追悼 宮沢明子さん

ピアニストの宮沢明子さんが78歳で亡くなられたそうです。
心よりご冥福をお祈りいたします。
この人は学生時代から社会人初期にかけて、ネコパパにピアノ音楽の魅力を初めて伝えてくれたふたりのピアニストの一人でした(もうひとりはホロヴィッツ)。
いわば、ピアノの恩人です。

記事引用。





ピアニスト宮沢明子さん死去 ケネディ大統領の追悼演奏
朝日新聞デジタル 2019年5月30日17時56分


 宮沢明子さん(みやざわ・めいこ=ピアニスト)が4月23日、居住先のベルギー・アントワープ市で死去、78歳。葬儀は近親者で営まれた。

 神奈川県逗子市出身。桐朋学園、米ジュリアード音楽院などで学び、63年、ジュネーブ国際音楽コンクールで2位に。64年にケネディ米大統領の追悼演奏会で演奏するなど国際的に活躍した。78年には、NHK教育「ピアノのおけいこ」にも出演。ハイドン、モーツァルトのピアノソナタ全集など多くの録音を残した。著書に「ピアニストの休日」がある。


この人のレコードは1970年代の初めから、数多く出始めて、ほとんどが菅野沖彦氏の手になる録音でした。レーベルはトリオ・レコードとオーディオ・ラボ。
バッハ、モーツァルト、ショパンなどの王道レパートリーはトリオから、現代音楽やハイドン、ギロックなどの地味なものはラボから出ていました。
新谷俊治指揮 名古屋フィルとのモーツァルト、ピアノ協奏曲第23番、第26番もありました。これは1974年、名フィルの記念すべき最初の商業録音で、ラボ盤でした。
これらのうちのトリオ盤は、大学時代に1500円のミッドプライスでまとめて再発されたのをほとんど買って、何度も聴きました。

それまでは、聴くものといえばオーケストラ曲一辺倒だったネコパパが、なぜそうなったのかといえば、宮沢さんの演奏が「ピアノ」という楽器を意識させない、明瞭な主張を持っていたからです。
自分のいいたいフレーズをくっきりと前に出し、そこをくっきりと強調する。
例えば、バッハの「主よ、人の望みの喜びよ」。
有名な装飾フレーズの次に出てくる、「さぴ」のコラール主題の直前で、宮沢さんは一瞬の間を入れ、ぐっと強い音で主題を始めます。
ああ、ここが弾きたくてこの人はこの曲を取り上げるんだな…とすぐにわかる。
さらにテンポの変化、強弱のつけ方、その一つ一つが面白く、それでいて、ピアノの音はいつも透明度を保ち、歪んだり、荒れたりすることがありません。

彼女のレコードを最も熱心に聴いていたのは、就職したしばらくの間だったような気がします。
初めての一人暮らしで、生活も仕事ぶりもはちゃめちゃで、七転八倒する中で、宮沢明子のピアノと朝比奈隆の指揮、この二つがネコパパにとって大きな支えになっていたのでは…と、今になって思います。

そんな頃、近くのホールでリサイタルがあるときき、ぜひ行きたいものだと思っていたのですが、大したことのない、なにかの都合で行けなくなってしまった。
そのときはまたいずれ聞けるさ、と安易に思っていたのですが、なぜだか、1980年を過ぎる頃には、新しいレコードもほとんど出なくなり、
その「いずれ」もとうとうやってきませんでした。

痛恨です。

■ネコパパの愛聴盤



最初に買ったのはこれでした。フランス音楽ばかり集めたライヴ盤で、フォーレ、ラヴェルなど近代の作品にラモー、リュリが違和感なく同居しています。



「リサイタル」のなかのバロックものが素敵だったので、続いてこれも。スカルラッティ、クープラン、ラモーの作品は、ネコパパ、今もこれでしか聴きませんね。こんな傑作ですが、未だにCD化もされていないのは不思議です。



