ギャラリー香津原meets伝説のジャズ喫茶グッドマン

2019/ 12/ 03
                 
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2019年11月30日午後3時、ギャラリー勝津原は大賑わいでした。
この日はいつものサロンコンサートとは違って、いつもお洒落な勝原オーナーも井上マスター御夫妻も、一段とドレスアップ。
勝原オーナー念願の書籍出版を記念する祝賀会を兼ねたサロンだったのです。
ギャラリーには蓄音機EMGだけでなく、B&W705をメインとしたオーディオシステムもセットされました。

出版されたばかりの本はこれです。

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発行・勝原良太 2019年11月27日刊 定価2000円+税
名古屋市のちくさ正文館https://chikusashobunkan.jimdo.com/
レコード店 Roots Loungehttp://rootslounge.blog.jp/
で取り扱い中。限定300部


名古屋市伏見に1965年からおよそ15年間営業していた伝説のジャズ喫茶「グッドマン」。
その経営者岩田信市は、画家にして演劇パフォーマンスの仕掛け人、幅広い芸術活動を展開した名古屋の誇る「快人物」でした。
本書は「グッドマン」全盛時代に店の常連だった人々の回想録を中心に、1960年代のジャズ喫茶の雰囲気、それを支えた音楽、芸術、文化状況を多様な視点で解き明かすことを意図したものです。「グッドマン」の「トイレの落書き」全記録や演奏されていたレコードの数々、時代の空気を再現するスナップ写真などの資料も満載。ある世代の「ノスタルジー」ではなく、ひとつの時代を記録する一次資料としても価値ある本で、著者たちよりもおよそ10歳年下に当たるネコパパにとっても十分にリアル感があって、一気に読み通してしまう面白さでした。興味をもたれた方はぜひ手に取っていただければと思います。
取扱店のちくさ正文館では週間ベストセラー2位という売れ行きとのことです。

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…というわけで、この日のサロンのメインは「グッドマン」で4年間マスターとして勤務した前川和明氏のお話。選曲を任された前川さんはコマーシャルな曲はかけず、「硬派」で「新しいもの」を積極的に取り上げ、店の特色を作っていったのだそうです。
レコードは選ぶが、ジャズにそれほど執心しなかったという岩田氏が、前川さんに伝授したという「良いものの基準」「好奇心」「メリハリ」そして「夢」について。「メリハリ」は講談「三方ヶ原」の一節を交えた含蓄深いお話になりました。

編者の勝原オーナー、この日ばかりは「歌謡曲担当のSPコメンテーター」の立場をかなぐり捨てて、長年愛聴したモダンジャズの名盤をオーディオシステムで紹介されました。
曲はマイルス・ディヴィス「ラウンド・ミッドナイト」(1956年・Prestige)、ソニー・ロリンズ「朝日のようにさわやかに」(Live At Village Vanguard / 1957 ・BlueNote)



もちろん、合間を縫ってEMGによるSP盤再生も楽しみました。今回は一人3枚持ち寄りということで、提供者それぞれがコメントを入れながらの紹介で進行。

■IKさん(歌謡曲)
1喜びも悲しみも幾年月  若山 彰
2村祭り 童謡
3泣くな小鳩よ 岡晴夫



■YOさん(タンゴ)
1バンドネオンの嘆き フロリンド・サツソーネ
2ラ・クンパルシータ ファン・ダリエンソ
3デュベルトオモンデ オスヴァルト・プグリエーゼ



■ネコパパ(モーツァルト)
1アイネ・クライネ・ナハトムジーク ブルーノ・ワルター/ウィーン・フィル
2ピアノ協奏曲第20番~ロマンツェ  ブルーノ・ワルター/ウィーン・フィル
3ヴァイオリン協奏曲第4番~ロンド ヨーゼフ・シゲティ



■チャランさん(シャンソン・クラシック)
1歌への道 エディット・ピアフ
2幻想小曲集より(シューマン)  ピエール・フルニエ
3スペイン交響曲(ラロ) ジノ・フランチェスカッティ



■井上マスター(ジャズ)
1ス・ワンダフル ジュリー・ロンドン
2シカゴ フランク・シナトラ



最後に、甚だ残念なお知らせです。

2018年4月に勝原オーナーが総力を挙げてオープンされた「ギャラリー香津原」、2019年11月をもってクローズとのことです。21ヶ月の精力的な活動によって、美術、映画、音楽の輪を名古屋の地に深め、広げられた足跡を思うとなんともいえず口惜しい気持ちです。当地で文化活動を維持していく困難が改めて実感されます。
ただ、オーナーは既に次なる拠点を模索中とのこと。いずれ当ブログでもご紹介できると思います…
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コメント

