ブルーノ・ワルター・コンプリート・ボックスが到着!

2019/ 11/ 26
                 
ネコパパ待望のCD-BOXがやっと到着。

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重いです。
その理由は箱を開けてみてわかりました。
まず目に入るのは、大きな解説書。
B5横版ハードカバー、厚手の用紙を使ったフルカラー印刷で204ページ。
なんだ、画集か?と思ったくらいです。
解説文は残念ながら英語ですが、米コロムビアから発売・配布された全レコードの、写真を含めたデータが満載されたもの。

■解説書に見とれる

ネコパパ、CDをそっちのけに、まずこれに読みふけってしまいました。
なにしろ資料の充実がすごい。
例えば、SPアルバムを含む、既出のオリジナルジャケットデザインが、すべて鮮明な写真で見られます。
ジャケット写真の合間には、録音の際に残された、手書きのデーターカードの写真が。
それには、どの日、どの曲のどの部分か、何度のテイクで収録されたかも克明に記録されています。もちろん全てではありませんが、ニューヨーク・フィル時代の相当量のデータカードが、それも「内容が読める大きさ」で掲載されている。
ざっと見ただけの印象ですが、ワルターの録音はNGテイクが少なく、ほとんど一発で「OK」になっていることがわかります。彼の録音に「つぎはぎ感」がなく、特に1940年代から50年代の録音に、ライヴ的な生々しさが感じ取られる理由が、これを見るとよくわかる気がします。

ソニーにアーカイヴされている演奏・録音中の写真や、関係者と一緒に撮影された貴重な写真も、数多く収録されています。写真自体は見たことのあるものも多いのですが、注目すべき点は、これまでのブックレット類ではほとんど未記載だった「撮影日時と場所」が、すべて明記されていることです。
「これは、あの曲を演奏している時の写真だったのか!」
単純なことですが、写真と、そのとき演奏されていた曲が、次々に一致していくというのは、想像以上に感動的でした。
なんだか、CDにさわるまでに解説書で満腹になってしまう気分です。

今回のBOXは、この種のものとしては高価な価格設定でした。
これを見てネコパパは「ファンの足元を見ているのか?」と嫌な気もしたのですが、価格の半分は資料代、と納得してしまったのです。

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■CDを聴いてみる

さて、いよいよ聴いてみることにします。
どれも長年聴き馴染んだ録音ばかりなので、つまみ聴きしてみよう、というくらいの気分でしたが、
聴き始めるとすぐに熱中してしまいました。

・ハイドン 交響曲第88番 第100番「軍隊」 コロムビア交響楽団(ステレオ) 1961年

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冒頭からヒスノイズがしっかり入っている。
曲が始まると、弦に生々しい実在感。低音、高音とも良く伸びて、ダイナミックレンジが広がり、まるでオーケストラの眼前で聴くような感じ。演奏の特徴が手に取るようによくわかる。
特に「軍隊」のスケール感の大きさに改めて圧倒された。

・シューマン 交響曲第3番「ライン」ニューヨーク・フィル(モノラル)1941年
古いSP録音で、トゥッティで音が荒れ気味という点は、さすがにどうしようもなさそう。しかし情報量は確実に増えている。両端楽章のフレーズの伸ばし方、ワルターには珍しいレガート奏法の多用によって、音楽に命が吹き込まれていくさまが、これまでのどのディスクよりも伝わってくるのだ。音圧が高く、音の強弱の変化もよくわかる。

・スメタナ 交響詩「モルダウ」ニューヨーク・フィル(モノラル) 1941年

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既存盤の序奏部で聴かれた「ジジーッ」という気になるノイズが聴こえないのは、巧みな編集によるものか?ディスク録音特有のバックグラウンドノイズはしっかり残っているので、無理に消したとは思えない…
聴き心地は「ライン」と同様、古さは隠せないが、これも情報量は確実に増えていると思う。

・モーツァルト 交響曲第38番「プラハ」ニューヨーク・フィル(モノラル) 1955年
LP未発売と言われた録音。解説には1995年CDで初出とあり、ワルター・ファンの間では有名な「蘭フィリップス盤で発売されていた」という件には触れていない。
当BOXのデータは、あくまでアメリカでの発売に絞られているためだろうか。これは音質面では既出CDと格段の違いは感じられなかった。たた、ちょっと音量レベルを上げすぎてうるさく感じる嫌いもある。

・モーツァルト 「コシ・ファン・トゥッテ」序曲 交響曲第41番「ジュピター」ニューヨーク・フィル(モノラル) 1945年

 (2)