そのバロックつながりでバッハ。パルティータ第1番がすばらしい。「主よ、人の望みの喜びよ」はこれに入っていました。





モーツァルトも素敵です。ピアノ・ソナタ全集も録音されていますが、幻想曲やきらきら星変奏曲など、それには含まれない曲を集めた「アンコール」が好き。
下はピアノ協奏曲。きっとシリーズ化されると思っていましたが、この1枚だけに終わって残念です。会場が竣工したばかりの名古屋市民会館なのも個人的に思い入れます。

■珠玉のアルバム

ほかにも、いろいろ。
追悼を込めて、聴きかえしていきたいと思います。
















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コメント

コメント(8)
No title
ネコパパ氏とかれこれ43年の付き合いになりますが、宮沢明子の盤を聞きあった時間はほとんどありません。しかしネコパパ氏が宮沢明子の作品をこよなく大切にしているのはよーくわかっています。私もネットで訃報を読んだ時、真っ先に筆者のことが頭をよぎりました。今回のブログ、文章の部分より、何の解説もなく音源の紹介を次々にしているところにちょっとうるっとしてしまいました。 「さびのコラール主題の直前で、宮沢さん一瞬の間を入れ、ぐっと強い音で主題を始めます。」ここに奏者の主張を聞いたというくだり、真っ先にマイルスのことを思い出しながら読んでいました。奏者によって原曲の良さそのものが蘇る。ご冥福をお祈りいたします。

toy**ero

2019/06/01 URL 編集返信

No title
> toy**eroさん
そういえば、sige君とはあまり聴いたことがなかったか。ネコパパにとって宮沢明子はかなり個人的な好みだったのかもしれない。
それにしても、この人、比較的短い期間でレコーディングが途絶え、そのCD化の機会もわずかで、高く評価していた評論家の宇野功芳氏も完全沈黙してしまったのは不思議です。なにかあったのでしょうか。

yositaka

2019/06/01 URL 編集返信

No title
> yositakaさん
宮沢明子さんとセロニアスモンクと比較して論ずるのは余りに違いすぎ唐突すぎるんですが、宮沢明子氏の音楽がワンアンドオンリーのものと私は思っており。いや違う。なにか私の知らない商業的外圧的力が働いて、宮沢氏が締め出されたか、逆に本人が商業的なものと縁を絶ったか、全部邪推ですが。

toy**ero

2019/06/01 URL 編集返信

No title
たくさん音源をお持ちなんですね~~~
音源は残念ながら1枚も持っていませんが、2回ほどコンサートで生のピアノ演奏を聴いたことがありました。ベートーヴェン・ピアノ協奏曲第5番「皇帝」が印象に残ります。
コンサートの思い出をちょっと投稿してみました。

HIROちゃん

2019/06/01 URL 編集返信

No title
> toy**eroさん
モンクですか。確かに、タッチの深さと芯の強さは通じるものがあるかもしれません。
宮沢さんは、書かれた文章を読む限り、歯に衣を着せぬ物言いをかなりされる方のようでもあり、それはアーティストとしては珍しいことではないのですが、日本の狭いクラシック業界の中では異質で、理解を得られなかったのかもしれません。

yositaka

2019/06/01 URL 編集返信

No title
> HIROちゃんさん
私もライヴで聴きたかったですね。あのときのニアミスは本当に惜しかった。
レコードは70年代に集中していますが、残念ながら協奏曲はわずかです。ベートーヴェンのソナタやドビュッシーも、網羅的な企画はなく、今後の再発や音源発掘が期待されます。

yositaka

2019/06/01 URL 編集返信

No title
宮沢明子さんのサイン入りLP「ツェルニー・小さな手のための25の練習曲」を聴いています。

粒だった打音であるが、滑らかであり聴いていて飽きないですね。

チャラン

2019/06/02 URL 編集返信

No title
> チャランさん
そういったお稽古曲集もかなり録音していましたね。日本人の演奏家はそういう仕事もやって生活していたんでしょうが、お手本としてだけでなく、聞ける音楽になっているとは、さすがです。

yositaka

2019/06/02 URL 編集返信

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プロフィール

yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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