ジャズ喫茶グッドマンに行ったことはありませんが、経営者の岩田信一さんは、姉の高校の先輩で私が高校のころ前衛芸術で新聞に載って話題になった人だと知り親しみを感じました。
今回の皆さんが持ち寄よったレコード・CDどれも選りすぐったもので色々なジャンルの演奏を堪能させて頂きました。
私のエディット・ピアフは、EMGで聴くと良いだろうと思っていましたが、想定以上にピアフの迫力・特色のある歌唱を再生し惚れ直しました。
「LA RUE AUX CHANSONS」仏コロンビアBF419でYouTubeは、国内アルバム「パリの歌」にある別の曲ですね。
知と文化の「母胎」としての穴蔵
チャランさん

ギャラリーの閉幕は残念ですが、最後にこのような温かい雰囲気のサロンが開催されて本当に良かったですね。
私の持参したワルターの「弾き振り」盤は何人もの方から「よかった」という感想をいただけたのは何よりでした。それにしても1937年の録音からあのようなピアノのタッチが再現されるとは、驚きました。あれじゃ自宅で聴く気がなくなります。

ピアフは間違えていましたか。あの動画、どうもルミエール蓄音機を使った再生らしく、面白い音がしていましたが…
さっそく入れ替えます。

「グッドマン」には行けなかったものの、私にも1970年代後半の学生時代、同じような雰囲気の「穴蔵風ジャズ喫茶」に日参した経験があります。暗い照明と大音量のなかでジャズを知り、いっぱい本も読みました。穴蔵こそがあのころの私たちの知と文化の「母胎」でした。
大須オペラの岩田さん?
蛙の大好きだった大須オペラの岩田さん?
アンナログの師匠がイワタシンイチて言っていた記憶があります。グッドマンてエレクトロボイスの巨大スピーカーがあったという地下のお店ですか? 蛙が行くつもりでいたら、閉店した。違う店ならすみません。記憶あやふやです。
「そのお店」です。
シュレーゲル雨蛙さん

「大須師走歌舞伎」と「大須オペラ」の演出をされていた岩田信市さんです。
師匠もご存知でしたか。「グッドマン」の名前はその英国製スピーカーが由来で、間違いなく「そのお店」です。サロン参加者の皆さんは演劇活動のイメージが強く、ジャズ喫茶には結びつかない方も多かったようです。お店はオーナーが交代して、1985年くらいまで続いていたようですが、最終的な閉店時期は不明のようです。

岩田さんは「蓄音機喫茶エジソン」には何度か来られていました。
速さ・情熱
このご本を出版された皆さんの速さ・情熱は素晴らしいことと思います。昨年、勝原さんが、グッドマンの閉店時期を聞かれました折り、グッドマンは岩田氏の表現でありパフォーマンスであるとおっしゃってました。自分が体験したというか入り浸っていたジャズ喫茶は、言わばマスターが伝えようとするジャズミュージックを享受する空間でした。岩田氏の演出するグッドマンは、独特の世界、箱、音、客で作られたパフォーマンスの世界だったのでしょう。グッドマンには、1981年か1982年一度訪れたことがあり、ショーターのyes or noをリクエストして帰りましたが、どこにでもある普通のジャズ喫茶だったように記憶しています。スピーカー配置、床、椅子、照明、落書き、メニュー無し、前川さんへの信頼、などなど10年早く生まれていたらこの特異で強烈な体験が出来たろうと、少し残念です。因みに、1982年頃には、伏見に橄欖堂なんてお洒落なジャズ喫茶もありましたね。
文化的個性は
toyoberoさん

その頃には経営者が代わっていたようですね。前川さんも「BGMで鳴らすだけになっていた」とおっしゃっていました。
文化的個性は、やっぱり誰かの強い意志と粘り強い継続力がないと、すぐに擦り切れてしまうようです。豊橋の穴蔵も存在していますが、どうなんでしょう。

「グッドマン」の本に登場する人々は概ね私たちより10最年長です。10年の違いというのは小さくないですね。橄欖堂…あそこも大音量の地下の店でした。晶文社の本がずらっと並んでいた記憶がある。
もう少し通っておけばよかった。
お店は違っていたようです
時代が合いませんでした。ぼくの記憶では2005年頃に閉店したジャズ喫茶(ジャズバー?)です。スピーカーも間違えていました。アルテックの巨大スピーカーにマッキントッシュのC22+M075×2。往時ボウボウ。
「地下」という点が
シュレーゲル雨蛙さん
「地下」という点がちょっと引っかかったんですが、違いましたか。
ネコパパは伏見で地下なら「橄欖堂」のような気がします。たしかに2005年ごろ閉店したはずで、TVでニュースになったはずです。
オーディオも大きく立派なものだった記憶があります。といっても、一度か二度しか入ったことはありませんが…