おそらくオリジナルマスターを用いた世界初のCD化。
2曲とも1955年・56年に同じオーケストラで再録音されたので、初回の録音であったこれらは、忘れられた録音になっていた。
ネコパパが愛聴していた旧CBSソニー盤LP「ワルター不滅の1000」に含まれる音源は、当時マスター所在不明ということで、日本ワルター協会菅一(すが はじめ)氏所蔵の市販盤LP・SPを使用して「板おこし」されたものだった。
今回は金属原盤を使用したと思われる。2曲とも保存状態が良かったのか、それとも、ほとんど未使用だったためか、1945年録音と思えないくらいの鮮度で驚かされた。
演奏も素晴らしいもので、改めて評価される必要があると思う。

・ベートーヴェン 三重協奏曲 ニューヨーク・フィル(モノラル)1949年
三重協奏曲は、今回の復刻の傾向がよくわかる。
既出CDに比べて音自体の改善はなく、それどころか霞んだようなしょぼい音で、1949年録音としてもちょっとひどい。
ところが、低音が相当なところまで入っているらしく、ガラス戸棚がビビるという、ネコパパ庵の家電オーディオではまず起きない現象が発生した。

・ベートーヴェン レオノーレ序曲第3番 エグモント序曲 ニューヨーク・フィル(モノラル) 1954年
両曲とも音自体の鮮度は既出盤同様だが、音圧を上げすぎたためか、細部までストレスなく聴ける既出盤CDと比べると、ちょっとうるさい感じもする。
ただ、緩急自在の面白さに満ちた「エグモント」に比べ、ややストレートすぎると思っていた「レオノーレ」のコーダで、ワルターが大変な気迫を込めて演奏していることに初めて気づかされた。

・ベートーヴェン 交響曲第6番「田園」 フィラデルフィア管弦楽団(モノラル) 1946年

 (1)

これと、翌年録音の「未完成」は、オーケストラと録音場所がいつもと違う。既出のCDやLPで聴くと、ニューヨーク・フィルよりも音が明るく、明瞭ではあるが、なんとなく芯のない、痩せた音に感じるものだった。
しかし今回のものは、冒頭から輪郭のくっきりした音で、オーケストラ独特の木管の洗練された響きが一層よく聴き取れる。
また、この演奏の大きな特徴であるダイナミックレンジの広大さも、聴き取りやすくなった。
ワルターの「田園」としては不遇をかこった一枚だが、これくらい音が改善されれば、改めて評価される機運が生まれてくるかもしれない。

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…とまあ、モノラルの、特に音の鮮度がまだ高くない、1940年代のものを中心に聴いてみたのですが、それはステレオ盤は1枚聴いてその変貌の大きさに気づいたし、それよりもSACD化の予定もない、目立たぬ存在であるモノラル盤が、どんな音になっているかが重要だと思ったからです。
これだけでは断定的なことは言えませんが、マスタリングの傾向はどうやらステレオ盤に準じた、情報量の拡大を狙ったものと思われます。音圧が上がり、細部の演奏がよく分かる音になっています。ただ、メーカーの情報では、1995~6年にCD化されていたモノラル盤については新たなマスタリングは行っていないとのこと。「プラハ」「三重協奏曲」「エグモント」「レオノーレ」は確かに同じ音にも聴こえますが、他の盤にあわせて音量レベルを上げてあるのかもしれません。

傾向としては、ヨーロッパ盤によくある、過剰なノイズカットによる閉塞感があまりないのはメリットです。
ただ、音がやや溢れ出すぎる傾向には、再生側のコントロールが必要かもしれません。

ステレオ盤の音作りは、録音当時のスタッフの狙っていた、一般家庭の装置で聞きやすい音、つまり高音や低音の出っ張りを抑え、中音に固めたマイルドで耳に優しいサウンドに仕立てる…という方向性とは、ある意味正反対のようです。演奏を十分に知ったコアな層が、ある程度以上のオーディオ装置を使用して再生し、ワルターの演奏の別の面に出会いなおすことを念頭に置いた、マニアックなツールということでしょうか。

今後、発見があったら少しずつ記事にしていきたいと思います。
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コメント

NHKラジオ深夜便の聞き逃しサービスであまんきみこさんのインタビューが聞けます。1時台です。12月3日までです。
https://www.nhk.or.jp/shinyabin/k1.html
すでにお聞きかもしれませんが。

ワルターのボックスセット、豪華な作りですね。
ハードカバーフルカラー204ページの解説書が入っているので高めの価格になっているのではないでしょうか。
洋書(特にハードカバー)って目が飛び出るほど高いですから。
思い切りました
不二家憩希さん
情報ありがとうございます。エアチェックしました。

