くを感知できるのか、あらためて思い知らされる。

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yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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