ワルターのセット、予想よりも高価な値付けでしたので悩みましたが、これの発売は数年前から予想はしていて、購入の決意は固めていましたので思い切りました。SACDの方は全部は買わず「これだけは」というものに絞るつもりです。

解説書の充実は予想外でした。米ソニーが今頃になってワルターの録音にこれほどの労力をかけるとは信じられない気持ちです。今最もCDを購入するのは日本なので、日本での売れ行きを意識したのかもしれません。国内盤ではコロムビアの商標もロゴも使えないため、ジャケット・レーベルの忠実な復刻は輸入盤しかできないからです。

あとは音。
ステレオ盤の変貌は大きいので、賛否両論出そうです。中音膨らみから高低音の伸びたワイドレンジに変化。逆に見れば従来よりも中ぬけに聴こえるわけですから。私はいまのところ好感をもって聴いていますが…
77枚!! いやとても、半分ですら一生聴けないような… ;;。
しかしファンには至宝ですね。

私は、ベートーヴェン全集(仏Sony、SBM)と、モーツァルト六大交響曲(国内盤、“マックルーア・マスタリング“)、マーラーの第1と第2くらいが手許にあり、これでワルターはお腹いっぱいです。
マーラーの第2番『復活』は、千円国内盤がマックルーア版だということで、ちょっとヒスノイズが多いでものの、クセのない音質で納得できるのですが、第1番『巨人』は、マックルーア版はそれと知った出品者が高額な値を付けていて手が出ません。
『クラシック名盤 この1枚』(光文社文庫)でも、平林直哉氏が 28DC5052を求めよ、と番号指定で推薦しています。

手許には、SBMマスタリングの SRCR9970を持っていて、ちょっとノッペリ、ツルンとした物足りない音なのです…SBM以後は、私にはむしろ「ワイド化」に聞こえます。
今日、それを仕事前に聴いていて、「う~ん」と思ってヤフオクを見たら、その 28DC5052が1,200円ほどで即決出品、即落しました♪
さてさて^^;; ‥‥このマックルーア版、いろいろ問題もあること、「5ch」に1ページ、掲示板があります。

‥‥私ごとにて m(_ _;)m。
「古典絵画の修復」に近いイメージ
へうたむさん
一般のクラシックファンの皆様におすすめできる商品ではないとおもいます。今後はこのなかから売れ筋が分売されると思われますので、そこからお好きな盤を選択されるのが良いのではないでしょうか。
国内盤SACDも当面はセット販売ですが、売れ行きを見て分売も検討されるでしょう。本社がダメでもタワーあたりがやるかもしれません。

今度のステレオ盤の音質は変貌が大きいので、昔からのファンは反発するかもしれませんね。
でも私には、この「アンドレアス・マイアー版」は、驚きと発見の連続です。

マーラー「巨人」「大地の歌」を聞くと、ダイナミックレンジが拡大した代わりに、従来盤のようなピックアップ効果は抑制され、コントラバスや木管のソロパートも前面に出てきません。

そのかわり、これまでは聴きとりにくかった強弱の表情、特に「弱音にする箇所」のニュアンスの豊かさが、はっきりと聴き取れます。初めてわかるワルターの演奏解釈が聴き取れるのです。

これは、近年ヨーロッパの美術館で行われている「古典絵画の修復」に近いイメージです。もちろんこれこそが演奏の原初の姿、と言えるのかは議論の余地がありますが…所詮は昔の録音。でも、今のところ古いCDを取り出して聴き比べたい気持ちは起きません。

マックルーア版には頑固な信奉者が今もいるようですが、個人的には、あれを聴くならLPを…と思ってしまうのです。
最近、フルトヴェングラーのBOXを購入、このワルターのBOXも欲しいのですが、ちょっと高価格でスルーしました。204ページの解説書が気になりますね。
ストレスのかかる編集です。
HIROちゃんさん

BOXものは難物で、買ったはいいけれど聴ききれず、放置状態になりがちです。
私は、とりあえず10枚未架蔵で聴きたいものがあるなら買う、という基準で手を出してきました。

その基準でいくと、本製品など絶対買ってはいけないはずですが、そこはファンの悲しさ。
ただ、解説書の充実は嬉しい誤算でした。

ジャケットとレーベルはオリジナル盤の完全復刻ですが、収録曲はそれとは無関係に長時間収録しているものが多いのです。そのため、どの曲がどの盤に含まれているかは、解説書をいちいちめくらないとわかりません。
一般の聴き手の便宜を配慮しない悪編集で、なかなかストレスがかかります。迂闊に手を出されませぬよう。